第20話 ユウト@レベル2
ダンジョンから地上へ出た。
太陽は真上にあるので、正午頃だ。
ダンジョンの外だからといって安全なわけではない。
ここは魔の森の中だ。
魔物が徘徊している。
スキル【気配察知】によれば、あたりに人や魔物はいない。
レベルアップをしてしまおう。
「ミレット。俺もレベルアップするよ。見張りをお願いして良いかな?」
「はい。了解です!」
ミレットは、手にした杖をくるくるっと回し、俺に背中を向けた。
「ステータス! オープン!」
ステータスボードを表示し操作する。
討伐ポイントを使ってレベルアップだ。
◆―― ステータス ――◆
【名前】 ユウト
【レベル】2 LEVEL UP↑
【スキル】レベル1 剣術 盾術 気配察知
【討伐ポイント】0
◆―――――――――――◆
レベルが2になったが、特に体や気持ちに変化はない。
俺は剣を抜いて振ってみる。
(あっ……少し軽い気がする)
ゲームでいうと『力』や『パワー』のパラメーターがアップしたのだろう。
他にもアップしているかもしれない。
何がアップしたかは、戦闘を通じてわかるだろう。
「ミレット! 終ったよ! 見張りをありがとう!」
「ユウト! おめでとう! これでユウトもレベル2ね! 二階層に行けるわ!」
「そうだね。一休みしたら、二階層に行ってみよう!」
「ちょうどお昼ね! お昼ご飯にしましょうよ!」
「えっ……お昼……ご飯……」
「そうよ?」
ミレットはニッコリと笑っている。
参ったな。
ミレットに悪意はないんだ。
俺は正直に答えた。
「ごめんね。俺はお昼はないんだ」
「お弁当を忘れたの?」
「違うよ。一日二食なんだ」
「えっ……?」
「スラムじゃ一日二食でもマシな方なんだ。一食だけだったこともあるし。母の仕事がなかった時は、二日間何も食べられなかったこともあるよ」
「あの……ごめんなさい……」
ミレットは恐縮している。
でも、わかっている。
ミレットは良家のお嬢様だからスラムの暮らしぶりなんてわからないんだ。
「気にしないで! 普通は一日三食だよ! だからミレットはお弁当を食べて!」
失敗したな。
明日からはパン一個買ってこよう。
「じゃあ、私のお弁当を分けてあげるわ。一緒に食べましょう!」
ミレットは、ニッコリ笑った。
これは断れないな。
俺が断るとミレットは気にしてしまうだろう。
「ありがとう! じゃあ、ご馳走になるよ!」
俺たちは、ダンジョンの入り口近くの草地に座り込んだ。
ミレットは腰にぶら下げたポーチからお弁当の入った籐のカゴを取り出した。
蓋を開けると、美味しそうなお肉や果物、丸パンが入っていた。
「うわっ! スゴい美味しそうだね!」
「ふふ。いただきましょう」
ミレットが分けてくれたお昼ご飯は、メチャクチャ美味しい。
お肉は塩とコショウで味付けされたぶ厚いステーキ肉で、一口サイズに切ってある。
噛むと肉汁がジワッと溢れる。
肉の旨味と塩コショウのピリッとした味付けが最高だ!
(肉なんて、スープに入った切れっ端の肉しか食べたことないからな……)
もちろんサオリママには感謝している。
だが、十三歳の食べ盛りにはタンパク質が必要だ。
(お金が入るようになったら、まず食生活から改善しよう。体は資本だからな!)
俺はミレットが手渡してくれた丸いパンを千切る。
柔らか~い。
これ白パンだな!
初めて食べた!
ちゃんと小麦の味がする!
「ミレット! 本当に美味しいよ! ありがとう!」
「ユウトが喜んでくれて嬉しいわ! 明日から二人分用意させるわ」
「えー! 本当に! 嬉しいな!」
俺はちょっと図々しいかなと思ったが、食欲には勝てなかった。
もう、これはミレットの心遣いに甘えさせてもらおう。
スキル【気配察知】が何かを感じた!
ダンジョンから何か来る!
「ミレット。ちょっと待ってね」
立ち上がって盾を持ち剣を抜く。
ダンジョンの入り口から、冒険者パーティーが現れた。
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