ペットの猫は見た
鳥頭さんぽ
第1話
これから隣に住む幼馴染が遊びにやってくる。
さっきまで彼女とネット対戦していたのだが、俺が連勝した事が気に入らなかったらしい。
ラグがどうとかネット回線のせいで負けたんだと文句をいうので「じゃあ、直接対決しよう」という話になったのだ。
すぐ来ると思っていたのだが、すでに三十分は過ぎている。
幼馴染の部屋はちょうど俺の部屋の向かい側なので直接声をかけようかと思って窓の外を見た。
幼馴染の姿が見えた。
着替えている最中だった。
ちょうどブラを外したところで上半身が丸見えになった。
隣とはいえ、それなりに距離があるし、肉眼なので形とかははっきり見えているわけではない。
それでも年頃の若い女性の裸を見たという事実だけで興奮してしまう。
と、俺は視線を感じた。
猫だ。
幼なじみの飼ってる猫がじっとこちらを見ていたのだ。
それで俺は我に返り、慌てて窓から離れて隠れる。
そのまましばらく待ったが、幼馴染から怒声が来なかったので気づかれなかったようだ。
それから五分ほど経ち、幼馴染がやって来た。
あの猫を連れて。
「今度は負けないからね!」
「そ、そうだな」
俺は幼馴染の顔をまともに見ることが出来なかった。
対戦ゲームを始めたが集中できない。
さっきの事が忘れられず、動揺がまだ収まっていないこともあるが、目撃者、いや、目撃猫がじっと俺を見ているからだ。
俺は心の中で猫に言い訳する。
(わざとじゃないんだ!別に覗こうとしていたわけじゃない!偶然目に入っただけなんだ!たまたま見たら着替えているとこだったんだ。だからさ、はなさないでくれよ!黙っていてくれよ!)
……って、俺は猫相手に何言ってんだ?
こんな事を考えながら戦って勝てるわけがない。
結局、俺は全敗した。
幼馴染が満足げな顔をしながら言った。
「やっぱりラグのせいだったわね!」
「そうかもな」
そう言うのがやっとだった。
幼馴染が猫を抱いて勝利報告している姿を見て思った。
今度、おやつを持っていこう。
け、決して、口止め料ではないぞ!
ペットの猫は見た 鳥頭さんぽ @fumian
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