薫とヒロト

ヨカ

(多分お互い)未知との遭遇


 ゲームを切りのいいところまでやり尽くして、ふと窓を見たら夜になりかけていた。びっくりした。時間っていつの間にか溶けてんだよな。

 目を酷使した後のぼんやりとした頭で残り火みたいな夕暮れを眺めていたらアイスを食べたくなった。なのでコンビニまで行くことにした。ちなみに夕暮れとアイスに関係性はない。


 外へ出ると中々に暖かい空気が身を包む。ゴールデンウィークを過ぎると一気に暑くなるのなんなんだろうな。

 アイスを目指してうっきうきで足を進める。そして到着した近場のコンビニ。店の前で発見したのは、なんか見たことがある気がしないでもない集団。思いっきり中坊です、ってな感じの背格好してるんだから多分学校で見かけたんだろう。

 薄暗い中、コンビニなどの建物の明かりに照らされたそいつらは、どうやらひとりを取り囲んでいるらしかった。わしゃわしゃと動く様は、なんか、そういう生態の虫っぽい。

 俺はそれをぼーっと見ていた。正直邪魔。コンビニの前だぞ。っていうか放課後によくこんな集まってんな。仲良しか。

 するとパラパラと気づいたらしきそいつらは俺の方をみてソワソワし始める。ここで「何見てんだオラァ」とならないのはひとえにそいつらがチキンなのと俺の身長がでかいからだろう。あと三白眼。シンプルに怖いってよく言われる。

 そいつらは「おい、もう行こうぜ」なんて言ってわしゃわしゃと移動していった。俺そんなに怖い?やったね。


 勝ったな。楽勝だぜ、なんて思いながらそれを見送っているとき、ようやく気づいた。ひとり残ってるわ。

 そいつはやや俯いて立っていた。少し長めの前髪、成長途中の小さめな体。やけに雰囲気があるのはコンビニの白い明かりによるライトアップによるものだろう。生ぬるい風に髪の毛がさらさらと揺れていた。

 そいつがふと顔を上げた。目があった。俺は少し息を呑んだ。


 そいつはやたらと綺麗な顔をしていた。イケメンかと言われると首を捻る。あまり現代的な美しさではないと思う。鼻はそこまで高くないし、目は細めだ。だがそのくせハッとさせられる。多分総合的に見てバランスがいいとかそういうことなんだろうけど、一番は目だと思う。細いがしかし、印象的な目。切長で、真っ黒で、静謐な?なんかやけに位の高いものを見たような心地がする目。


 そんな奴を見た、総合的な俺の感想。

 こりぁあいじめられるぜ。だ。


 なんせ、こんな圧倒的なもの持っときながら気弱そうな雰囲気出してんだもん。それはね、もう格好の的ですよ。実際なんか囲まれてたし、俺を見ておどおどし出してるし。むしろ涙目じゃない?悲しいね。

 まぁ、とりあえず、俺はアイスが食いたい。ということでこの膠着した状況を打開すべく声を出した。


「お前いじめられてんの?」


 正直間違えたなとは思ってる。

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