第7話 side 布留愛彩
今日、
本人から聞いたので、間違いのない情報だ。
ただお話するだけ、という話だったので、告白したと聞いた時は流石にびっくりした。
振られたといっていたので、落ち込んでるのかな〜と思ってたけど、あたしと冗談言えるくらい全然元気だった。
氷真は昔から嘘がヘタクソだから、誤魔化してるとかそんなんじゃないと思う。
寧ろ清々しい顔をしていて不思議だった。
憑き物が取れたような、決意を固めたようなそんな顔。
「まだ諦めたわけじゃないから」
その言葉が頭の中で繰り返される。
氷真は本当に強い。
あたしは、氷真に自分の気持ちなんて伝えられないっていうのに。
こんなこと言っちゃあれだけど、振られて諦めてくれたほうがあたしとしては都合が良かった。
来夏はあたしからみても完璧な人間だ。
王子様的な感じだからあんまり男ウケはよくないけど、とても性格もいい。
氷真はあの件があってから来夏を意識し始めたんだと思う。あんな事されたら好きになるよね。
そう思う一方で、
あたしはその前から氷真のことが好きだったのに、なんて抱えてたってどうしようもない気持ちも持っていた。
「はは、これじゃあたしの方がBS……じゃなくてWSSだねぇ……」
氷真に話せだとか、積極的に行けだとか、言っておきながらあたしこそ何も行動出来ていない。
「幼馴染」というレッテルを剥がすのはあたしにとってあまりに重くて難しいものだった。
あたしの気持ちを伝えて、それが叶わなかったら?あたしは氷真のようにまた立ち上がれるだろうか?
いや、考えるのはやめよう。
もうそんなことは言ってられないのだ。
氷真が来夏を諦めてないってことは、これから来夏にアピールをして自分を好きになって貰う行動をするんだろうし、それをする勇気だって氷真にはある。
氷真のいいところを知ってしまったら、来夏だって氷真の事を好きになってしまうかもしれない。
それだけは絶対に嫌だ。
代わりでもいいと思ってた。
来夏の穴を埋めるだけの存在で良いと思ってた。
だからできるだけ側に居続けたし、恋愛相談とかも聞けるくらいの距離にいた。
でも駄目だ。
あたしは来夏には勝てない。劣化にすらなれないくらい、魅力が違う。
じゃあ、同じ土俵で戦ったって仕方がない。
幸いにも、あたしには来夏にはない三年間のアドバンテージが有る。
氷真の好みだってなんとなく分かってるし、二人で出かけたりもした。
まだ、足掻ける。
穴埋めじゃなくたって、あたしだけの魅力で、まだ。
そう思うとなんだか元気が出てきた。
そっか、なんでかもうすでに人間として、恋人候補として来夏に負けたつもりだったけど、そんな事ないじゃん。
良かった、あたしには氷真を手に入れようと頑張る権利がある。
じゃあ、頑張るしかないじゃんね!!!
「氷真が今のあたしが良いって言ったんだからね」
高く結んだポニーテールを触る。
氷真が初めて私のことを、「かわいい」って友達じゃなくて、一人の女の子として褒めてくれた髪型がコレだった。
あたしはただの恋する女の子だ。
幼馴染は負けヒロイン?残念だけど、来夏だって幼馴染だ。
どっちが負けるかなんて分かんないじゃん。
待ってて。……いや、先に進んでてもいい。
あたしがそれより早く走って絶対に捕まえてみせる。
絶対に、渡さない。渡したくない大切な人へ、
「あたしは、氷真の恋人になってやる!!!」
声に出して、宣言する。
もうあたしは言い訳しない。
「氷真、愛してるよ」
ーあとがきー
6話の愛彩視点です。
いつもの半分くらいの長さで、ごめんなさい!
軽音が忙しかったんです!!!!
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