第37話 氷河の女神をわからせた!

 女王マリベルをわからせて得た情報によると、キルガメッス大陸の北に広がる永久凍土のどこかにある洞窟に氷河の女神が住んでおり、彼女からなら何か手がかりを得られるかもしれないという。


 そこで俺たちは、早速その氷河の女神に会うため永久凍土へと向かった。


 草木も生えていないつるぺたな大地を彷徨うこと半月あまり。俺たちはようやくそれっぽい洞窟を見つけた。


 洞窟の入り口は大地に穿たれた小さな亀裂のようになっていて、人一人がやっと通れるほどの幅しかない。


 シコルはその洞窟の入り口を見ただけで、すでに何かを連想したのかえらく興奮している様子だ。


「コドージ殿、ここはぜひ私に先頭を行かせていただきたい」


 どうしても先に行きたいと言って聞かないシコルが、洞窟の中へと無理やり入り込んでいった。


 入ってすぐに洞窟は塞がっていたのだが、目を血走らせたシコルは容赦なくそれを突き破っていく。


 そこからしばらく進むと、少し開けた空間に出た。


 そこには天蓋付きの大きなベッドが設えてあり、それを取り囲むようにファンシーな家具やら小物類が所狭しと置いてある。


 そしてそのベッドでは、一人の女の子が静かに寝息を立てていた。


 ――あっ!


 さらさらの長い銀髪が目を引くその女の子をよく見てみると、前世で俺の前に現れた学校帰りのあのメスガキ小学生じゃないか!


「おい! 起きろコラ!」


 俺はよだれを垂らして満足げに眠る女の子の布団を剥ぎ取り叩き起こした。


「う、うーん……、我の安眠を妨げるのは誰じゃあ……。あっ、お主はあの時警官から全弾食らったクソざこ!」


 ほう、目覚めて第一声からそうきたか。


 ていうか、やっぱりこいつはあの時のメスガキで、俺のこともしっかり覚えていたんだな。


「よくここまでたどり着いたの~♡ やはり我が見込んだ氷河期おじさんだけのことはあるではないか♡ 褒めて遣わすぞ♡」

「お前が氷河の女神なのか? そしてお前があの日、俺を煽り散らかして窮地に追い込み、この世界へと転生させたというのか?」


 俺は今すぐにでも《わからせ棒》を使ってわからせたい気持ちをぐっと堪えて、努めて冷静に女の子に尋ねた。


「いかにも、我は氷河の女神スカーラ♡ そして、お主をこの世界に転生させたのも我じゃ♡」


 スカーラはだぼっとしたバスローブのようなものを纏っているのだが、その胸元は大きくはだけていて、透き通るように白いつるっとした肌が覗いている。


「お前に聞きたいことがある。 なぜ俺をこの世界へ転生させたんだ?」

「なぜじゃと? そんなのはお主が氷河期世代のクソざこおじさんで、氷河期世代強制排除法の対象だったというだけのことじゃ♡ 日本政府は社会にとってお荷物でしかないお主らのような存在に見切りをつけ、強制的に異世界へ送る密約を我と交わしたんじゃからの♡」


 妖しげに光る赤い眼に最大級の侮蔑の色を湛えて煽るスカーラ。


 くそっ、やっぱりあのいかれた法律は本当だったのかよ……。


「まぁあのまま日本にいてもクソみたいな人生なのじゃからよいではないか♡ お主はクソざこじゃが、これまでの氷河期のおじさんよりは見込みがありそうじゃぞ♡ その調子でさくっと大魔王を倒してこい♡」


 スカーラから衝撃的な事実を告げられたものの、意外にも俺の心はとても落ち着いていた。


 確かにあのまま前世にいたとしても、親の年金支給日にAVを買うことしか楽しみのない、クソみたいな人生が続いていたことだろう。


 それに比べたら、今はリアルにメスガキをわからせ三昧できる夢のような日々だといえる。


 だがそれは別として、あの日あの時お前に煽られた借りはきっちりと返さなければだ!


 俺は《わからせ棒》を使った。


「えっ? なぜお主がそれを持っているのじゃ? それはあまりに恐ろしい物ゆえ、我が封印しておいたはずなのじゃが!? えぇい、やめろ! 女神である我にそれを使うなど……ちょ、やめっ、あぁ……おふぉああああああ!?」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛……い、痛い痛い痛いっ! やだっ、あ゛っ……お゛っ、あ゛っ……、あっ、いっ、はっ、あっ、あッ……♡ あんっ♡ あひっ♡ はぅ♡ はっ♡ ひッ♡」


 俺は《わからせ棒》を使った。


「お゛っ♡ あ゛っ♡ お゛っ♡ お゛っ♡ はひっ♡ あひゅ♡ ふひゅ♡ お゛んっ♡ あ゛っ♡ ひっ♡ いいっ♡ はひッ♡ お゛っ♡ もっと♡ ん゛っ♡ もっとなのじゃ♡ あ゛ッ♡ ふひっ♡ ん゛ふっ♡ はッ♡ あひっ♡ もっとお願いなのじゃああああああ♡」


 こうして俺は、スカーラを徹底的にわからせて前世での借りをきっちりと返したのだった。


「コドージ殿! 私も前世での借りを返したいのですが! あの日私はその女神によって……」


 聞けばシコルは、前世において学校帰りのJSの姿をしていたスカーラを言葉巧みに自宅に誘い込み、いたずらしようとしたところを警察に踏み込まれて、そのまま現場で強制排除されたのだという。


 いや、あのシコルさん。それって完全にお前の行動がアウトなんだけど……。


 シコルのしたことに微塵も同情の余地はないのだが、恐らくその事案もスカーラによって巧妙に仕組まれた罠だったのだろう。


 そう思うと、シコルには十分に借りを返すだけの大義名分があるといえる。


「そういうことなら、お前もお前のやり方できっちりと借りを返してやればいい」

「ありがとうございます! この世界に転生させられてから40数年……。溜まりに溜まったものを全てこの女神の中にぶちまけてやりますよ!」


 シコルは《ただの棒》を使った。


「ちょ、無礼者! お主は我に仕える神官であろう? こんなことをしてタダで済むと思って……、ふぉおあ!? あああああ……」


 シコルは《ただの棒》を使った。


「あっ、はっ、あっ、はんッ、あっ、はひっ……って、我がそんなへなちょこ棒でわからせられるとでも思ったか♡ きひひひひ♡」


 さすがは女神だけあって、スカーラは俺にわからせられた後にも関わらず、まだまだシコルを煽り返すだけの余裕があるようだ。


 やはりシコルの《ただの棒》では分が悪いか。そう思って、俺が助太刀しようとしたところ……。


「シコルよ、ワシもその女神には前世での恨みがあるので加勢するぞい!」


 ヤライソも、引きこもったまま風呂に数年間入っていなくて臭いというだけで、スカーラによってこっちの世界へ転生させられたようだ。


 何だろう、こいつの転生させられた理由にもまるで同情する気にはなれないんだが……。


 パラリララリラ♪


 ヤライソは『キメセーク』の魔法を唱えた。


「きひひ♡ おいジジイ、我にそんな魔法が通用するはずが……おんっ♡ あひゅ♡ はひっ♡ な、何これ? あっ♡ はっ♡ クソざこのただの棒のはずなのにすっごくいいのじゃ♡ もっと♡ はひっ♡ お゛っ♡ ん゛おっ♡ もっといっぱいお願いなのじゃあああ♡」


 ヤライソの魔法によってすっかりキマッてしまったスカーラは、シコルの《ただの棒》によって激しくわからせられたようだ。


「あたしも前世で、そのメスガキに商売を邪魔された挙げ句こっちへ転生させられたの。その借りはきっちり返させてもらうわよ!」


 トヨーコは《拳》×2を使った。しかもその《拳》には、メリケンサックのついたごついグローブまで装着してある念の入れようだ。


「ちょ、何それ? 無理無理無理! そんなの壊れてしまうのじゃあああ! いやああああああああ……@Σ∀√&#%∬◎※!? お゛お゛お゛……、あ゛ひゅ♡ ん゛ふっ♡ お゛ん゛っ♡ いい♡ お゛ふっ♡ すっごくいい♡ ん゛ひゅ♡ もっと♡ あ゛ひっ♡ もっと壊して欲しいのじゃあああああ♡」


 相変わらずトヨーコの《拳》の破壊力は凄まじいものがある。


 これらの光景を見て俺も《わからせ棒》で再度参戦して、それぞれが前世での借りを倍返しにする勢いで、氷河の女神を徹底的にわからせたのだった。


 そして俺たちよってめちゃくちゃにされたスカーラは、昇天する前に《氷河のしずく》を俺たちに手渡した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る