春と桜
美竹月渚(みたけるな)
第1話 出会い
桜が咲き誇る春。
校舎の2階を見上げると男の人と目が合った。
次の瞬間、まるで私たちの出会いを祝福するかのように風が吹き桜吹雪が舞った。
「凛桜早く〜!」
少し先から私の名前を呼ぶのは中学生の時から仲良しの長谷川陽菜だ。
「今行く!」
ムッとした顔をしている陽菜に謝る。
「ごめんね。お願いしたの私なのに」
この後は陽菜と一緒に図書室へ行く約束をしていたのだが私の日直の仕事が長引いてしまったのだ。
「遅いよ〜。約束の時間に桜の木の下に来ても凛桜見当たらないし、連絡もないしで焦ったんだからね」
「ほんとにごめんね。売店でジュース買ってから図書室行こう?」
仕方ないな〜と言いながら着いてきてくれる。
良い友達を持ったなとつくづく思う。
色々なことを話しながら向かう。
私たちの居た場所から図書室までは5分くらいかかる。
陽菜と話しているとそんな時間あっという間だ。
図書室の前へ着いたのはいいのだけれど…。
「凛桜さーん?」
「…なんですか」
「開けないの?」
そう、図書室の扉を開けられないのだ。
鍵が閉まっているとかそういう訳では無い。
「緊張してるの。そんなこと言うなら陽菜が開けてよ」
陽菜を見るとめんどくさいと顔に書いてある。
「あたし用事ないのになんで開けなきゃいけないのよ。そもそも、図書室行きたいって言ったのは凛桜でしょ?」
「確かにそうだけど…」
この時、私たちは近くに先輩がいることに気づいていなかった。
「ねぇねぇ2人とも!」
驚いて振り向くと男の人が2人立っていた。
「急に話しかけるなよな。2人ともびっくりするだろ。はぁ…。2人ともごめんね。僕は3年の八衣春也。こっちは律夏。2人とも図書室の前でどうしたのかなって声を掛けたんだ」
メガネをかけている人、八衣先輩が説明をしてくれる。
「いいとこどりかよ〜。まぁそういうことなんだよね〜」
なるほど…。
ってこれ私達も自己紹介した方がいいんじゃ…。
そう思い陽菜の方を見ると彼女も私の方を見ていた。
「えっと、私が…」
自己紹介をしようとすると、チャラそうな先輩、星海先輩が遮った。
「俺2人とも知ってる!ポニーテールしてるのが長谷川陽菜ちゃんで、ハーフアップしてるのが篠ノ井凛桜ちゃんだよね!」
「先輩すごーい!どーしてあたし達のことご存知なんですか??」
陽菜が食い気味で聞くとすごいだろと言わんばかりの顔をしている。
「それはね〜…」
キーンコーンカーンコーン…。
「あ、予鈴だ・・・」
「そんな~」
教室までは少し距離がある。
「早く行かないと遅刻しちゃうよ。お二人ともすみません。私たちは先に失礼します」
そう伝えお辞儀をしてから陽菜の手を引く。
次に先輩と会えるのはいつだろう。
一つ楽しみが増えた。
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