第2話 時の女神
さて、この目の前の超絶美女はどこのどなたでしょう?まずは僕から答えるのが突然お邪魔した者の礼儀かな?
僕は質問に答えようと歩いて近づくことにした。
「は、はじめまし——」
「..止まりなさい」
え?身体が動かせ、ない。謎の美女がそう静かに口にした瞬間、頭を掻きながら挨拶をしようとした僕の身体はうんともすんとも動かなくなってしまう。
「待って待って!僕はあなたに危害を加えるつもりはないです!この魔法?を解いてもらえません?」
「魔、法?あなたは何を言ってるの?」
謎の美女は不可解という表情を浮かべて顔を傾げている。
「え?この僕の身体を抑えている魔法を解いてほしいって言ってるんですけど..」
「?それは魔法というものではないわ。私の時を止める力をあなたにかけてるだけ」
待て待て。いま目の前の彼女は何て言った?魔法じゃない?時を止める力?それって神代で神々が使っていた力じゃないの?
「魔法じゃない?じゃああなたは神代の神々の力を使ってるってことですか?」
自分でも抑えるのが大変なくらい、気持ちが高揚してしまっているがなんとか冷静に質問するこが出来たと思う。
「神代?あなたはさっきから理解出来ない事ばかり言うのね?神々の力も何も当たり前でしょう。私自身が時の女神と呼ばれる者なのだから」
「え?」
目の前の女性は普通に人族のように見えるけど冗談には聞こえない?こんな無表情で冗談を言うわけないよね。えーっと、というと。あれか。時の女神様は生き残ってらっしゃったってことかな?
「な、なるほど?と、時の女神様は生きてらっしゃったんですね?」
「..あなたはさっきから本当に..ん?ちょっと待って。あなたのいた場所、時間の歪みの残滓が残ってる..あなたはまさか…」
そう言うと女神様は考え込むように腕を組んで黙り込んでしまった。
とりあえず、時を止めるのやめてくんないかな?これちゃんと血流れてる?なんか感覚がない気がするんだけど。
「あ、あの?女神様?」
一向に進展しないので僕は再度女神様に話しかけてみる。
「..ちょっと聞いてもいい?あなたがさっき言っていた魔法って何?」
「魔法は魔法ですよ?悪魔や魔人が使っている力じゃないですか」
あれ?女神様何言ってんだろう?魔法知らないっておかしいよな?あなたは過去に魔神や悪魔とも戦ってたんじゃ。
「なるほど。あなたはどうやらこことは違う時代から来たみたい。私は魔法を知らない。悪魔や魔人?という言葉も初めて聞いたわ」
「…」
僕は言葉を失う。オーケーオーケー。こちとら既に異世界転生なんていう不思議現象を体験済みなんだよ。タイムトラベル?なんてそれに比べたら不思議でもなんでもない。
ん?待てよ。ということはここはまだ魔神も悪魔も魔人もいない神代のいつかってことだよな?まだ人族が奴隷になっていない時代の。
「あなたはここにどうやってきたの?」
「ん?」
考え事をしていると女神様が無表情のまま、質問をしてきた。
「すいません。ちょっと考え事してました。はい、ここにくる前は旧神域、あ、僕の時代に残っていた神様達が住んでいた場所と言えばいいですかね。そこにいたんです。それで、不思議な部屋に大きな石板のようなものがあって。触れた瞬間に光りだして、気づいたらそこに立ってたんです」
「…」
女神様、また考え込み始めちゃったよ。でもここが平和だった神代なら未来に起こることを神様達に伝えて未来を変える事だって出来るんじゃ。僕には無駄に調べ上げた『古文書』の記憶があるんだ。
あれ?そういえばこの時代の人族は神様から力を授かってたよな?ということはやっと僕が知る異世界転生らしくなってきたんじゃないだろうか!
「それは時間旅行装置ね。いま、私の頭の中に理論だけはある。間違いなく私というか未来の私が関与して——」
「やっときたよ異世界ファンタジー!」
「え?」
「あ、すいません。ちょっと取り乱しました。ま、まだ作られてらっしゃらないんですね?」
ちょっとテンションが上がりすぎた。落ち着け。ということは、魔神達の襲来よりもだいぶ前の時代なのかもしれない。まだまだ時間の猶予があるってことだ。
「ええ。まだ理論を整理しているだけ。完成させられるのは当分先のはずよ。だからあなたは未来からやってきたということね」
「そのようですね。..実は女神様、僕から女神様にお伝えしたいことがあります」
決めたよ。僕は未来で起こった出来事を女神様に話すことを決めた。
「私もあなたに興味がある。何を話してくれるの?」
「はい、未来の事をお話させてください。あ、その前にこれ、解いてもらってもいいですか?」
いまだに時を止め続けられてるんだよ。もういいでしょう?
「あ、ごめんなさい。すっかり忘れてた」
女神様はそういうと時を止める力を解いてくれる。
忘れてたって。結構体勢的にも辛かったよ?ほんとお願いしますね。
「ふー。動く動く。ありがとうございます。あ、自己紹介まだでしたよね。僕はログって言います。よろしくお願いします」
「ログね。私は時の女神クロニア。このウォンダの時を司る女神よ」
おお。なんかかっこいい。僕がちょっと感動しているとクロニア様は話を続けてくる。
「あなたの話だけど、私だけじゃなくて他の神も一緒に聞いてもいい?」
「他にも神様がいらっしゃるんですね。もちろんです」
「じゃあ、場所を移動しましょう。ついてきて」
「わかりました」
クロニア様はそういうと振り返り、建物の中へ歩いていく。さて、どこから話したものか。僕は話す内容を考え始めながら後に着いていく。
建物の中はまさに神聖な雰囲気としか表現出来ないような空間が広がっている。白い大理石のようなものでできた壁や床、わずかに光ってるね。これ、どんな不思議パワーですかね。ゲームの中で観たシーンのような建物の中に僕のテンションはさっきから鰻登りだ。
「あ、もう
「はい、どうしました?」
「あなた、少し臭うわ。途中に湯場があるから入ってきて」
「…は、はい。ありがとうございます」
心にくるわ。僕は今、どんな顔をしているのだろうか。周りには奴隷しかいなかったので気にならなくなってたけど、そりゃそうだよね。お風呂なんていつから入ってないのかもうわからんよ。でも美女に無表情で臭いって言われるってこんなにも心にくるのね。
「ここよ。私のことは気にせずしっかりと綺麗にしてきて」
「わかりました!」
僕は遠慮なく、湯場に突入するのだった。
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