第14話 火と風
そして今はというと、僕の部屋でラヴィエ様と命の神術を開発している。所謂回復系ってやつだ。
「ラヴィエ様?ちょっと近くないですか?」
「あらそう?でも近いほうが効果が確認しやすいもの」
そりゃそうだけどね?ラヴィエ様、すごくいい匂いがするので僕としても嬉しいんですけど距離感が近過ぎて集中出来ない。
試しに開発した命の神術、【
「【
気を取り直して集中。【
「おお!ラヴィエ様!バッチリです。僕の求めていた術です」
「よかったわ。うまく出来たわね」
女神のような微笑みを浮かべるラヴィエ様。女神だけれども。
「これであの理不尽女神の稽古の効率が上がりそうです」
「..ログちゃんとウォーラちゃんは本当に仲良しよね」
「そうですか?まあ確かに僕のために毎日稽古を欠かさずつけてくれるし、感謝はすごいしてます」
「…羨ましいわ..」
「ん?ラヴィエ様、なん・・!!?」
ラヴィエ様が何か小さな声で呟いたので聞こうとした瞬間、凄まじい爆発音と振動が部屋を襲った。
「爆発?外の方ですよね?ってあれ?」
「・・・」
爆発音がしたので部屋の扉のほうを確認し、ラヴィエ様へ振り返って問いかけてみるとそこには無表情のラヴィエ様が扉のほうを見つめていた。あれ?怒ってらっしゃる?なんか静かなる怒気が伝わってくるんですが。
「と、とにかく様子を見に行きませんか?」
「そうね。そうしましょ」
よくわからないけどとにかく爆発音が気になるので外へ様子を見にいくことにした。
***
ここは
火の海から立ち昇る火柱、それを巻き込んで荒れ狂う暴風。
ここは少し前まで長閑な神殿前の広場だった場所だ。様子を確認するためにラヴィエ様と神殿の外にやってくるとすでにこの光景が広がっていた。
「気安くあたしに触れないでって何回言ったらあんたはわかるわけ!?」
「ふっ。これが君の照れ隠しであることなんてお見通しさ。相変わらずの激しい愛情表現だね」
赤い髪の少女と空中に浮いている緑色のロン毛の男性。紹介されなくてもわかるね。火の女神様と風の神様。まじでこの
「・・・ウィンちゃん、あなたのせいね」
「ラヴィエ様?」
ボソッと呟いたラヴィエ様は無表情のまま、火の海に近づいていく。
「ありゃキレてるな。ラヴィエのやつ」
「ウォーラ様?どういうことです?」
いつの間にか僕の後ろに立っていたウォーラ様が話しかけてきた。
「ログ、覚えとけ。ラヴィエだけは怒らしちゃいけない」
「いやいや、だからどういうこと?」
そうこう言っているうちに風の神様の真下に辿り着いたラヴィエ様。
次の瞬間、凄まじい跳躍で風の神様の真横に飛んだラヴィエ様。拳をすでに引き絞られてらっしゃる。
「え?ラヴィエじょ」
「..滅べ」
ドガン!!という凄まじい殴打音と共に風の神様の顔面にラヴィエ様の拳が炸裂し、そのまま風の神様を遥か彼方に殴り飛ばした。
「えぇぇ」
「な?ラヴィエは私の次に強いんだぞ。力がすげーんだ。力だけは私より上だな」
やべーよ。何あのパンチ。あんなか弱そうな腕でなんであんなパワーが。風の神様大丈夫なの?すごい勢いで飛んでったけど。
ひ、ひとまず火も収まったみたいだし、
「ラヴィエ、一応お礼を言っておくわ」
「いいのよ。どうせウィンちゃんがあなたにちょっかい出したんでしょ?本当に嫌がってるのに気付かないなんてダメな子」
火を彷彿とさせる赤いショートヘアの美少女がラヴィエ様にお礼を言ってるところだった。
「フィアー、派手に暴れたみたいだな!」
「ウォーラ、ええ。あいつ話が通じないから。それよりそいつが?」
そ・い・つ。なかなか切れ味が鋭い女神様なのかな?
「初めまして。ログといいます」
「あんたがログね。ふん。なかなか挨拶に来ないからあたし自ら来てやったわよ」
あ、それはちょっと申し訳なかったかも。協力をお願いしといて挨拶に行かなかったのは僕の落ち度だな。
「すいません、僕からお願いをしておいて、失礼しました」
僕は頭を下げてお詫びをする。
「ふん。わかればいいのよ。わかれば。あたしはフィアー。火を司っているわ」
「たしかにさっきはすごい火柱でしたね!」
「ふ、ふん!あのくらい大したことないわ」
僕が褒めるとフィアー様はプイッとそっぽを向いてしまう。ほう。これはあれだね。ツンツン女神ってやつだな。クレディオス様、女神様達の属性濃過ぎないですか?
「素直じゃねーな。フィアー。そんなんだからあの変神に絡まれんだぞ」
「う、うるさいわね!」
「ウォーラ様?あなたは..直球過ぎですよ?」
「あん?」
「おう?」
「..ふふふ」
こういうところウォーラ様はクレディオス様と一緒だ。フィアー様をフォローすると睨みつけられたので睨み返しておく。もうウォーラ様への遠慮が日に日になくなっていくのを感じるよ。ラヴィエ様はなんで無表情で笑っているのか。
「ウォ、ウォーラとこんな対等に言い合ってる人族、初めてみた」
「そうなのよね。..はぁ..」
「え?ラヴィエ?」
「!!?」
ウォーラ様と言い合っていると背中に悪寒を感じる。振り向くと慈愛に満ちた微笑みを僕にむけるラヴィエ様と困惑の表情のフィアー様がラヴィエ様を見ていた。どうしたんだろう?それよりフィアー様にもお願いせねば。
「そうだ。フィアー様!」
「何よ?」
フィアー様に声をかけるとキッと睨まれる。ちょっとこれクセになりそう。
「火の神術の開発に協力して欲しいんです。お願い出来ませんか?」
「クレディオス様からも聞いてるし、しょうがないから協力してあげるわよ?」
よっし!やっぱり攻撃系の術と言えば火。考えるだけでワクワクしてくる。
僕が内心テンションを上げていると風が強く吹き込んできた。どんどん強くなる風は次第に竜巻に変化していく。目を開けているのも辛くなり、腕で目の前を隠していると男性の声が聞こえた。
「ハッハッハ。ラヴィエ嬢、酷いじゃないか!いきなり殴ってくるなんて。私の美しい顔が歪んでしまったらどうするんだい?」
「あらそう?逆に凛々しい顔になったと思うわよ?」
腕を下ろして目を開けてみるとそこには緑色の長髪を風でなびかせた美男子が立っていた。顔の頬が思いっきり腫れているので美男子感が台無しだが。なんか色々問題ありそうな神様だけどお近づきの印に提案してみよう。
「あ、あの。その頬治しましょうか?」
「ん?君はもしかして噂の未来からきた人族かい?・・んーー」
人の顔をまじまじと確認し始める風の神様。
「うん。すごい地味な顔だね!私の美しさには遠く及ばない!」
「片面おたふくみたいな顔して何言ってんの?」
すごい笑顔でサムズアップしながらそんなことを宣う風の神様へ反射的に言い返してしまった。地味な自覚はあるけど初対面でいきなり人の顔をディスるとかどんな神経をしているのか。
「な、なぁ!?お、おたふくって何?この私の美顔に対して言ったのかい?いま」
「あなた以外にいないでしょ?いまおたふくみたいに顔腫らしてる神なんて。鏡持ってきましょうか?」
「そ、そんな..私の顔がそんな…」
異様なほど狼狽える風の神様。
「私はログちゃんの顔のほうが好きよ。素朴で落ち着くもの」
「私も同意見だな。お前の顔はなんというか、飽きる!」
なぜか恍惚な顔をしたラヴィエ様とドヤ顔で賛同するウォーラ様が風の神様にそう言い放つ。
「!!?ラヴィエ嬢とウォーラ嬢ががが..わ、私の顔がこんな..こんな..ガフっ」
驚愕の表情のまま、風の神様はその場で倒れ込み、気を失ってしまった。なんだろう。え?気絶しちゃったんだけど。風の神様。
「まったくこの
「
「ログちゃん、気にしなくていいわよ。ほっといてもそのうちケロッと起きてくるわ」
「..私があんなに苦労してるこいつの絡みをこんな簡単に跳ね返すなんて..」
みんな結構辛辣な対応でした。そういうキャラなのかもね。フィアー様はなんか関心されてるけどそんな大したことしてないですよ?
とにかく、火の女神様と風の神様にお会いすることが出来た。がっつり神術の開発に協力してもらおうじゃないか。
このあと、目を覚ました風の神ウィンデス様から何故か永遠のライバル認定されるのだった。
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