第23話 大金への欲望
アルベルト・フラーキは馬車内で対座している自称新種エルフの、やたら目を引く胸の膨らみや露出した形の良い足を観察していた。
彼自身、雇い主であるドーマー辺境伯が保有しているエルフ奴隷を見た事があった。
それは妖精種特有のとても美しい顔立ちだったが、その体付きはガリガリに痩せていて胸なんか無いに等しかった。
その体付は魔力を究極まで高めた結果だと言われ、高い魔力量はその黄色い瞳に現れていた。
そして以前、領軍の兵士から聞いた話を思い出していた。
それは魔法を得意とする連中は、自身の魔力量の限度を知らしめてしまう瞳の色を他人に見せるのを嫌い、偽色眼というマジック・アイテムで色を偽るという事だ。
それが分かっていれば、目の前のエルフは進化前の体形をしている旧種または劣等種という事になる。
そして目立つ赤い瞳は偽物だ。
だがそれは貴族達の欲求には、これ以上ないという程合致するのだ。
そしてドルロバという男が持っていた手配書に記載のある外見的特徴と、目の前のエルフは一致していた。
その討伐報酬は百万ルシアだが、目の前の雌は亜人オークションに出品すれば数百いや1千万ルシアも望める可能性があった。
だが、残念ながらアルベルトには亜人オークションへ出品するコネが無かったので、少し前にこの町に来たブレトンという男と交渉して奴隷商に売る事になるだろう。
仲介手数料をかなりぼられるだろうが、百万ルシアを下回る事は無いだろう。
アルベルトは、あまりの幸運に心臓が早鐘を打っていた。
彼には選択肢が3つあった。
1つ目は、奴隷商に売って代金を貰う。
2つ目は、殺して討伐部位を冒険者ギルドに持っていき百万ルシアを手に入れる。
そして3つ目は彼の主人であるドーマー辺境伯への貢物にするという案だ。
1つ目は裏切られる危険もあるが、上手く行けば最も儲かる案だ。
2つ目は1回限りで恐らく失職するだろう。
そして3つ目はあまり良い目は見られないだろう。
良し、決めた。案1で行こう。
雌エルフを辺境伯館1階にある客間に案内すると、準備をするからと言って席を外し早速紫煙草の香炉を用意した。
紫煙草は人間種には多幸感や幻覚を見せる麻薬の効果があるのだが、不思議な事に亜人にはそれが催眠の効果になって現れるのだ。
香炉からの煙が部屋の中に充満し、暫く経ってから部屋に入って行くとソファに倒れ込むようにして微睡むエルフがいた。
雌エルフが履いている変わった形のズボンに付いている大きなポケットに手を突っ込むと、中にある物をテーブルの上に出していった。
並べられたのはナイフにスリングショット、何かの木の実と木の枝と根の切れ端それと手袋だった。
この中で金目の物は治癒液の入った木の根だけだ。
使っている場面を見ていなければガラクタだと思っただろうが、魔物に襲われた獣人奴隷の怪我が一瞬で治っていた事から、最低でも中級ポーションの効果はあるだろう。
娼館に併設されている薬屋の傷薬でも3百ルシアもするのだ。
この怪我が全快する治療薬なら5万ルシアでも売れるはずだ。
武器となるナイフやスリングショットは取り上げるとして、木の枝はゴミ箱に捨てた。
そして見た事も無い木の実の匂いを嗅いでみると、とても芳醇な香りがした。
試しに一口齧ってみると、口の中でうま味が広がりとても美味だった。
人間は魔素の補給を食べ物から行っており、魔素を多く含んだ食べ物程より一層美味しく感じるのだ。
その点で言うとこの木の実は、物凄く旨い事からかなりの魔素を含んでいる事が窺えた。
これなら売れそうだと、木の実も没収することにした。
そしてお楽しみとして残しておいた雌エルフの検証を行う事にした。
アルベルトがドーマー辺境伯に命じられてこの町の警備責任者になってから、時折店の営業時間外にその店の女奴隷を抱く機会等幾らでもあったので、女を抱くことに大して興奮しなくなっていた。
だが、目の前の女を見ていると自分が性的に興奮しているのが分かった。
手を出したら商品価値が落ちてしまうので何とか踏ん張っているのだが、それでもどうしても気になってしまうのだ。
そこで、ちょっとした自分に対する言い訳を思いついてしまった。
それはこのエルフの肉感が本物かどうかが、オークションにおける重要なセールスポイントになるという点だ。
アルベルトは自分にそう納得させると、目の前にある2つの膨らみに手を伸ばした。
手には柔らかい感触が伝わり、指の間から脂肪分が盛り上がっていた。
それは本物の肉の感触であり、偽物ではなかった。
次はむき出しの太ももに触るとその感触はとても滑らかで、肌のきめ細かさが指先に伝わってきた。
エルフの感触を楽しんだフラーキは、自分が性的興奮で股間が硬くなっているのを感じていた。
それでも大金を手に入れるためには手を出してはいけないと、何とか自分に言い聞かせた。
それから鍵付きの引き出しの中から隷属の首輪を取り出すと、エルフの首に取り付けた。
これでこのエルフは思いのままだ。
作業が済むと部下のタツィオを呼んだ。
「へい、何でごぜいやしょう?」
アルベルトはこの猫背のブ男が嫌いだった。
この男には噛んで含めないと、命令通りに動かないからだ。
だから命令をする時は、一々行動を指図してやらないと駄目なのだ。
「いいか、この雌を地下の牢屋に入れて置け。この雌はドーマー辺境伯様への大切な贈り物だ。決して手をだすなよ」
「へい、わかりやした」
+++++
タツィオは産まれてこの方、女にモテた事が無かった。
そして運ぶように命じられた女は、今まで見た事も無い程美しかった。
その女の体を掴み肩に担ぐと、そのすべすべした太ももの感触を楽しんでいた。
地下の牢屋に向けて歩いていると反動で雌の上半身が背中に当たり、2つの柔らかい感触も感じる事ができた。
ついでとばかりに太ももを押さえている手を肩の方に移動させ、雌の尻の感触も楽しんでいた。
タツィオは1階から地下の牢屋までに至福の時間を楽しんでいたが、至福の時間は直ぐに終わりを迎え、地下の牢屋に到着していた。
ちょっと残念に思いながらも牢屋の中に雌を入れると、そのまま床に横たえた。
今までアルベルトの命令に逆らったことは無かったが、目の前に横たわる雌を見ているとついムラムラする気持ちを抑えきれなかった。
ここには俺とこの雌しかいないし、その雌には抵抗できないように隷属の首輪を付けられているのだ。
タツィオは目の前に置かれた極上の据え膳を前に、ゴクリと生唾を飲み込んだ。
目の前にあるご馳走は、理性を吹き飛ばすには十分な破壊力があったのだ。
そして、初めて言いつけを破る事にした。
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