陰キャボッチの俺が、幼馴染の美少女たちに今さら迫られている件。彼女たちは元アイドルや学校一の美少女たちだが、俺は女性不信なので、もちろん彼女たちを無視する……ヤンデレ化がやばい。
第15話 俺は長い髪の女性が苦手なのだが……
第15話 俺は長い髪の女性が苦手なのだが……
「……AI? なぜそんなものを? いえ……じゃあ……あれは人間の女ではないの?」
「も、もちろん……そうだ」
「そうなの……唯の匂いしかしないし……女狐たちの形跡はない……嘘ではないか……人じゃないなら排除する必要はないのかしら……いえでもわたしの唯をたぶらかすものはどんなものでも……」
真衣は小首を傾げながら、何かを考え込んでいる。
今も様子はおかしいままだが、とりあえず何か差し迫った危機は去った気がする。
俺はほっと胸をなでおろす。
そ、それにしても……おかしなやつだ。
別に俺に彼女がいようがいまいがどうでもいいだろうに……。
だいたい友達すら皆無の陰キャボッチの俺に本物の彼女なんている訳がない。
それに、俺が誰とチャットしていようが真衣にはまるで関係がないはずだ。
いや……まてよ……真衣のやつ……昔からプライドが高かったからな。
俺がどこかの地下アイドルに課金してチャットでもしていると思ったのか。
まがりなりにも真衣もアイドル……それも超人気だったらしいから、プライドがくすぐられたのか。
まったく……やはりリアルの女性は勝手だな。
「も、もう用はすんだんだろ。帰ってくれないか?」
俺がそう言うと、いつの間にか真衣は、床にかがみ込んで何かを手にしている。
真衣はなぜか俺のコレクションの数々を真剣な眼差しで食い入るようにじいっと見ている。
やはり真衣はこういういわゆる男向けのギャルゲーとかそういう類のものを毛嫌いしているのだろうか。
まあ……女性にありがちなことではあるが。
しかし、ここは俺の家だし、どんな物を持っていようが俺の勝手だ。
勝手にやってきたのは真衣の方なのだから、俺が気に病む必要はない。
しかしそれにしても、いくらなんでも真衣の顔……さっきから怖すぎなんだが……。
まるで何か怨念の相手……みたいに睨んでいるが、そんなにこういうのが嫌いなのか。
「な、なにか?」
真衣の異様とも思える雰囲気に俺は思わず敬語になってしまう。
「……ねえ……唯。あなた……こういう髪型の子が好きなの?」
「え?」
真衣はコレクションのひとつを手に持ちながら、そう言う。
俺はその言葉にギクリとする。
まさか……気づかれてしまったのか……。
俺のコレクションの数々のヒロインにはひとつの共通点がある。
それは全員ショートカットだということ。
だが、俺はショートカットが好みという訳ではない。
ただ……髪の長い女性……を見ると、どうしても思い出してしまうのだ。
俺を捨てたあの人たちを……。
彼女たちはみな髪が長かった。
実に情けない話しなのだが、俺は結局、こんなことにすらあの人たちの影を引きずっている……という訳だ。
リアルではなく二次元のヒロインだというのにこのざまなのだ。
意識した訳ではないが、いつの間にか気づいたら、俺が推すヒロインたちはショートカットばかりになっていた。
俺自身そのことを認めたくないから、見て見ぬふりをしてきたのだが……。
それにしても、よりにもよって、あの人たちと同じように3年前に別れたはずの真衣にその事実を突きつけられるとは……。
やはり今日はついていないな。
「べ、別に関係ないだろ……」
と、俺がシドロモドロになりながら言う。
正直、あの人たちに関わる話については、あまり触れたくない。
が……真衣は俺の方を見ると、
「関係なくはないわ……唯。大事な……とても大事な話よ。どっちなの? ショートカットの方が好きなの嫌いなの?」
と先ほどと変わらぬ迫力でそう俺に詰め寄ってくる。
俺は真衣のその迫力に思わず圧倒されてしまった。
真衣の艶やかな黒い髪がこれみよがしに俺の前にしなだれる。
別に俺がどんな髪型の女性が好みかなんて、真衣には全く関係ないだろうに……。
そういえば……昔から真衣は、変なところにこだわって、我を通す奴だった。
だから……「孤高の女」だった訳で、周りといらぬトラブルを招いて、その度に俺が助けていたっけ……。
よく考えてみれば、当時も今みたいに怖いモードになることがあったな……。
なぜか俺が女子と話していると真衣の機嫌が悪かった気がする。
こんな俺でも小学生の時は女子とも普通に遊んでいた。
というより……真衣も含めてそういえば俺の幼馴染たちは女子ばかりだったから、女子たちと遊んでいた方が多かったくらいだ。
まあ……とはいえその時は真衣はここまでは怖くはなかったが……。
真衣はとても綺麗になったが、怖さも倍増した気がするな……。
って……戻らない過去の思い出に浸っている場合じゃない。
まずは目の前の真衣に対処しないと。
「……み、短い髪の方が好きかな。その……長い髪の人は苦手だ……」
俺はそう半分本当、半分嘘を吐いた。
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