第12話 未来への準備

 次の日、クレディオス様の部屋に訪れた。今日はクレディオス様とクロニア様の二神だけがいらっしゃる状況だ。

 他の皆さんは長期で準備を手伝ってもらうために一度用事を済ませてきてしまうとのこと。ウォーラ様はいつもの組み手だ。


 ちなみに身体は筋肉痛でバッキバキだが、神力を軽く循環させることで動くことが出来ている。これは神力のコントロールの訓練にもなるな。INTが上がりそうである。


「おはよう、ログ君。随分ウォーラにしごかれたみたいだね」


 クレディオス様が僕の様子を察して言葉をかけてくれる。


「はい、でも充実感はすごいですね。今日も楽しみでしょうがないです」


「そ、そうかい?ほどほどにね?」


 あれ?クレディオス様がちょっと引いてる?鍛錬、最高に気持ちいいんだけどな。ちょっと今度誘ってみよう。


「今日はログが考えてくれた事を踏まえて魔神達が攻めて来るまでにどうやって準備を進めていくかを整理するのよね?」


「そうそう。ここはボクに整理と進め方を任せてもらってもいいかな?」


「もちろんです」


 僕としてはこの世界に取り入れたい仕組みと考え方を伝えることが出来たのでこれからの進め方は創造神であるクレディオス様が考えてくれたほうがいい。


「まずは迷宮ダンジョン制作の着手についてはテチノロギスを責任者として急ぎ進めてもらおう」


 僕も同じ考えだ。テチノロギス様に責任者になってもらい、主体的に進めてもらいたい。


「これがないと『神力』や『状態表ステータス』、『神術』と『技能スキル』を世界の事象に登録して人族に授けても意味がないからね」


 僕は頷いてクレディオス様のお話を肯定する。


「迷宮制作と並行してログ君には『神術』と『技能スキル』。これを考えられるだけ開発してほしい。もちろん最初のダンジョンの制作には知恵を借りるよ。ボク達ではまだ分からないからね」


「わかりました。色んな形があるので取り入れてもらえればと思います」


「ダンジョンの数なんだけど、相当数があったほうが好ましいよね?」


「ご理解の通りかと。少ない数だと地域格差が生まれてしまいますし、争いの種になる可能性が上がるかと思います」


 クレディオス様とクロニア様は頷きながら僕の話に聞き入っている。


「もちろん、相当の数があってもそれは起こり得るでしょうけど、それも含めての必要な変化だと思います」


 どんなに配慮したとしても欲を刺激して成長を促す仕組みだ。どこかで争いは起こるだろうし、同じ人族の性質を僕は理解しているつもりなのでこれは不可避だと思っている。


「ちなみに、ログ。あなたの見立てを聞きたいのだけど、この先どれくらい先の未来に魔神達は攻めてくると考えているのかしら」


「そうですね。先日、街に行った時に『国』のお話をしたのを覚えてらっしゃいますか?」


「ええ。もちろん覚えているわよ」


「僕が過去の歴史を知るために見ていた資料では『国』がこの世界に存在していたんです」


「なるほどね。ということは」


 クレディオス様が僕の想定を予測してくれる。


「はい、資料にあった『国』は建国してから200年程は経過してる事が記述されていました。また、その頃に魔神達が現れたと記されています」


 正直、この時代においては僕の知っている過去とは違う道を人族は歩んでいくことになると思う。

 その時点で『国』が僕のいた時代と同じタイミングで建国される、もしくは『国』という仕組みがうまれるかは正直分からないし、微妙だなと思っている。


「なるほど。つまり世界がこの先どう変化するかはわからないけど現時点で国がない以上、200年以上の猶予はあるということね」


「はい、僕はそう考えています」


「ログの考えは正しいでしょうね。その想定で動いていきましょう」


「ただ、200年以上も先の事なので僕自身が皆さんと一緒に魔神と戦う事が出来ないのが心苦しい所なのですが」


 気付いた時にも思ったことだけどこればかりはしょうがない。全力で未来に希望を託す所存である。


「それについては問題ないから大丈夫だよ」


「え?」


「..はぁぁ」


 え?クレディオス様、意外と冷たい。もうお前は用済みだってことかな?クロニア様もため息ついてるし。

 ちょっとへこむ..いやいや、大丈夫だから安心して逝きなさいってことだよね。きっとそうだ。


「じゃあ、進め方はさっき話した形でいくとしよう。ちなみにログ君、ウォーラと状態表ステータスに情報を追加しておいたから確認してみて」


「は、はい!」


(状態表ステータス)


 念じると僕の目の前に半透明のウィンドウが現れる。


ーーーーーーーーーーーー

ログ

種族:人族

階位:十

身体能力:

STR:E VIT:E AGI:E INT:B

神術:

水の神術 氷の神術

技能:

剣術

ーーーーーーーーーーーー


 お?神術と技能が追加されてる!クレディオス様とウォーラ様、いい仕事してますね!

 ウォーラ様にはお披露目する前に沈められてしまったがアクイス様とは氷の神術もいくつか開発しておいたのだ。


「いい感じですね!ちゃんと追加されてますし、すごく見やすいです」


「うんうん。そうでしょうそうでしょう」


 クレディオス様は満足そうにしている。


「この状態表ステータスの表記の改善とかも神様達にお任せします。あまり僕が関わり続ける領域ではないと思うので」


 正直、基礎的な部分だけ伝えられればあとは変化を楽しみたいというのが本音だ。


「わかったよ。あとの改善は任せてほしい」


「クレディオス様?私も意見はするわよ?あなた達だけに任せていたら悪ノリし過ぎそうで不安だもの」


「クロニアは心配性だなぁ。ボクはいつだって全力なだけさ」


「だからよ」


 クロニア様も監修していただけるらしい。正直安心した。


「よし!じゃあ、迷宮ダンジョンがそこそこの数用意出来た段階で『世界教典アカシックレコード』へ。世界に変革をもたらす準備を一気に進めようじゃないか」


 おお、最後なんか今までで一番創造神っぽい。


 僕は本当に偶然この時代にタイムトラベルが出来て幸運だった。数日前まではこの世界へ転生した不運を呪っていたけど、結果は前世でも憧れたファンタジーの世界を堪能出来ている。


 もちろん、これから先には魔神の襲来という世界の危機が待っているけど僕と神様達の協力があれば不幸な未来を覆せる。そう思うのだった。





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