第32話 ジャイルよ。ドンマイ! (四日目)

 ――翌日!


 ミレットは普通にやって来た。

 冒険者ギルドのロビーでミレットと昨日の話をする。


 ミレットは、お父さんと話をするためにお休みをしたそうだ。


「お父さんに怒られなかった? ほら、俺はスラムの住人だから、お父さんが嫌がるんじゃないかと思ってさ」


「最初は心配していました。ですが、わたくしがきちんとユウトのことを伝えたので大丈夫です」


「そう、良かった!」


「昨日、ユウトは、どうしていたのですか?」


 俺はジャイルともめごとがおきたとミレットに告げ、事情を説明した。


「まったく……ジャイルさんは……。は~」


 ミレットが眉根を寄せ大きくため息をついた。

 俺はふと気になってミレットとジャイルの関係を聞いてみた。


「ミレットとジャイルは知り合いだったの?」


「そうですね……。お互い顔は知っています。お話しをしたことはないです」


 俺はミレットの説明がイマイチ理解出来なかった。

 さらに突っ込んで質問してみる。


「それって、どういう関係?」


「お互いの親が、仕事でお付き合いがあるのです」


「ああ! なるほど、それで顔を合わせたことはあると?」


「ええ」


「あの……婚約者とか? ひょっとしてジャイルをボコボコにして不味かったかな?」


「ちっ……! 違いますよ! そもそもジャイルさんはタイプじゃありません!」


 ミレットはジャイルを秒殺した。

 どう見てもジャイルはミレットにご執心だった。


 ジャイルよ。

 泣くな。

 強く生きろ。

 ドンマイ。


 結局昨日は、ダンジョンに潜っていない。

 ドナさんとランチした後、冒険者ギルドの偉い人に事情聴取をされたり、タイソン教官と話をしたりで、午後が潰れてしまった。


「じゃあ、また、ダンジョンへ行こう!」


「行きましょう!」


 俺とミレットは、冒険者ギルドのロビーを抜け外へ出ようとした。


 だが、今日は人の動きが鈍く、ザワついている。

 背の低い俺たちは何が起きているのか見えなくて、人の流れに身を任せるしかない。


 人の切れ目から前が見えた。

 ミレットがつぶやく。


「あっ……」


 冒険者ギルドの出口近くに、俺たちと同世代の女の子がいる。

 赤茶色の革鎧にポニーテール。

 新人研修で見た顔だ。


 女の子は通り過ぎる冒険者に、一生懸命話しかけていた。


「お父さんを探して下さい! 昨日ダンジョンに入って戻ってきてないんです!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る