明日から家族、時々その他。
溟
序章
01
ぐるぐる、ぐるぐると視界が歪み、かき混ぜられる。マーブル状のそれが元々どのような絵柄だったのか、もう覚えてなどいない。
「カランコエ・ブロスフェルディアナを追放しろ!」
嗄れた大きな声が木霊する。ガン、とギャベルが落とされて更に声が轟く。追及する声が数多に湧いて冷や汗が流れ出す。声ひとつひとつがはっきりと聞こえているような気がした。止まない雨が針のように鋭く降り注いでいる。指をさされる身体がチクチク、ジクジクと痛む。
そっと、二の腕と頬に優しい感覚があった。ふわりと花の匂いが広がって頭がクラクラとする。何も見えない。これら儀式がなんなのか、全くもって理解が追いつかなかった。
「大丈夫よ、カランコエ」
優しい声が前方から降り注ぐ。こつん、とおでこに優しく何かが触れる感覚。さらりと顔の横に輝く細糸が流れる。
「どれだけ多くの人が貴方に奇異の目を向けようと、どれだけ多くの人が私達を否定しようと、貴方のことを愛しているわ」
するりと、目の前の人物の頬に柔らかな涙が滑った。離すまいというように、背後から二の腕を掴む力が強くなる。喧騒が遠のく。反感の音が嵐のように騒がしい。
ぐにゃぐにゃと視界が更に変形していく。くるりと、消えていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます