愛しき世界の冒険者!
彼岸りんね
第一章 愛しき世界の冒険者!
プロローグ 自己犠牲ほど恐ろしいものはない
逢ったこともない人に、無性に会いにいきたくなる。
小さい頃、よく夢をみた。
内容は少しずつ違っていて、それでも殆ど同じで。
一人の女学生が己の身勝手で友人の代わりにこの世を去り、日本ではない別の世界でありのままに生きる。
自分の好きなモンスターを使い魔にし、神に愛され、人々に愛され、小さなモンスターから大きなモンスターにまで愛された。
しかし。
自分の好きなように生きた彼女はある真実に気付いた。だけど、その真実は気付くにはあまりに酷で、
その夢を見たあとは必ず、何故か、とても後悔していた。
だが自分には関係のないこと。ずっとそう思っていた。
◇
幼い頃から私。
学業、運動が得意なのは勿論当たり前。
それに加え、私の家は絶対的10分前行動。忘れ物なんてもってのほか。
そんな生活を続けていれば嫌でも完璧っ子にもなる訳で、何時の間にか尊敬される存在になっていた。
「百合霞様ぁ〜〜!」
「朝から拝めるなんて……っ」
校内を歩けば男女問わず、品もなく生徒が媚を売りに来る。
――タンッッ!!!
「きゃぁぁ〜〜っ!」
「カッコイイわぁ〜〜っ!!」
部活で一度弓を引けば黄色の歓声が心を浮つかせるわけで。
The・人類の憧れ。
でも、そんな私でも人には言えない秘密がある。
例えば。
「はぁ〜〜っ可愛い過ぎるっ……尊いっ♡」
こういうところだ。
人気イラスト投稿サイト「pexiv」に投稿されている人間×人外ものや顔の見えない鎧の騎士様があんなコトやこんなコトを……
………思わず興奮してしまいましたが、まぁ、簡単な事を言うと私は、『腐女子×特殊性癖』が合わさった名家の家族には悪夢とも言える娘に育ってしまったのです。
ごめんなさい家族!! いや、ごめんなさいとは一切思いませんが。
私がこうなったのは、厳しすぎる教育の末拗らせてしまった、というのがあってるだろう。常に学校では完璧っ子として家の顔を立て、家に帰れば前髪を下ろしジメッとした服装をしリラックスタイム。
そんな裏側をひた隠しにし続けて17年目の夏。
一人の、親友とも言える友人から電話が来た。
どうせ宿題が分かんないのでしょうね〜。なんて思いながら陽キャモードになる。
「私ですが、どうしたんですか?
「ばいばい」
……へ?」
食い気味に告げられた別れ。
……あれ? 私、この子と付き合ってましたっけ?
急な展開に、次の言葉が中々見つからなくて戸惑っていると電話が切れる刹那、微かに、ホームのアナウンスが聞こえた。
――『まもなく3番線に快速列車がまいります。あぶないですので黄色い線まで下がってください。』
最悪の事態を考えた。
ようやっと事の重大さに気付くと私の脚は家を出て、私を駅へと連れて行っていた。恐らく全国で一位は普通に取れるくらいに。
……そうでもないか。
「ハァはぁ……っ!!」
飲み込んだ生唾が乾いた喉を通って痛い。
道行く人たちに部屋着で裸足という姿を見られまくる。
駅の改札をスマホ改札アプリ
階段を駆け上がり、ホームを見渡すと、勿論のこと沢山の人が居る。しかし、長年友人という関係を守ってきた私は彼女を直ぐに見付けれた。
虚ろな目をして涙ぐませキラキラと光るその子の瞳。赤く腫れた目元がより一層引き立てている。
白線へ脚を伸ばす彼女。
「
私は水華を後ろに飛ばし、水華と白線を
「ゆ――
……あ、死んだ。これ死ぬやつです。
せめて最期は好きな同人誌胸に抱えてお焚き上げにされたかった〜……。
心に余裕なんて無い癖に苦笑した。
線路に落ちる前にとてつもない衝撃と振動で揺れ動き破裂する内臓。砕ける骨。
轟音に巻き込まれ最後まで聴こえなかった彼女の声。もし、名前を呼んでくれたのなら、有り難う。
それを最期に私の意識は激しい衝撃と共に強引に消えた。
最期に彼女が笑った気がした。私に見せる可愛らしい笑顔だった気がした。
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