高熱
熱を測ると三十八度と表示されていた。どうりで身体の節々が痛むはずだと思いながら、なんとか寝室にまで這っていき、自分のベッドに寝転がる。
吐き気と身体の怠さが半端ない。歩くのも億劫になっている。いつもはどれだけ身体がしんどくても限界ギリギリまで仕事を頑張るのに、この時ばかりは我慢せずに早めに帰って良かったと思った。
私は虚な目でスマホを操作する。実はこの家に引っ越してきたばかりで、どこに病院があるのか分からなかったのだ。
検索で真っ先に表示された病院は、一駅向こうの内科医院。病院の外観は曇り空の下で写真を撮ったのか、幽霊が住んでいそうな印象のどんよりとした病院だった。ちなみにネットの評価は2.5。可もなく不可もなくといった所だろうか。
正直、もう何処の病院でも良かった。とりあえず、薬だ。薬だけが欲しい。なんなら即効性のある点滴を打って私を楽にしてくれ。一刻も早く治してクレメンス……。
「ただいまー。ぽんず、大丈夫か?」
そんなことをしているうちに主人が帰ってきた。主人の良い所はたくさんあるが、ノックをせずにレディの部屋に入ってくるのは主人の悪い癖だと思っている。
「大丈夫か? 仕事帰りに病院探してみたけど、ここはどう?」
主人が探してくれた病院はネットの評価が5だった。しかも綺麗な外観の病院で、クチコミもかなり良い。
おいおい、私のスマホにはそんな病院は出てこなかったぞ? あ、わかった。ここはとんでもなく遠い病院だな?
「この病院は何処にあるの……?」と聞くと、「家から徒歩七分だよ。歩くのもしんどいでしょ。俺が電話しとくから、夕方から車で行こうか」と返事があった。
主人の言葉に衝撃を受けた。私の検索の仕方が悪かったのか、すぐ近くに病院があったらしい。
ちなみに主人に私が探した病院を見せてみると、「何ここ、廃墟?」と言われてしまった事だけは、今でもハッキリと覚えている。
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