地味子がTSさせられてショタになってしまう話

朝倉春彦

その1 事の始まり

「ねぇ、ハル!起きて!朝だよ?お正月だからって、いつまでも寝てないの!」


快活な声が聞こえてくる。

私を呼ぶ声、聞き馴染みのある声…良いじゃない、寝正月したって…って、ん?


「…んん…あれ…え?」


眠気に負けそうな頭に広がる違和感、どうして、真琴の声が聞こえてくるのだろう?

ゆっくりと目を開けてみると、そこには、私を見下ろすような格好の真琴がいた。

茶髪の短髪…ボーイッシュ系、イケメン系な美人さん…地味でオタク気質な私の数少ない友人であり、幼馴染…そして、同じ大学に通っている同級生だ。


「あれ、どうして、真琴がウチに居るの?」


本来であれば、この家に居るはずも無い彼女は、私を見下ろしてニカっと眩しい笑みを向けてくる。


「ふふん、ちょっとハルに用事があってね」


私の問いに答えることもなく、お茶を濁した回答。

私はそれをジト目で返しつつ、とりあえず眼鏡を取ろうと、ベッドから体を起こし…


「ん?」


そして、異変に気づいてしまう。


「……」


その異変に気が付いた瞬間、私は真琴の方に顔を向け…

彼女の胸元で、衣服越しに自己主張している双璧をバッチリ見てしまい…

直後、私の股間に"あるはずのないモノ"が痛みを感じる程の硬さと化して、履いていたズボンに中規模サイズのテントを張っていた。


「えっ……あっ……」

「ははぁん…ハル"君"、エッチな事を考えちゃったんだねぇ?オマセさん?」


時が止まった様な感覚。

私は無我夢中で体を動かし、バッとベッドから立ち上がり、何故かサイズが合わなくなった眼鏡をかけて、部屋に置いた姿見の前で立ち止まる。


姿見には、私の眼鏡をかけた美少年が映し出されていた。

短く…可愛らしく、艶やかな黒髪…細身ながらも、カチっとした男の子の体型…そして、股間に張ったテント…


「な…な…なんじゃこりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」


お正月のお昼前、長閑な年越しを迎えていた我が家に、私の魂の叫び声が響き渡った。


♂♀♂♀♂♀


「……ど、どういうことか、説明してくれるんでしょうね?」


5分後、金槌に出来そうな程に固まった股間がふにゃふにゃになった頃、私と真琴は居間のコタツに入っていた。


「いやぁ、まさか上手くいくだなんて思ってなくって」


私の問いかけに、真琴は悪びれる様子もなく大笑いしている。

一人暮らしだったから良かったものの、これが実家なら大騒ぎだぞ…というか、どうやって私の部屋に入って来たんだ!?


「いやね?アタシの家からさ、こんなものが見つかって」


真琴はそう言いながら、持って来た鞄から古びた本を取り出した。


「…読めない」


旧字体がふんだんに使われ、何なら一部風化してしまってる様な古書…私はそれを見て首を傾げる。


「これね、ウチに代々伝わる魔導書なの」

「魔導書!?」

「そう。それでね、色々とやったら…ハルがこうなっちゃったんだ~」


本を手にして満面の笑みを浮かべる真琴。

私は呆然とした表情でそれを聞き流し、再び自分の体に目を落とした。


僅かながら膨れていた胸はフラットになってしまい、何も無かった股間には、余計な付属物がくっ付いている状況。

そして、私の見た目は間違いなく中学生位の子供!…まだ、こう…大人の体で、アソコがグロテスクにならなかったのはマシだと思えるのだけども…問題はそこじゃない。


「なっちゃったんだ〜じゃなくて!戻してよ!というか、変な実験に私を使うな!」

「ごめんて。まさか実際に魔術なんてものが成功するだなんて思わないじゃない?」

「そりゃそうだけど!戻して!早く!」

「……それがね、魔導書曰く、すぐには戻せないんだって」

「……は?」


真琴の白状に、私は口をあんぐり開けて固まってしまう。

戻せない…戻れない!?え?


「だ、大丈夫!ハル"君"!その辺りはアタシが何んとかするから!」


ワナワナと震えだした私に、真琴はそう言ってバッと抱き着いてくる。

ギュッと抱きしめられ、柔らかな彼女に包み込まれた私は、さっき"収まった"はずの衝動が湧き上がってくるのを再び感じ始めた。


真琴から香るシャンプーの良い匂い…女の子特有の柔らかさ…そして、顔に押し当てられた2つの丘…私にも少しだけ合ったはずのモノの感触。


「ふにゅ…」


真琴に何か言おう!と思っていた私の勢いは、彼女に抱きしめられた事で何処かに飛んで行ってしまった。

バタバタと逃れようと藻掻き、彼女の拘束から逃れた私は、居間の隅まで移動して心を落ち着かせる。

バクバクに動いている胸元に手を当てて深呼吸を繰り返し、さっきと同じくらい硬くなってしまった"モノ"を諫めようと、真琴から視線を外した。


「全く…」

「お、怒っちゃう…よね?流石に…」

「当たり前でしょ!どうするの!大学とか大学とか大学とか!」

「その辺は上手くやるから…と、いうかこの間から不登校気味じゃ…」

「それはそれ!…上手くってどうする気!?それに、この格好って何時まで続くの!?」

「それは…その…裏のツテを辿りまして…男の子形態は解除魔法をかけるまで変わらないです…はい」

「変わらないの!?なら、この家にも住めないじゃない!」

「ですね…はい。なので…その、当分はアタシの家で過ごしていただきたく…」

「えっ……」


しおらしくなった真琴の言葉に、私はピタリと体を強張らせる。

確か…真琴には彼氏がいたはず…それも、同居してるはずなのだが…


「その…彼氏さんは?…同棲してたよね?」

「3か月前に大喧嘩して別れまして…はい」

「…そうだったの」

「それで、一旦実家に戻って…アレを見つけた次第でして…」

「その結果が私のこの姿か!」


一度引いた怒りの熱が再び沸き立ってきた。

恥ずかしさやら怒りやらで顔を真っ赤にした私。

真琴は床に頭が付くのでは無いか?と言うくらいに頭をこすりつけて見せた。


「すいませんでした!」


真琴の謝罪が居間中に響き渡る。

何度も繰り返される謝罪、その内に、私の中の諸々が収まってきて、気持ちが徐々に落ち着いてきた。


「…とりあえず、これからどうするか。話し合おう」


のそのそとコタツまで戻った私は、土下座しっぱなしの真琴の頭を突いてそう言うと、溜息を1つ吐いてテーブルに頬杖を付いた。

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