第11話 初戦闘(一階層ホーンラビット)

「よし! では、ユウトとミレット! 行け!」


「「はいっ!」」


 ダンジョンの通路の先にホーンラビットが見えた。

 タイソン教官の指示に、俺たちは元気よく返事をする。


「ミレット! 先行する!」


「お願いします!」


 俺はミレットにひと声かけ、ダンジョンの通路を走り出した。

 カツカツカツカツ! とブーツが軽快に石畳を叩く。

 裸足じゃないありがたさ。

 靴を履いていると、こうも動きやすいのかと実感する。

 同時に、冒険者ギルドの色っぽいお姉さんであるドナさんに心の中で感謝した。


 俺は左手に木製の盾、右手に鉄剣を持って全力で走る。


 というのも、ホーンラビットは一直線に突っ込んでくるのだが、突っ込む前の助走距離が長いと、それだけ突撃の威力が増してしまうのだ。


(まず! 距離を潰す!)


 先ほどのパーティーの反省会で、タイソン教官が指導していた内容だ。

 魔物に好きにさせず主導権をこちらが取る。


 俺はホーンラビットまで十メートルの距離まで近づいた。

 ホーンラビットがこちらに首だけ振り向く。


 ホーンラビットの鼻がひくりと動き、長い耳がピクッとなった。


 ホーンラビットが動き出す。

 タタッ! と軽い助走をして頭から突撃してきた。


 俺は左手の盾をしっかり持ち、盾を前に出し体全体で体当たりするようにホーンラビットと激突した。


「うお!」


 俺は後ろに吹っ飛ばされ尻餅をつく。

 すぐに立ち上がるとホーンラビットは仰向けになっていた。


 どうやら引き分けで、お互いに吹っ飛ばされたようだ。


 ホーンラビットはすぐに立ち上がり、こちらを警戒する。

 俺は腰をグッと落とし、左手の盾を構えた。


 ホーンラビットが、俺の左側に回り込む動きを見せる。

 俺は盾を構え牽制で剣を突き出す。


「それ! どうだ!」


 声を出しながら剣を突き出し、ホーンラビットの動きに合わせて時計周りに円を描くように動く。

 ほぼ百八十度回り込み、俺はミレットが見える位置を取れた。

 そしてホーンラビットがミレットに背を向ける位置に誘導できた。


「撃ちます!」


 ドンピシャのタイミングでミレットから声が掛かった。


 俺は右に飛んで、ミレットの射線から退避する。


「ファイヤーボール!」


 ミレットの杖の先からソフトボール大の火の玉が発射された。


 ゴウ!


 ファイヤーボールは、唸りを上げてホーンラビットに襲いかかった。


 音に気が付いたホーンラビットが振り向くが、もう、遅い。


 ミレットが放ったファイヤーボールが、ホーンラビットの頭部に直撃し、ホーンラビットは煙になって消えた。


「「やったー!」」


 初討伐だ!

 俺とミレットは飛び上がって喜んだ!


「なかなか良かったぞ! ユウトの回り込む動きは非常に良い。あの動きでホーンラビットは、ミレットの魔法攻撃が見えなくなっていた。この調子で頑張るように!」


 タイソン教官の講評も非常に良い。


 そしてこれで討伐ポイントが入ったはずだ……。

 スキルを獲得できるぞ!


「へっ! 外れ野郎がマグレで喜んでるんじゃねえよ!」


 だが、勝利に水を差された。

 水を差したのはジャイルだ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る