Previously on KOUJI……

 もうこうなったらとことんネタにする構えである。(海外ドラマによくある渋めの男声でスカした感じにエピソードタイトルを読んでください)


前回までのコウジは……


何度も期待させて消毒のみの診察。

愛しのコウジはズルい男。(歯医者)

東野幸治似だが先生の本名もコウジと判明。

お高めの最新レーザーで消毒してドヤるコウジ。

希望を打ち砕く長めの治療とレントゲン。

先送りの本歯被せ。


❈❈❈


 私はコウジの家との中間にある、徒歩1分圏内のドラッグストアへの道を歩いていた。3月の夜は冷たい空気で満たされていたが、ほんの数日前に比べればずいぶん和らいでいる。上着を着るまでもないかと、パーカー姿のまま、花粉症の子供達の為のティシューを買いに行く。


 必要なものを買い、レジで会計を済ませようとした私は、財布がないことに気付いた。いつも財布を入れているバッグは空っぽ。軽くパニクった私は、上ずった声でレジのおねえさんに話しかけた。


「あの、あの!財布忘れちゃってぇ。取りに行っていいですか?」

「大丈夫ですよ」


 にっこり笑う彼女に勇気づけられ、私は小走りに店の外に出た。恐らく彼女は、駐車場の車の中に忘れたと思っているだろう。


 しかし、私は徒歩。多分、財布は家だ。歩けば1分、ダッシュすれば恐らく30秒、いや、私の運動神経では階段の昇り降りにも時間がかかるはず。昼にコウジの所に行った時、財布を別の上着に入れたのをすっかり忘れていたのだ。


この私の物忘れを甞めるなよ?


 心の中で毒づきながら、財布を掴んでダッシュでとんぼ返りする。なるべく息を切らさぬよう、澄ました顔をしてレジに再度並ぶ。

 無事、会計を済ませ、家に戻ると、エントランスで長女とすれ違った。


「ねえ、オカン、聞いてよ。さっき保健所行って帰りに物産展行こうと思ったら、スマホ落としたのに気づいて保健所まで戻ったわ」


「フッ……なんだ、似た者親子か」


 奇妙なシンクロに歪んだ笑みを浮かべた私は、家から見える歯科医院のビルを見つめ、心の中でコウジを呪うのであった……。


財布を忘れたのはコウジのせいよ!(八つ当たり)


つづく


予告:次も長いです。(近況ノートに書く量ではない)

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