KAC2024 第5回
シノミヤ🩲マナ
第1話で完結
むかしむかし。
ここではないどこかに、ふたつのお国がありました。
ふたつのお国は、いつもケンカばかりしていました。
ですが、森のお国に住むテンちゃんと、谷のお国に
いつもふたりは、森のお国と谷のお国のまんなかにある
マオくんは
「テンちゃんのお
テンちゃんも言いました。
「マオくんのお
マオくんの
テンちゃんの頭にお角はないけれど、背中にお羽根がありました。
マオくんもテンちゃんも自分にはない、
その日、テンちゃんはマオくんに言います。
「マオくんマオくん! マオくんにだけ、あたしのヒミツを
マオくんは、わくわく
「ヒミツ? なになに?」
テンちゃんが
「じつはね……あたし、もうすぐお
マオくんはおどろきました。
「お姫さまになるの!? それはすごいね!」
テンちゃんはニッコリ
「えへへ。マオくんだからとくべつに教えたんだよ? だから、だれにもはなさないでね?」
マオくんは
「うん! ぼく、だれにもはなさないよ!」
そうして
谷のお国に帰ったマオくんは、うれしくてしかたありません。
だから、とうとうマオくんは言ってしまいました。
「ねえねえ! もうすぐテンちゃんがお姫さまになるんだよ!」
テンちゃんとの
それを聞いた谷のお国の
森のお国には
だれがお姫さまになるかは、とてもとても
テンちゃんがお姫さまになる。
その
そしてすぐ、
話を知ったテンちゃんは、かなしくなりました。
「はなさないでって言ったのに」
しくしく
「テンちゃん、泣かないで」
「
「谷のお国は
「あの頭にはえた、お角を
「とってもこわい、お角だろう?」
大人たちの言っていることがテンちゃにはわかりません。
テンちゃんはマオくんに
じつは
マオくんも原っぱに向っていました。
谷のお国に住む大人たちがマオくんに言ったのです。
『マオくん、よく教えてくれたね』
『マオくんが教えてくれなかったら、また森のお国のみんなにだまされるところだった』
『森のお国はズルいやつばかりだ』
『あの背中にはえたお羽根を思いだしてごらん』
『きみがわるくなるほど白いお羽根だろう?』
マオくんには大人たちが言っていることがわかりません。
それでもマオくんは、自分がわるいことをしたと思いました。
だからマオくんは、テンちゃんにごめんなさいを言いたくて原っぱまで走ったのです。
マオくんが原っぱにつくと、ちょうどテンちゃんもきたところでした。
マオくんは頭をさげました。
「テンちゃん、ごめんなさい! テンちゃんがお姫さまになるのがうれしくって、やくそくしたのに言っちゃったんだ!」
テンちゃんは、ほっぺたをふくらませます。
「だれにもはなさないでって言ったのに……」
マオくんはなんどもなんども頭をさげました。
「こめん! テンちゃん、ほんとうにごめんなさい!」
いっしょうけんめいなマオくんを見て、テンちゃんのかなしい気持ちはどこかへ
「えへへ。そんなにたくさんペコペコして、マオくんおもしろーい!」
マオくんが、おそるおそる聞きます。
「もう……おこってない?」
テンちゃんがうなずきます。
「うん。でも、もうやくそくをやぶったらダメだよ?」
マオくんは、バァッと笑顔になりました。
「テンちゃんありがとう! ぼく、もうやくそくはやぶらないよ!」
マオくんとテンちゃんは、なかなおりのあくしゅをしました。
そのときです。
谷のお国と森のお国に住む大人たちが原っぱにやってきました。
谷のお国に住む大人たちは言います。
「マオくん! その
まけじと森のお国に住む大人たちも言います。
「テンちゃん! その
それからも、それぞれのお国の大人たちが、いろいろなことを言いました。
やがて、大人たちは剣や槍を手にします。
すぐにケンカがはしまりそうです。
テンちゃんがさけびました。
「なんで、みんなはケンカばっかりするの!」
マオくんもさけびました。
「ぼくとテンちゃんはケンカしたけど、すぐに仲直りできたよ!」
ふたりの子供に「なんで」と聞かれた大人たちは
大人たちにも、なんでケンカしているのかわからなくなっていたからです。
大人たちのケンカは、大人たちが子供のころからありました。
だから大人たちにとっては、ケンカすることがあたりまえになっていたのです。
大人たちも、ほんとうは相手を
ただ大人たちは、ごめんなさい、のやりかたを
「なかなおりするには!」
「こーするんだよ?」
マオくんとテンちゃんがあくしゅをするのを見て、大人たちもふたりのマネをしました。
かわりに、相手のお国に住む大人たちの手をとったのです。
それから谷のお国と森のお国は仲良しになりました。
やがて原っぱには、お国ができました。
王さまはマオくんで、お妃さまはテンちゃんです。
原っぱのお国でマオくんとテンちゃんは、いつまでもいつまでも心の手をはなさないで仲良く
〜おしまい〜
KAC2024 第5回 シノミヤ🩲マナ @sinomaya
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