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人は、時には死んでからやっと気付いたことがある。
例えば、自分の本心。
例えば、自分の悔い。
例えば、自分の才能……
「天なる司る輝よ、きみたちのもとへ我が精神を捧げ、どうかこの祈りに燃える炎の恩恵を――ファイアー!」長々と祝詞の呪文に相応しくない効果の魔法は、俺の手から小さくポッっと、ゆーっくりと出ていた。
もちろん、微風でも吹けば簡単に消えそうな火の玉だった。実際、今風が吹いて、火の玉はもう空気の中に消えていた。
俺はその火の玉が消えると見つめている間に、消えそうな声が木霊していた。
「……バルードさんは、魔法の才能もないんですね。」
“も”というのは、剣術、体術、そして、今の魔法……自分の才能を死霊術師である彼女に見せたのだ。
俺は冒険したかった。けど、冒険する才能がない。それがわかったから、今までの人生は農夫をし続けてきたわけだが。
「そのようですね。それで?全部見終わったから、君はまだ、冒険できるって言いたいんですか?」
俺の質問に彼女はすぐに返事した。
「ええ、できますよ。もし君の『未練』はそうであるならば、色んな解決方法があります。冒険の仕方は色んな方法がありますから……」
俺は、少し彼女の言い方に気に食わなかった。だが、指摘しないようにした。それに、彼女の話にはまだ続きがある。
「勇者の話、バルードさんは聞いたことがあるでしょう?」
「ありきたりのお伽話でしょう?勇者が魔王を倒したとか……壮絶な武勇伝だとか……」
「しかし、どれの逸話も一つの話を避けています。それも勇者の才能。勇者も戦う才能がありませんよ。」
この話を聞いて、俺は思わずしかめ面をしていた。
「子どものために作る話でもあるんですからね。当然でしょう。」
「そう。バルードさんはわかっているんですね。『努力』のこと。」
俺はもうあまり話したくなかった。何となく、深く話さない方がいいと判断した。あの虚ろな目に何を話しても、何故か見透かされるような気がする。
そのため、俺は話題をそらした。
「じゃあ、どう冒険するんですか?」
「……そうですね。では、まず――」
これからは、俺と死霊術師である彼女との冒険の始まりだった。
冒険、そう。俺は冒険したかった。これは、間違いない……
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