第ゼロ話 プロローグ

これは私、レイン=ドロップが魔王になる前…まだ雨宮雫と言う人間だった頃の話。


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空は快晴、いつもの授業風景、変わらない日常…アニメの主人公はこれを退屈な毎日と呼び、それを壊すような事件をきっと望むのであろう。私と言う凡人のモブには理解が出来ない。


決して生まれが特別な訳じゃない、他人より少し勉強が出来る程度、でも元から天才のスキルを持ったわけでは無く、努力の賜物...私はそれで満足をしている。


カツンッ!


「先生、終わりました。」


「うむっ!流石だな雨宮。みんなも見習うように。」


私の解いた数式に担任の教師が頷く、余計な一言を添えないで欲しい。それだけで人と言うものは劣等感、差別等の認識をして必要の無い争いを生むのだ。


現に教室の何ヵ所からヒソヒソ...と言われのない誹謗が沸き上がっている。


「どうも‥」


まぁそんなのは私には意味ないけど、担任に軽く会釈をして、自分の席に戻る。おぉ...僻みの視線が刺さること刺さること。


「相変わらず天才だね!雫ちゃん。私も親友兼幼なじみとして鼻が高いぜ。」


「それはどうもですよ。よっちゃん...私は同じ立場的には頭を抱えるぜ?」


皮肉を込めて言ったつもりだが、よっちゃんこと紬愛香つむぎよしかは「いやぁ~。」と言って照れている。全く、そのポジティブ精神だけは尊敬してしまう。


ピシッ...


『ようやく見つけましたわ...私達の大切な御方。』


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時は変わり、放課後。学業の義務を終えた学生達は友人と雑談をしたり、部活をしたり、街に繰り出したりと。各々の時間を楽しむ。無論、それは私の前を歩く親友‥も例外ではない。


「さぁ。雫ちゃん!今日という厄日を乗り越えた偉大な私達にアイスクリームのご褒美と行こうじゃないか!」


「毎日の帰り道、一字一句違わずに言えるよっちゃんには脱帽すらするね。その記憶力を他に生かせないかなぁ?」


「雫ちゃん。そんなに褒めても何も出ないよ~。えへへぇ。さぁ行こう!」


このやり取りも何度目か...依存しているのは私かな?とか思いながらも、目前に差し出された彼女の右手を掴もうと手を伸ばす‥が私の左手が届くことは無かった。


ザシュ!!‥ビチャ‥ビチャ!!


いや、正確には届いてる。彼女の右手‥ではなく、彼女の肉体を貫き現れた赤く染まった何者かの右手が私の左手を掴んでいた。


『フフッ。駄目ですよ?。貴方程の存在が人間のような下等な動物と馴れ合うなど‥。』


「雫ちゃん‥‥私、え?何で‥?」


何が起きたのか?突然の出来事に理解が追い付かず、苦悶と戸惑いの表情見せる彼女よっちゃん。声が出ず、これ以上は見るなと脳が警告をしたのか私の意識はゆっくりと落ちていく。


ぼやける視界の中、最後に見えたのは黒く異形の何か‥。


「悪夢‥。」


意識はそこで完全に途切れた。

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