テーマとモチーフ
テーマとモチーフ。
さて、何でしょうねこれは。
テーマはまた厄介な用語で定義が無数にありますが、ここでは作品のキーとなるコンセプトとしましょう。
モチーフも色々と小難しい解釈がありますが、ここでは実際に作品として表現される時の題材、中華風ファンタジーやヨーロッパ風ファンタジーの〜〜風の部分とします。作品の味付けですね。
早速、流行りの作品で考えてみましょう。
例えば、アニメ化もされた例の冒険者がダンジョンで魔物を料理して食べるマンガ。
「魔物を料理する、なんやかんや仲間で楽しそうにしてるやつ」で伝わりますよね。
逆に「ヒトと小さいヒトとエルフとドワーフがダンジョンで冒険するやつ」だと、似た作品が無数にあってどれかわかりません。
仮にこの作品を「貧乏な元勇者がしかたなく倒した魔物を料理して振る舞うやつ」や、「地侍達が物の怪を食いながら暮らすやつ」にしても、多分似たような作品に仕立てることは可能です。
でも、「ヒトと小さいヒトとエルフとドワーフがダンジョン」にいて、なんなら「魔物を食べて」いたとしても、他の冒険者を騙し討ちしたり、覇権争いを始めたら?
それは、まるで違う作品です。
何故かといえば、「魔物を料理する、なんやかんや仲間で楽しそうにしてるやつ」はワンセットで作品のキーとなるコンセプト、テーマだから。
そして、「ヒトと小さいヒトとエルフとドワーフがダンジョンで冒険するやつ」は味付けの部分、モチーフだからです。
これを分けると、自分が何を書きたいのか考えやすくなります。
何か訴えたいことや見せたいストーリーがあって、それに相応しい舞台とキャラを選ぶのか。
エルフが書きたいとか侍が書きたいとかがあって、書きたいキャラが活きるストーリーを考えるのか。
そう考えていくと、自分の書きたいものがはっきりして、変えていいものもわかります。
ファンタジーを書こうと思い立った時に「中世ヨーロッパファンタジー」というどデカい塊が先に来てしまうと、可愛いエルフは書きたいけど戦闘シーンは苦手とか、貴族の陰謀は描きたいけどなんかヨーロッパの貴族制よくわからん、となる恐れがあります。
書きたいものがわかっていれば、エルフが活きて、戦闘シーン不要の話を考える。中世ヨーロッパにこだわらず、自分が理解しやすい所の貴族で書いてみる。なんなら貴族も捨てて、商人ギルドの陰謀劇にする。
そういう対策が打てるのです。
前のページでファンタジーには罠があると書いたのは、ファンタジーという言葉自体が、一種の巨大なモチーフだからです。
恋愛とかミステリーとかって、比較的テーマ寄りのジャンル名だと思うんですよ。
愛憎劇を繰り広げるのは現代のエリート社員でもいいし、唐なり李氏朝鮮なりの王侯貴族でも、ヴィクトリア時代のイギリスの地主とメイドでもいいし、江戸の下町でも、なんなら異世界でもいいわけです。
魔法があっても、凄いハイテクメカがあっても恋愛物として成立します。
ミステリーは魔法とハイテクは厳しいですが、舞台はどこでもいいですよね。
しかし、ファンタジーはモチーフであって、テーマはまったく規定しません。
憎もうが殺そうが恋しようがファンタジーにできますが、現実世界で物理法則に完全に則った神も仏もない話は、ファンタジーにはなりません。
だから、ファンタジーを書こう! だと、何を書くのか決めてないのと同じなのです。
(多分SFもそうだと思います)
最初に「何を書くか決めよう」といったのは、このためです。
余談ですが、作品はテーマから作り込むべきである、と語る人もいたりはしますが、私はテーマ先行でもモチーフ先行でも、どっちでもいいと思います。
豚骨ラーメンがあったとして、それを「麺類の素晴らしさを世に伝えるため」に作り、流行りのモチーフとして豚骨スープを選んだのか。
「豚骨スープの味が好きだからそこに麺をぶち込んだ」のか。
美味けりゃどっちでもいいですよね!
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