本編だよー
転生前だよー
快晴
11月、秋晴れの天気に恵まれた日。
僕はストレスが原因で、人知れず死んでしまった。そして目が覚めたら、チートスキルを持ったなろう系の主人公に転生していた。
───そんな展開があったらいいなぁ…と淡い期待を抱きながら、今日も目を覚ます。
……見知った天井だ。残念!無念!また来年!
──もいちどチャンスを得るために寝転がった僕は、今日が
「ん〜…学校は〜」
月曜が憂鬱なのは日本人あるあるだ、もちろん僕も例外じゃない。そのまま目を瞑る……
「くっそ…眩しすぎぃ…」
───どうやらお天道様はそれを許してはくれないらしい。快晴、雲に邪魔されることの無いその光は、僕の顔を悠々と照らしている。
「約束は守れってこと…?な〜んか忘れてる気がするけど…まぁいいか」
もう完全に目が覚めてしまった。とりあえず学校に行く準備をしなきゃ──
ベットのすぐ横、勉強机の上には母さんが用意してくれていたらしい、好物のポーク卵おにぎりがあった。『約束』を守るためそれを頬張りながら、椅子にかけてある制服を着る。
「こればっかりはお天道様に感謝だなぁ…危うくあの子に顔向け出来なくなるとこだった。」
そんな事をひとりごちる。
あの子が残した約束を、
兎にも角にも学校へ行くため、椅子の上にあるそれを足に付ける。
───正確には、僕の足の残った部分、だろうか。生まれてからこの足とつきあっているから、義足の装着はもう慣れたもんだ。
けど…、
「ドラ○も〜ん!転○林檎出してよぉ〜!」
…やっぱりほかのひとと違うってのは辛い。
制服を履きながら、下手なの○太くんの真似をしてみたはいいけど、虚しくなるだけだった。
「毎朝やってても声真似だけは上手くなれないなぁ〜」
一瞬、このままベットにダイブすることも頭によぎったけれど、約束を守ると決めたのだ。かぶりを振って邪な考えを振り払う。そしてスマホで時間を確認する。
12:47
「え?」
そんな間抜けな声を漏らしながら、さっきの『忘れていたこと』に気づく。
────僕の部屋は朝、日が当たらないのだ。いつもなら起きた時にまっさきに電気をつけている。
「はぁ…こころおれそーだよほんとーに」
棒読みでそんなことを独りごちる。邪な考えは頭中を駆け巡っていた───
「また着替えるのめんどい!行くぞ!」
…ほとんどやけっぱちだ。でも頬を両手で叩くと邪な考えは、不思議なことにきれいさっぱりと無くなっていた。
準備は終えた。あとは学校へ行くだけ。
「行ってきます!」
靴を履き、誰も居ない家に向かって、半ば叫ぶようにそう言って外に出る。
11月、秋晴れの天気に恵まれた日。
どこにでもいる、ありふれた、遅刻する高校生・
快晴、澄み渡る青空の下をお天道様に見守られながら駆ける。
────行方知れずの幼なじみとの約束を、
守るために。
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