口裂ケ、オンナ
@tsutanai_kouta
第1話
数年ぶりに帰省した。
未だに街灯が
歩道の右側は
寒さに首をすくめた時、歩道と
ようやく実家に到着。
家に入ると、あとはもう、手垢のついた懐かしい日常だ。妙にウキウキした母に迎えられ、居間で置物みたいになってる父に声を掛け、不用物の収納場所と化した自室に手荷物を投げ込むと居間に戻る。居間の
母が大きな声で「奈緒!ご飯!」と妹を呼ぶ。年の離れた妹がスマホ片手に
家族で鍋をつつきながら、母は俺に仕事のことや普段の食生活、結婚の予定などについて
質問が尽きたのか母は近々のローカルな話題を繰り出す。
「昔ボーリング場があった場所にイオンが出来た」
「少子化から小学校が統合する話がある」
「小学校の同級生だった谷川君の御家族は今年も献花しに戻った」
などなど、正直どうでもよい内容ばかりだ。しかし、何故か母親って俺が覚えてないような子供の頃のことを記憶している。
でも「谷川の家族が献花」て何だ?
俺はビールを口に運びながら
「谷川ってどんな奴だっけ?」
と聞いてみた。
そこから母は急に話題を変え─
「ねえ、あんたが地元に帰りたがらないのって、やっぱり“口裂け女”が怖いから?」
とニヤニヤしながら聞いてきた。唐突にイジってきたな…と俺が渋い顔してると、食事中もスマホから目を離さなかった妹まで顔を上げてこっちを見てきた。
俺は小さく溜め息をつくと、小学生の頃にクラスで「口裂け女」が流行したこと、俺が一時期、「口裂け女」の悪夢にうなされ、夜中に起きては泣いていたことを妹に
「口裂け女」の話題が終わると妹は、そそくさと部屋に引き上げ、母も後片付けを始めた。父は相変わらず置物みたいにテレビを眺めてる。…本当に置物かもしれん。
俺も「疲れた」と言い残し、自室に引っ込んだ。自室とは言え、使わなくなった家電や雑貨の置き場所になっており、昔と変わらないのはベッドの上くらいだ。俺はベッドに少しだけ横たわるつもりが、いつの間にか眠ってしまった。そして子供の頃以来の悪夢を見た。
真っ暗な空間に女が1人、たたずんでいる。肩まである髪は赤茶けた色味をしており、肌には血の気がなく、まるで蝋燭のようだった。眼球が
ああ、これだ。俺が子供の頃に何度もうなされた悪夢だ。だが、大人になった今、改めて見る悪夢に違和感を感じる。
何故、女はピクリとも動かないのか?
悪夢なら追いかけてきてもいいもんだが…。それに黒髪じゃなく茶髪なんだ?
そして着ているのがスエットって…。
次の瞬間、俺は飛び起きていた。額には脂汗が
俺が頭の中で復元した記憶は出来れば一生封印しておきたいものだった。
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