新創世記
砂糖鹿目
新創世記
「死ぬ前に神にでもなろう」
科学で大体のことが明らかになった人類は、宇宙が縮んでいる事実を知った。
そしてついに宇宙の縮小が、人類の生息地まで突入して来た。
人類は滅びる寸前だった。
「あと少しでできる。完成目前だ!」
私は死ぬ前に宇宙を作って、創造者になろうとしていた。
特に救われる希望もないのだ。
最後に小さなビッグバンを作ったって文句はないだろう。
、
、
今日の外も相変わらず廃棄ガスの混じった匂いを漂わせながら都会の風景を映している。
今日は休日だが、やることもないので散歩をしてコンビニでおにぎりを買った。
「あっ」
刺激欲しさにいつもとは別の道で家に帰っていると、偶然ベンチを発見したのでそこに座った。
、
、
今考えると思い深い出来事だった。
我々に真の正解などなく、ただ信じることができればそれが我々の正解なのだと証明された時、私はショックを受けて自殺を考えた。
だってそうだろう?元々我々のすることには正解や不正解などなく、頑固にも私達は殺し合い、悪意を持ち、悪さをした。(それでさえ間違っていると否定も肯定もできない)
私達が信じる物は何もない。
あまりに情けない。
私達は信じることでそれを実行して、現象を起こしている単なるキチガイでしかないのだ。
馬鹿げてるにも程がある。
だけどそんな不完全な私達が創造者になれるのも理論的な事実だ。
ある意味一種の自由意志の肯定も否定も証明され、私達が残り少ない時間でできること。
最後に残された新しい希望。
宇宙にとって生物は異常でも何でもない。
そもそも宇宙の存在意義を考えていた私達が異常以外の何者でもない。
宇宙はただあるだけで、それを正しいとか間違ってるとか決めてきたのは私達生物に変わりない。
だからこそ思う、生物には正解などないのだから間違ったこともない。
ただ素直に生きていけばいいのだと。
受け入れればいいのだと。
「よし!遂に完成した!これが新しい宇宙だ!」
多分私が作った宇宙にも多分地球のような惑星があって、人間がいると思う。
そこで貴方達は、間違ってるとか間違ってないだとか存在しない物を議論して後悔とか喜びとか得るんでしょう。
そしていつか私たちに追いつく。
だけど恐れないでほしい、貴方達がしていることは間違ってもいるし正しくもある。
宇宙は私達が何かしたところでなんとも思わない。
概念を気にしているのは所詮ちっぽけな生物しかいないのだから。
だから信じて欲しい。
信じる事が私達の真理なのだから。
私達にももし、創造者がいるとしたら。
多分私のように不完全な存在だったのだ。
、
、
おにぎりを食べながらボーッと空を眺めていた。
他の国での空の下では殺人だって破壊だって行われているはずだが、俺が眺めている空が青く透き通っているのは多分創造者がお人好しだったおかげだろう。
新創世記 砂糖鹿目 @satoukaname
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます