第38話 お昼休憩
俺たちは三階層を突破した。
レッサートレントとは、計五回戦闘を行ったが、ミレットの火属性魔法ファイヤーボールで問題なく安定した戦闘だった。
「そろそろお昼にしましょう」
三階層から四階層へ続く階段の途中で、ミレットがお昼休憩を提案した。
ミレットの提案を受け入れて、俺たちは階段に座ってお昼ご飯を食べることにした。
この階層と階層をつなぐ階段は魔物が発生しない。
いわば安全地帯なのだ。
俺、ミレット、アンの順で、仲良く並んで座る。
「今日はステーキサンドです! ユウトの分もありますよ」
「おお! ありがとう! 最高だよ!」
アンがマジックバッグから、籐で編んだランチボックスを取り出した。
ステーキサンドは、家の料理人に作らせたそうだ。
丸パンに、ぶ厚い肉が挟まれ、レタスとゆで卵のスライスも入ってる。
俺はミレットの好意に甘えることにして、遠慮なくステーキサンドにかぶりついた。
トーストしたパンの香ばしさ。
肉厚のステーキを噛むと肉汁が口に広がり、しょっぱいソースと混じり合って食が進む。
レタスとゆで卵がアクセントになって、ステーキを飽きさせない。
俺はバクバクとミレットは上品にステーキサンドを食べる。
だが、アンは食が進まないのか、ミレットにもらったステーキサンドを一口かじっただけだ。
お父さんのことが心配で食事どころじゃないのだろう。
これから四階層と五階層を突破しなくちゃならない。
しっかり食べて体力を回復して欲しいのだが……。
ミレットが心配そうにアンをのぞき込む。
俺も心配だが、どう声をかけたら良いのかわからない。
俺は仕方なしに実務的な話を始めた。
「三階層は、余裕があったね。レッサートレントは、火属性魔法が弱点だったからミレットのおかげで戦闘が楽だったよ」
俺が話をふると、ミレットがのってくれた。
「そうですね。でも、この先の四階層は、火属性魔法に強い魚型の魔物が出るそうなので、私はあまり活躍出来ないかもしれません……」
「はっ? 魚?」
俺はポカンとしてミレットを見た。
魚型の魔物?
マーマンのような半人半魚だろうか?
「レッサーツナという魔物で、魚が宙を泳いでいるそうですよ」
「それって……どういう状態なんだろう……」
「さあ……。ちょっと信じられないですよね。私も護衛のシンシアに話を聞いただけなので、わからないです」
本当に想像がつかない。
ミレットも見たことがないので、話していてもどうもよくわからない。
「とにかく火属性魔法が効かないなら、俺とアンが前に出て剣で戦う方が良いね」
「お願いします。役に立たないで申し訳ないです」
「いや、ミレットは三階層で頑張ったんだから、四階層は魔力を回復させよう。戦闘は俺とアンに任せて、休んでいて良いよ」
まだ、戦いは続くのだ。
三階層で消費したファイヤーボール五回分の魔力をなるたけ回復して欲しい。
「このペースで行けば、今日中にこの初心者ダンジョンを突破できる!」
俺は力強く言い切った。
アンがハッとして俺を見た。
俺はアンの目を見て続ける。
「ここまでの戦闘で討伐ポイントが貯まっただろう? 食事が終ったらレベルアップをしよう。そして、この先も走りながら戦闘して、討伐ポイントを稼いでレベルアップすれば、突破は出来る!」
ミレットは、俺の言葉を吟味していたが、何度かうなずく。
「そうですね。私も可能だと思います。遅い時間になると思いますが、今日中に初心者ダンジョンを突破。そして明日は、アンさんのお父さんを探しに中級ダンジョンですね」
俺はミレットの確信に満ちた言葉に満足する。
「アン。次の階層では働いてもらうよ?」
「任せておいて!」
アンがステーキサンドにかぶりついた。
アンは一つ目を平らげるとランチボックスに手を伸ばし、二つ目のステーキサンドを手にした。
アンが元気になった!
やれる! と感じたのだろう。
俺とミレットは、アンの様子を見て微笑みあった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます