孤高の魔族の奔走

ヨイクロ

第1話 きっかけ

 その魔族は小さい頃から教えられてきた。「人類は愚かで欲深く、他者を平気で踏みにじるような奴らだ。見つけ次第殺せ」と。


 でも眼の前に広がる光景は違った。魔物に殺されかけている人間たちは助け合い、今も必死に生にしがみついていた。同族どうしだからという可能性も捨てきれないが。まるで魔族のようだった。


 少年は気づいたときには人間を庇っていた。”人間が赤色の血をながしていた”ことも助けてしまった要因の一つだったのかもしれない。


「〈強弱調整:速〉」


 人間たちを襲っていた狼のような魔物を素早く両断し、素早くその場を去った。魔族である彼は人類からすると敵以外の何者でもないので見つかると厄介だからだ。


「今の…魔族か?」


 殺されかけていたうちの一人が呟いた。





 その後、近くの街で魔族が出たと話題になったのは言うまでもない。


 一方、人間たちを助けた魔族、ブラルは、人類に興味を持ち、上司からスパイという大義名分をもらい、人間社会に溶け込んでいった。


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