4

 人は、時には死んでからやっと気付いたことがある。


 例えば、自分の本心。


 例えば、自分の悔い。


 例えば、自分の才能……


「天なる司る輝よ、きみたちのもとへ我が精神を捧げ、どうかこの祈りに燃える炎の恩恵を――ファイアー!」長々と祝詞の呪文に相応しくない効果の魔法は、俺の手から小さくポッっと、ゆーっくりと出ていた。


 もちろん、微風でも吹けば簡単に消えそうな火の玉だった。実際、今風が吹いて、火の玉はもう空気の中に消えていた。


 俺はその火の玉が消えると見つめている間に、消えそうな声が木霊していた。


 「……バルードさんは、魔法の才能もないんですね。」


 “も”というのは、剣術、体術、そして、今の魔法……自分の才能を死霊術師である彼女に見せたのだ。


 俺は冒険したかった。けど、冒険する才能がない。それがわかったから、今までの人生は農夫をし続けてきたわけだが。


 「そのようですね。それで?全部見終わったから、君はまだ、冒険できるって言いたいんですか?」


 俺の質問に彼女はすぐに返事した。


「ええ、できますよ。もし君の『未練』はそうであるならば、色んな解決方法があります。冒険の仕方は色んな方法がありますから……」


 俺は、少し彼女の言い方に気に食わなかった。だが、指摘しないようにした。それに、彼女の話にはまだ続きがある。


 「勇者の話、バルードさんは聞いたことがあるでしょう?」


 「ありきたりのお伽話でしょう?勇者が魔王を倒したとか……壮絶な武勇伝だとか……」


 「しかし、どれの逸話も一つの話を避けています。それも勇者の才能。勇者も戦う才能がありませんよ。」


 この話を聞いて、俺は思わずしかめ面をしていた。


 「子どものために作る話でもあるんですからね。当然でしょう。」


 「そう。バルードさんはわかっているんですね。『努力』のこと。」


 俺はもうあまり話したくなかった。何となく、深く話さない方がいいと判断した。あの虚ろな目に何を話しても、何故か見透かされるような気がする。


 そのため、俺は話題をそらした。


「じゃあ、どう冒険するんですか?」


「……そうですね。では、まず――」


 これからは、俺と死霊術師である彼女との冒険の始まりだった。


 冒険、そう。俺は冒険したかった。これは、間違いない……

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