合宿免許
爽太郎
第1話
東京・新宿──。
俺は一本の電車を待っていた。
8時30分発、特急あずさ1号を…。
えっ!? 一体何故そんな所で電車を待っているのかって?
実はこの日、俺は合宿にて自動車免許を取得する為、Y県はT市に在る『T自動車教習所』に向かう予定だった。
本当は同じ県内に在る『U教習所』の方に行きたかったのだが、問い合わせた処、生憎そちらの方は定員になってるとの事で、T自動車教習所の方を案内された。
季節は二月半ば。
早くしないと合宿免許のシーズンに突入してしまうと予約も取れない。
俺は案内の人に「そこでお願いします」と頼み、合宿免許に参加する事にしたのだ。
すると案内の方が
「そうしましたら2月13日、新宿駅7番ホームにて、8時30分発の特急あずさにお乗り頂くのでお越し下さい。ホームには係の者が行きますので声をかけます。
貴方様以外にも何名か乗り合わせますので…」
こう説明してきた。
俺は忘れぬようメモを取り当日の朝、こうして新宿駅7番ホームで係の人を待っている訳なのだが…。
「こねぇーじゃん!!」
時計の針は既に9時を指していた。
もしかしたら、7番ホームではないのだろうか?
それとも、待ち合わせ場所を間違えたか…。
俺はその場を離れ、ホームの端から端までそれらしき人達を探した。
が、見つからなかった。
9時30分。
どう考えてもおかしい。
俺は以前説明を受けた、あの案内人のもとへ電話をかけた。
すると…、
「あぁ、8時30分発じゃなくて、8時30分着ですよ」
だって!
なんだとぉーっ!
8時30分着だぁ!?
そんな馬鹿げた説明があるか!
いくら8時30分着だっつったって、発時間が分からなきゃ乗れるワケあんめぇ!
だがこの案内の男は、丸っきり知らぬ存ぜぬと言った態度で、早く次の特急あずさにお乗りなさいと言ってきた。
確かにここでクダグダ言っても始まらない。
俺は次にホームに入ってきた特急あずさに飛び乗り、一路教習所の在るT駅を目指した。
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