ここが禁足地である理由

黒音こなみ

プロローグ

 どのくらい、歩いただろうか。


 きっと、おれはまだ酔っている。それも、相当に悪い酔い方をしたに違いない。

 祭りの夜に、仲間たちと羽目を外して飲みすぎた。


 いや、酔っただけなら、まだよかった。

 その陽気のままに、「あの森で度胸だめしをしよう」などと、企てたのがいけなかった。


 ……言い出しっぺは誰だったか?

 もう、はぐれてからだいぶ経つ。

 酔いがさめて、さきに帰ったのかもしれない。


 さて……おれの酔いは、いつさめる?

 この、たいして広くもないはずの竹藪の出口を、いつになったら見つけられる?


 ……足がくたびれた。

 目の前に、少し開けたところがある。

 月明かりが差し込んで、ほかよりもあかるい。


 もう、さっきから何度となく通った場所だ。

 諦めて、そこに腰をおろした。


 夜風が吹いて、竹が揺れる。

 ざわざわと、笹の音がする。

 それ以外は――


 なあ……この酔いは、いったい、いつ醒める?



 本編へつづく

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