第23話 雪の城

「主であるエデル・ワイスは、雪山の奥に居城を構え、魔法の住む世界の番をしている。向かう前に、充分な準備をすべきだ」


 銀狼のアドバイスで、オレたちはショップを回った。

 

 装備できるだけの装備品を、とにかく買い漁る。


 なるべく強度の高いヨロイを、身につけた。

 たしかに軽い。銀狼の言葉は、本当だったな。


 壁役は、オレが担当することに。

 オレだって、ジャストガードはできるからな。


 できるだけ、大きな盾を手に入れた。


 また、オレはとんでもない武器を目にする。


「おお、銃じゃないか」


 片手持ちの銃【ソードオフ・ショットガン】を、ゲットした。

 ドワーフの世界でも、こういった武器を開発できるんだな。

 さすが、ゲームの世界である。


「ベップおじさん、その武器って何?」


「魔法を撃ち出す武器だ。速度も上がって、威力も増すんだよ」


 今までお世話になった杖に、おさらばした。

 攻撃以外の魔法が必要になったら、【世界樹の枝】を代用する。

 序盤で手に入ったのだが、これだけはもう最終装備クラスなんだよな。 

 

 片手にショットガンを持って、もう片方にある盾で敵の攻撃を受けるスタイルでいくか。

 この強度なら、打撃もできる。魔法も、高威力で飛ばせるからな。

 

 シールドはウエスタンハットにもなるため、場所も取らない。


「ベップおじさんの装備は、それでいいとして、わたしはどうしようかな?」


 ミラベルは、魔法攻撃力上昇の効果を持つ角笛は、そのまま持つことにしたようだ。ハートンファーだけを、【バトルハンマー・レベル一五】と交換する。やはり、気になっていたか。


「この装備どうしよう? 売っちゃうにしてもさ、ハートンファーはまだ使いそうなんだよね」


 ミラベルは、ものを捨てられない性格らしい。

 今までヒロインからもらってきたアイテムも、消耗品以外はすべて取ってある。


「案ずるな、ミラベル殿。取っておくといい。わがドワーフの秘術に【アイテム合成】があるぞ。エデルを助けた際に、学ぶといい」


 アイテムの合成か。いいな。


 キョーコを助けたときに手に入れたのが【スキル合成】だった。

 こちらはアイテム・装備品の合成が可能になる、と。


 どちらを順番に攻略しても、ちゃんと強くなれるんだな。


 ミラベルの身体装備は、毛皮のヨロイにした。

 ちょっとやってみたいことが、あったので。


「【白虎のヨロイ】だってよ」


「えっと、[極寒の地で暴れていた魔獣【白虎】を倒した際の、毛皮]だって」


 白いアーマーは、寒さを防ぐだけではない。

 物理攻撃さえも、モフモフで受け流す。 


 それにしても、ゴツい。

 ドワーフが装備するだけ、あるなぁ。

 だがご安心を。 

 見た目の無骨さは、【イリュージョン】でなんとかなる。

 

「アイテムに、魔法を付与することも可能だぞ」


「マジか! やってみっか」


 魔法を弾く機能を、シールドに持たせた。


 ソードオフにも、硬度を上げる効果を。


 あと、防寒用の外套なども手に入れた。

 オレは、着る毛布みたいな素材でいいや。


 ミラベルに装備させるため、ネコミミフード付きの防寒ポンチョをチョイスしてみる。ヒザまで隠すタイプだ。


 ここで、【イリュージョン】をかけるのよ。

 

 ポンチョを着たキグルミ姿のミラベルが、できあがる。


 

「ベップおじさん、どうかな?」


 オレの前で、ミラベルがくるりんと回った。

 

「うお、激かわ!」


 そのかわいさ、異次元クラスである。 


 ちなみにハンマーは、おでんの形をしたピコピコハンマーに。

 ミラベルのバトルハンマーは、【ハートビート】を無限で撃てるようにした。ヨロイの方には、魔法を跳ね返す効果を付与してみる。

 つまり、おでんを無理やり食わされるお笑い芸人の「あっつい! あっつい!」を再現できるのだ。


「準備はできたな。では、まいろう」



 シバレリアの街を離れて、雪の深い山へと入っていく。


「ふたりとも、私に乗りなさい」


 銀狼がそう言うので、オレたちはありがたく乗せてもらう。


 人間二人を乗せているのに、銀狼はまったく速度が落ちない。

 オレたちも振り落とされないばかりか、快適な旅になった。


「犬ぞりを使っても、城へは辿り着ける。しかし、数日はかかるだろうな」


 わずか数分で、雪の城に到着する。


 かつてドワーフの古代文明があった土地らしく、どことなくメカメカしい。

 スチームパンクっぽさが、にじみ出ていた。

 さしずめ、鉄と氷でできた要塞である。


 なにが出てくるか、わからん。


「気をつけるのだ。古代文明の兵器が生きているかもしれぬ」


 入口に入ると、さっそくゴーレムのお出ましだ。


 ゴーレムと言うか、ロボットだな。こいつは。


 ロボットが、腕を飛ばしてきた。


「この新しいバトルハンマーで!」


 ミラベルが、新生のハンマーでゴーレムの腕を殴り飛ばした。

 腕を打ち返されて、ゴーレムの巨体が壁に激突する。


 一体は無力化できたが、まだまだ敵は多い。 


 ゴーレムが、攻撃パターンを変えた。指からのミサイルに、切り替える。


「これは、打ち返しきれないよ!」


 さすがのミラベルも、よけるしかない。


 だが、ノーダメで済んでいる。

 白虎の革ヨロイのおかげか。これは、掘り出し物だったな。


とはいえ、一気に叩かないと危険だ。

 

 オレの出番か? 


「喰らえっての! 【サンダートラップ】ッ!」


 雷を地面に浴びせて、すべてのゴーレムの足を止める。


「今だ、ミラベル!」


 動きが止まったゴーレムを、ミラベルが殴りまくる。


 すべてのゴーレムが、バラバラになった。


「ナイスだ、ミラベル!」


「へへーん……うわ!」



 緑色の剣閃が、ミラベルに襲いかかる。


 ミラベルはとっさに殺気を読んで、すばやく身をかわした。

 


 ハルバートを持った少女が、オレたちの前に現れる。


 顔には、鉄仮面を被っていた。


 あれが、雪の姫騎士エデルか。

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