第24話 二日目の報酬
今日は帰りが遅くなってしまった。
俺たちは、二階層の入り口近辺でゴブリン狩りをしていた。
ゴブリンは人型の魔物で武器――ナイフを装備している。
そこで俺とミレットは、人型魔物との戦闘訓練のつもりで色々な戦い方を試した。
俺が剣で対応したり、わざとゴブリンに攻撃させて盾で防いだり。
ミレットが魔法『ファイヤーボール』を撃ったり、杖で肉弾戦をしてみたり。
バラエティに富んだ午後になった。
色々試してみたので、当然一回の戦いは長引く。
疲れもするし、戦闘後の反省会もしたので、戦闘後の休憩を長めに取った。
結果、午後の成果はゴブリンは四体撃破に留まった。
だが、討伐した魔物の数よりも、戦闘のバリエーションを増やす訓練になったのが大きい。
俺もミレットも実りがある時間を過ごし、冒険者として自信を感じたていた。
地上に出るともう日が暮れそうになっていた。
ダンジョンの入り口にミレットの護衛である女騎士シンシアさんが立っていた。
「お嬢様。急がないと夕食に間に合いません」
「シンシア。ごめんなさい。遅くなってしまったわ」
ダンジョンの入り口は、魔の森の中にあるので、馬車は乗り入れできない。
俺、ミレット、シンシアさんは、馬車が待つ冒険者ギルドまで走った。
「じゃあ、ユウト! また明日!」
「うん! また、明日ね!」
俺とミレットは、冒険者ギルドの前で別れ、ミレットと護衛のシンシアさんは馬車で帰っていった。
さて、俺は一人だが、今日の処理をしなくてはならない。
ミレットにはお昼ご飯をご馳走になったんだ。
これくらいはやらなきゃね。
冒険者ギルドは、ごった返していた。
ダンジョンから帰ってきた冒険者がホールに溢れていて、汗と血が入り交じった臭いがする。かなり臭いがキツい。
ミレットが先に帰って良かった。
こんな臭いを、良いところのお嬢様であるミレットには嗅がせられないな。
受付はドナさんの列に並んだ。
昨日から世話になっているから、今日も無事に帰ってきましたと報告しなくちゃ。
俺の順番が回ってきた。
受付のドナさんは、今日もきれいだ。
ムンムンと大人の女性の色気を感じる。
「あら! ユウト! お帰りなさい! ミレット様は?」
「ミレットは先に帰りました。護衛のシンシアさんと馬車に乗りましたよ」
「そっ! それなら安心ね。で、今日はどうだった?」
「この魔石を買い取りお願いします」
俺はホーンラビットの魔石八つとゴブリンの魔石四つをショルダーバッグから取り出し、受付カウンターにおいた。
「あら、多いわね……って? ゴブリンの魔石!?」
受付のドナさんが驚く。
ホーンラビットの魔石は透明だが、ゴブリンの魔石は薄らした緑色をしている。
俺はちょっと得意になって、ドナさんに向かって胸を反らした。
「俺もミレットもレベル2になりました! 午後から二階層へちょっと足を伸ばしてきたんですよ!」
「やるじゃない! おめでとう! ユウトとミレット様が新人最速ね!」
受付のドナさんが立ち上がり、ホールにいる冒険者たちへ大声を張り上げた。
「ねえ! 聞いて! 新人のユウトとミレット様がレベル2になって、二階層へ進んだわ! 今年の新人最速よ!」
ドナさんの声がホール中に響く。
すると先輩冒険者や冒険者ギルドのスタッフから拍手と声援が飛んできた。
「おめでとう! 新人!」
「おお! ヤルじゃねえか!」
「明日もがんばれよ!」
「死ぬなよ!」
俺は嬉しいやら照れくさいやらで、周りに何回も頭を下げた。
今日の報酬は、魔石一つ百ゴールド、合計十二個の魔石を売却したので千二百ゴールド。
一人当たり六百ゴールドになった。
定食一食が五百ゴールドだから、定食を食べたらなくなってしまうお金だけれど、報酬が増えているのがうれしい。
昨日は二人で五百ゴールドだった。
こうして報酬が増えると、手応えを感じるな。
俺はミレットの取り分を冒険者ギルドに預け、スラムにある家へ帰ろうとした。
冒険者ギルドを出ようとすると、嫌な感じがした。
嫌な感じがする方向へ視線を向けると、ジャイルがいた。
ジャイルは怒りの表情で、顔を真っ赤にして俺をにらみつけている。
(オイオイ! 嫉妬かよ!)
多分、俺とミレットが新人で一番なのが面白くないのだろう。
冒険者同士でイザコザを起こすのは不味い。
俺はジャイルともめるのを避けた。
ジャイルから視線を外し、何もなかったように冒険者ギルドの扉を開け、家へ向かった。
家に帰りステータスを見る。
◆―― ステータス ――◆
【名前】 ユウト
【レベル】2
【スキル】レベル1 剣術 盾術 気配察知
【討伐ポイント】4
◆―――――――――――◆
相棒のミレットもレベル2。
討伐ポイントは7ポイントのはずだ。
あまりミレットと討伐ポイントに差が付いて、レベル差が出るのは不味い。
とりあえず、討伐ポイントはキープして、レベルアップを狙おう。
俺は充実感の中で眠りについた。
今日よりも明日が良い日になると信じて。
◆―― 作者より ――◆
更新が遅くなって、ごめんなさい。
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