ep.11 祈り

 雨の季節が通り過ぎようとしている頃だった。

「大月君!」

 顔を紅潮させた小松先生が教室に飛び込んだ。

「青君、青君、センセイ来たよ!」

「!」

 青が反応するよりも速く、つゆりが立ち上がった。半液体のようにだらしない姿勢で座っていたトウジュも弾かれるように飛び上がる。

 胸に大判の封筒を抱いた小松先生は転びそうになりながら教壇へ。青、トウジュ、つゆりの三人も駆け寄って集合する。

 小松先生の頬はリンゴのように紅潮して、大きな瞳は潤んでいるようだ。

「どうぞ、開いてみて」

 渡された大判の封筒は厚みがあった。何事かとざわめく教室の視線の中、青は封筒を開く。金の箔押しの縁取りが顔を出した時点で、

「きゃー!!」

「おおーー!!」

 つゆりとトウジュが先に声を上げた。勢いに押されて引き抜くと、中から証書が四枚。

 薬術 一級 合格証書

 毒術 一級 合格証書

 罠工 一級 合格証書

 式術 一級 合格証書

「すっげぇ!」

「やったね!」

 青の左右両側から勢いよく抱きつかれて、証書を取り落とし教壇に落ちる。小松先生が慌てて拾い上げていた。何人かの生徒たちも集まってきて、見たことのない金飾りの証書を珍しそうに覗き込む。

「凄いですよ、大月君。七歳で薬と毒は最年少記録に並びました。罠と式は最年少記録更新です」

 周りの子どもたちが「凄いの?」「すごいんだよ」と騒ぐ中、トウジュとつゆりに挟まれた状態の青は一人、どこか他人事のように周囲を見渡していた。

 小松先生も、トウジュもつゆりも、自分よりも喜んでいて。学級の子どもたちは、自分よりも驚いていて。

 ただ、

「師匠に知らせなきゃ」

 なんてことを考えながら、青は笑顔で「ありがとう」と祝福に応えた。


 放課後、霽月院に帰宅した青は個室に直行した。

 藍鬼の作業小屋の居間程度のおよそ八畳間、子ども一人には十分な広さだ。最低限の、しかし不足のない棚や文机等の簡素な家具も揃っている。

 障子張りの格子窓を開き、さらに硝子窓を開け放つと、院の中庭の景色が広がる。白と茶を基調とした花壇には紫陽花が花開いていた。昨晩降った雨粒の残りが陽光を反射させて宝石のように煌めいている。

 青は空に向かい両手を掲げた。瞳を閉じて一呼吸し、開けると、手のひらに浅葱色の小鳥が停まっている。青が習得した式鳥だ。

「これを、師匠に」

 四つ折りにした、四種一級合格を知らせる手紙を黄色い嘴にくわえさせ、空へ放つ。式鳥は窓の前で旋回し、森の方向へと飛んでいった。藍鬼が不在であれば、小屋付近のカシのウロへ落とすよう、式鳥には教えこんである。手紙を見つけ次第、藍鬼からも式鳥が寄越されるはずだ。

 これまででもっとも楽しみな返事を心待ちに、青は静かに窓を閉めた。

 ところがそれから三日、五日、梅雨が終わりを迎え紫陽花が枯れても、藍鬼からの返信は無かった。

 珍しい事ではない。長期の任務だといって、一月(ひとつき)以上会えなかった事もあった。

 式鳥を使えるようになる前は空振りに終わることも多かったはずだが、便利な手段に慣れるとせっかちになってしまうのかもしれない。

「のんびり待つしかないかな」

 少なくとも藍鬼が自ら定めた課題の期限とする夏までには会えるはず。

 そう開き直ろうとしたところ、報せは意外なところから舞い込んできた。

「大月君」

 それは、慌てた様子の小松先生からだった。教員室を抜けて更に奥、校長先生の執務室まで共に向かうと、校長先生と教頭先生、年中行事でしかそろって顔をみかけない面子が青を出迎える。白い長衣を身に着けた初老の男が校長先生で、校長先生と色違いで裾が短い薄青の長衣の初老の女性が教頭先生だ。

 位の高い人は裾や袖が長い服を着るのだな、などと頭の隅で考えながら、青は居並ぶ大人たちへ一礼する。

「四種の資格試験の一級合格、改めておめでとうございます」

 第一声は、好々爺な校長先生からの祝福だった。校長先生は誰にでも敬語を使う。小松先生と同じだ。

「よくお勉強を頑張っていたって、小松先生からも聞いていたのよ」

 校長先生の隣から「ばあば先生」と子どもたちから愛をこめて呼ばれている副校長先生も、地蔵のような笑顔だ。

「そこでね」

 改まったように、校長先生は居住まいをただす。背もたれの高い椅子が年季の入った軋み音を漏らした。

「長が、大月君にお会いになりたいと」

「長?」

 あのおじちゃん、と言いかけて青は慌てて空気を飲み込んだ。長に謁見したのは二年前の一回きりで、青もこの二年間で社会というものを多少は学んだ結果である。

 先生いわく、優秀な成績を収めた子どもの激励のため、長への謁見が行われるのは慣例であり、栄誉な事であるという。

「あ」

 ここで青は重要な事を思い出す。

「僕、行き方が分からないです」

 前回は藍鬼が抱えられて空から侵入したのだから。

「先生と行きましょうね」

 小松先生の笑顔は、少しだけ緊張で固くなっていた。


 数日後。


 七重塔の正面は物々しい門と石壁で下界と隔てられており、目に入る場所すべてに警備や衛兵の姿が見受けられ、なんとも厳めしい空気を放っていた。

「近くから見ると、やっぱり大きいね、先生」

「本当ですね…」

 門を抜け、小松先生と青の二人は霊山のごとき七重の塔を見上げる。若い女と少年の二人組はこの場で目立っていた。当然、不釣り合いという意味で、である。いくつもの衛兵や行き交う文官や高官らしき人々の視線をやり過ごし、二人の身長の十倍はありそうな高さの木門をくぐり、石畳の玄関口に入ると受付係数人が仕切られた窓口ごとに並んでいる。

 そのうちの一人に小松先生が声をかけると、すんなりと奥の廊下へと通される。

 どうやって階上まで登るのだろうと青が考えていたところ、二人は四角い箱のような装置の前へ案内された。本立てのような木と鉄で組み合わされた箱の中に立つと、巨大な歯車が動力となって箱を上へ上へと押し上げる。

「わあ、面白い。先生、これ何ですか?」

 ぐんぐんと階下の景色が遠ざかっていく様子を楽しむ青の横顔に、小松先生は優しく笑いかける。

「これは昇降機って言います」

「どういう仕掛けで動いてるんだろう…」

 青の視線は上下左右へとせわしなく動く。からくりが理解できれば、罠作りの参考になるかもしれない。目にするもの全てから学ぶ。師の言葉を青は忠実に実行していた。

 目的階につくまで、小松先生は静かにその様子を見守っていた。

 間もなく昇降機は減速し、鐘の音と共に停止した。鉄柵が降りて目の前に伸びる廊下への渡り板が伸びる。

「どうぞ」

 門衛の仕草に促され、小松先生と青の二人は廊下へ足を踏み入れる。二人が階に降り立った事を確認した門衛によって渡り板が取り外されて、再び昇降機の柵が閉じられる。

 敷物が張られた廊下を歩くうちに、外廊下が見える硝子壁へと景色が変わる。こんな高い場所まで自分を抱えて跳んできたのかと、改めて青は藍鬼の風術の力に驚く。

 そこを過ぎれば見た事のある光景だった。大人四人分ほどの巨大な扉があり、両脇には門衛。扉の前には藤色に金刺繍の敷物。二年半ごしの、長室だ。

「先生はこちらでお待ち下さい」

 門衛の一人が、廊下の壁際に置かれた長椅子を示した。振り返る青へ、

「大丈夫ですよ大月君、笑顔でいきましょ」

 大月先生はいつもの「大丈夫ですよ」と共に大きく頷いた。

 観音開きの扉が開かれ、青一人が中へ通される。その先に見える光景はやはり二年前と同じ。巨大な執務机があって、右手には書棚。執務机の向こうに長衣の長がいて、左手は総硝子張りの壁、その前に、

「し、師匠!?」

 藍鬼が立っていた。

 見慣れた黒い鬼豹の仮面、だがいつもと異なるのは、脛まで隠れる長い外套を身に着け、背に大きな鞄を背負っていること。厚みのある外套の薄青の生地はあちこち汚れが目立つ。任務から帰還したばかりであろう。

「こんにちは、大月君」

 執務机の方から、長の声。

「あ」

 我に返って執務机へ向き直ると、二年前と変わらない、長の柔らかい笑みが青を出迎えた。

「えっと、大月青です、このたびは、え、エッケンの」

 校長先生たちに教えられたご挨拶をいかにもぎこちなく口にすると、

「面倒くさいご挨拶はいいよ。「おじちゃん」と話をしよう」

 長は気さくに手を振る。

「あ、その、えっと」

 二年前の自分の失言に赤面しつつ、ちらちらと藍鬼が気になって落ち着かずで、青の感情は忙しい。

「四種の一級資格、最年少合格おめでとう。よく学んでくれているようで嬉しいよ」

 長は改まった語調で祝福を口にした。

「もっとも、私からより「彼」から言われた方が嬉しいかな」

 彼、で長の目は硝子壁の前に立つ外套の藍鬼を一瞥した。

 助けを求めるように青が師を振り向くと、外套に包まれた師は首だけで頷く。

「返事ができていなくてすまなかった。よくやった」

 藍鬼の言葉は素っ気ないものであったが、青を破顔させるには十分だった。

「うん、ありがとう!」

 師弟の結びつきを前に長の瞳が瞬時、鈍色に曇った。

「君にここに来てもらったのは、ただ話をするだけではないんだ。私から贈り物があってね」

 長が片手を上げると、門衛が頷いて扉を開ける。青の背後へ文官が一人、室内へ足を踏み入れた。両手で恭しく三宝を掲げ、青の横に回り込むと腰を屈めた。青の前に、盆の上に乗せられた手形が差し出される。撚った飾り紐が結ばれた、長方形の小さな木の短冊だ。墨文字の上に朱印が押されている。

「それは通行手形だ。書いてある場所へ自由に出入りができる」

 短冊には「七重塔 一層 蟲之区」と書いてあった。

「あ、ありがとう、ございます。む、ムシ?」

 青が短冊を受け取るのを見届け、文官は一礼し、楚々と部屋を出ていった。

「この塔の一階層の、東側の区画に、大きな書庫や工房があって、その一帯が蟲之区と呼ばれているのだよ」

「なんでムシなんですか?」

「本の虫や、研究の虫が大勢いる場所だからね」

 駄洒落でついた名前らしい。

「え…ムシがいっぱい…?」

 ピンと来ていない様子の少年へ、

「近々、行ってみるといい。そろそろ学校や霽月院の図書室では物足りなくなるだろう」

 長は最後に微笑みを手向けた。

「さて」

 と一区切りの息を吐き、長は次に藍鬼へ目配せをする。

「待たせた。どうぞ」

「……青」

 硝子窓の前、外套の中で腕を組んだ姿勢のまま動かなかった藍鬼が、青へ一歩を踏み出した。外套の長い裾が厚みのある音をたてて揺れる。

「俺からも、お前に渡すものがある」

「師匠からも?!」

 分かりやすく黒曜の瞳が爛々と輝く。

「明後日、明けの六つの刻に、森の小屋へ来てくれ」

「明後日?分かった!」

 仮面を見上げる青は、素直に頷いた。何故そんな早朝に、という疑問は沸かなかった。この一年、実技練習のために早朝集合を命じられる事はしょっちゅうあったからだ。

「楽しみにしてるね!」

「…ああ」

 やや躊躇したような一息を挟んで、黒い仮面は弟子へ優しく頷き返した。

「……」

 頬を紅潮させる弟子とその師の様子を、長は執務机ごしに黙って見守っていた。



「俺はここでもう少し話がある」と青を先に帰らせ、藍鬼は執務机の長へ向き直った。

 背後の扉の向こうから「蟲之手形!?大月君すごいです!」と女教師の驚く声。廊下でのやりとりが目に見えるようによく聞こえてくる。扉の前の門衛も失笑していた。

 次第に教師と生徒の楽しそうな会話が、昇降機方面へ遠ざかっていく。

 声が完全に消えたのを背中で確認してから、藍鬼は改めて長へ口を開いた。

「蟲之手形の手配、感謝する」

「なに。誰が見ても文句がない成績だ」

 長の指が、執務机上の資料の束を徒に捲る。

「君だってそのために大突貫で一級を取らせたんだろう。四種も取ってくるとはさすがに私も驚いたが」

「俺もだ」

 黒い仮面と長の視線がかち合い、両者同時に苦笑を漏らす。

「君もよく入り浸っていたっけ」

 仮面を見上げる長の瞳に、追憶の靄が揺蕩った。

「確かに」

 向き合う黒い仮面の下から、笑み声が零れる。

「あそこは楽しかった。稀覯資料や、珍しい道具に素材…それに、必ずあいつにとって良き師や友との出逢いもあるだろう」

「……」

 執務机の主が口を噤んだ様子に、

「俺が教えられる範囲にも限界がある、という意味だ」

 藍鬼は少しばかりの後ろめたさを乗せ、言い添える。

「…君が禍地(かじ)と出逢ったのも、あそこだったね」

「……」

 今度は藍鬼が声を飲み込む。

 両者の間でしばしの沈黙が降りてきて、

「なあ」

 長の声がそれを破った。

「君、本当は…」

 語尾を遮るように、仮面が首を横に振る。

「俺のケジメでもある。もう決めたことだ」



 二日後。

 明けの六つの刻より少し前。

 青は森の小屋へ向けて小道を足早に進んだ。

 晩春の埃っぽさを洗い流す梅雨が明け、森は夏日を呼ぶ朝雲に霞んでいる。肌に纏わりつく湿気を振り切るように、青は藪をかきわけた。

 藍鬼と修行の約束をした日の朝も、こうして青は森を駆けていた。今日は何を教えてくれるのだろうという、期待と高揚だけに満ちた時間。

「あ、もう来てる!」

 小道が途切れ、木々の向こうに小屋が見えてきた。その前に人影が確認できて、青の足は速まる。

「師…」

 師匠、と呼びかけながら藪を抜け出したと同時に、青の足が止まる。

「あれ…?」

 小屋の前には、藍鬼を含めて三人の人影がいた。

 藍鬼、ハクロ、ホタルの三人。

 いずれも薄青色の、脛までを覆う外套を身に着け、それぞれ荷を背負っていた。

 旅装束の様相だ。

「青、来たか」

 気配で既に察していたであろう藍鬼が、青の姿を見止めて片手を上げる。

「師匠…?どうしたの、そのカッコ…ハクロさん、ホタルさんも」

 恐る恐る一歩ずつ、青は小屋の前で待つ藍鬼の元へ、足を進めた。

 藍鬼から数歩引いた場所で、ハクロとホタルは直立して静かに待っている。

「長い任務に出る事になった」

 青は頷かなかった。口を噤む弟子の前に、師は両膝をついて目線を合わせた。

「任務…どれくらい?」

「わからない」

 仮面はまっすぐ青を見つめていた。

 至近距離からよく見れば、鬼豹の眼の部分には切り込みがあり、その向こうから瞬きする瞳が見え隠れしている。

「手を」

 ふと、その瞳が伏せられる。藍鬼の手が青の左腕をとった。半袖から露出した腕の内側を上向かせる。青はただただ、何が行われようとしているのかを見つめるしかない。

「少しだけガマンだ」

 藍鬼は腰の道具袋から符を一枚取り出すと、青の細い腕に貼り付けた。その上へ手のひらを押し当て、

「印刻」

 短い唱えを口にする。途端、符が赤く発光した。

「あつっ!」

 刺すような痛み。反射的に引こうとした腕は藍鬼に強く掴まれ逃げられない。皮膚を焦げ付かせ、肉を刻むような生理的恐怖を覚える音と共に符は白煙を上げた。

「痛、痛い!ししょ…!」

 体をよじらせ、涙と汗で顔をぐしゃぐしゃにする弟子の腕を、師はそれでも離さず押さえ込む。背後のハクロやホタルは微動だにせずその様子を見下ろしているだけ。

 一瞬の事が、青には長く感じられた。

 よし、という仮面の奥からの呟きと共に、腕が解放される。煙は消え失せ、痛みも嘘のように治まった。

「あ、あれ」

 あまりの痛みに吐き気さえ感じていたが、それもケロリと退いた。

 青の左腕の内側に、赤黒い模様が刻まれていた。ミミズ腫れのように浮き上がっていた模様が、見る見る血色を失くしてほぼ肌色と同化する。

「消えちゃった?」

 指先で撫でてみるが、傷がついた感触も無い。

「お前の腕に、鍵を刻印した」

「鍵?」

「あるものを開ける鍵だ」

「何を開けるの?」

 それが藍鬼からの贈り物、という事なのだろうか。

「その時が来たら、分かる」

 藍鬼の指先が、青の目許の涙と汗を拭った。

「…師匠?」

 そんな事をされたのは初めてだった。

 修行中に転んでも尻もちをついても、師は絶対に手を差し伸べる事はなかった。 

 その時とは、いつなのか。

 これではまるで―

「課題」

「ん?」

「次の課題は何?師匠が戻ってくるまでに、タッセイするから!」

「……」

 繋げ止めたい、その一心で口から出た言葉。

 仮面の向こうで、瞳が揺れた気がした。

「課題は自分で探すものだ。お前はもう、それができる」

 藍鬼の両手が、青の肩へ置かれる。ズシリと重たい。手甲越しに温度が伝わってきた。

「小屋は自由に使っていい。時々は掃除でもしておいてくれ」

「ふはっ」

 何だそれー、と青が思わず笑いを零すと、仮面の向こうで瞳が細められた。両手が肩から離れる。

「師匠」

 立ち上がりかけて片膝になる藍鬼へ、

「ご武運を」

 青はつゆりから習った「祈り」を手向けた。

「……」

 仮面はしばらく、真っ直ぐに青を見つめて動かない。

 ざわりと森から吹く湿った風が通り過ぎた。

 仮面の奥から小さな吐息が聞こえた。

 藍鬼の指が仮面の端を掴み、押し上げる。

 涼やかな目許をした男の顔が、そこにあった。

「え!?」

 青は口を開け、

「一師…?!」

 背後のハクロとホタルが初めて反応を見せる。妖鳥の面と白頭巾が顔を見合わせていた。

「行ってくる」

 柔らかい色が灯った色素の薄い瞳が、優しく細められる。

「……」

 青が返事をする前に藍鬼は再び仮面を下ろし、立ち上がった。

「待たせた」

 外套の裾を翻して青から背を向け、ハクロとホタルへ目配せする。

 戸惑いを見せたものの、気を取り直した両名は頷きを返す。

 朝を告げる森の鳥が一声を発した。

 一陣の風と共に、三人の姿はその場から消える。

 西の方角に向けて森の木々が波打ち、揺れている。


 朝霧が晴れるまで、青は森を見上げて立ち尽くした。

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