第60話 井戸の底へ
「わかった。井戸の中を調べてみよう。ただし! しっかり準備してからだ!」
俺はミレットとアン、特にアンに念を押した。
ミレットは護衛騎士のシンシアさんに、色々と冒険道具を準備してもらっている。
使えそうな物を出してもらった。
まず、初心者ダンジョンでも使った松明とランプが出て来た。
井戸の中は暗いから灯りが必要だ。
「私が火をつけるね!」
アンがすぐに火を起し始めた。
松明は二本あるので、二本とも火をつけてもらうことにした。
続いてミレットのマジックバッグからロープが出て来た。
井戸を降りるのに必要だ。
俺とミレットで井戸の周りにロープをしっかり巻き付ける。
手で引っ張ってみるが、しっかり井戸の外壁に食い込んでロープはズレない。
この固定したロープに下に垂らすロープを結びつければ、安全に井戸の下に降りられるだろう。
下に垂らすロープに結び目を作って、上り下りしやすいように細工する。
垂らすロープを固定ロープにくくりつけ、垂らすロープの先に火のついたランプをぶら下げ、ゆっくりと井戸の中に下ろしていく。
ランプが下についた。
およそ三メートル。
家なら二階の高さだ。
スキル【気配察知】は、井戸の中に沢山の気配を察知しているが、井戸の底についたランプの周囲に影はない。
俺はゆっくりと慎重にロープをつたう。
(この高さを、どうやって降りたのだろう? 中にアンのお父さんたちは、いないのか?)
ふと井戸の内側を見ると、手や足を引っかけられる出っ張りがある。
なるほど、この出っ張りを使って下に降りたのか。
納得して井戸の底に降りる。
井戸の底へ降り、すぐに盾と剣を構え、 前、右、左、後ろ、俺は四方を素早く確認する。
ランプの灯りの届く範囲に敵はいない。
ジッと耳を澄ますと、遠くで犬の吠える声が聞こえる。
(とりあえず大丈夫だな)
俺は落ち着いて辺りを観察する。
周りはゴツゴツとした岩で、井戸の底からトンネルが続いていた。
下に降りたからだろう、スキル【気配察知】が、よりクリアに気配をつかんだ。
かなり先に、沢山の気配がある。
(恐らく魔物……、十……、二十……、クソッ! 多いな!)
俺は上で待機しているミレットとアンに合図を送る。
まず、松明が二本放り投げられた。
俺は松明を一本拾い上げてトンネルの先へ放る。
トンネルの先が松明の灯りに照らされた。
トンネルは十メートルほど続いているようだ。
続いてアンとミレットがロープを伝って降りてきた。
二人とも良い動きだ。
これなら撤退する時も大丈夫だろう。
俺は口に指を立てて、『静かに』とジェスチャーで伝える。
ミレットとアンがうなずく。
俺が松明を持ち、俺たちはトンネルの出口へと静かに進んだ。
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