第86話 ここはどこなの?

何もない大海原の上を超えてたまにある岩場で休憩しながら4日、人を乗せていると飛ぶスピードが落ちて居るらしくまだ陸地には付いて居ないが海上に海の魔物がポツポツト姿を見せている、空の上から確認出来ているのでかなり巨大な魔物だろう。


ワイバーンたちが「グワ―グワ―!」と鳴きだした、魔物が現れた警戒音とは違うようだが何だろうか?と思って居ると先方に陸地が見えて来ている。

4日目の昼過ぎくらいだろうか?日はすでに高くなっている、やっと戻って来られた様だ、陸地に近づいて行くと大きな山脈とその麓には森林が広がっている、此処は大陸の南側の深淵の森と山岳地帯に出たのかな?


山岳地帯は飛んでいる目線よりも標高が高いらしく迂回して飛んでいく、子供達が限界を迎えた様で森の中の少し開けた場所に降ろしてもらう事に成った。


さき 「ずっと同じ体制で居たから体がバキバキに成ってるよ!」

おと 「グリフォンの首またいでいると柔らかいんだけど足が中々延ばせないから攣りそうに成るんだよね」

パパ 「パパも体がバキバキだ!少し休憩したら体動かしたいな」

ママ 「皆ここ迄飛んでくれてありがとうね~家に帰ったらお礼がしたいからすずちゃんに呼んでもらうから来てね!」

ほしがグリフォンをワシャワシャと撫でまわしている、グリフォンも気持ちいいのかされるがままだ、ワイバーンが羨ましそうに見ているのでパパがお礼に行き手を伸ばすとスッと躱されてしまった…

『こいつはきっとオスなんだろう』と言いたかったが心の中で留めて置いたパパだった、ママが一匹ずつにお礼をして撫ぜて行くそれが終わると皆、山の方に飛び立って行ったのだった。


パパは地図を広げて現在地の確認、ママはご飯の用意をしている、子供達は今まで動けなかったうっ憤を晴らす様に走り回って居た。


パパ 「あんまり走り回ると疲れちゃうぞ!まだ森を抜けないと駄目だからほどほどにな!」

おと 「これ位じゃ疲れないよ!固まった体ほぐさないとね!」


音を咲と星が追っかけまわして捕まえる遊びをしている様だが素早さのステータスが違い過ぎて音は余裕で躱しながら逃げている、キャッキャ言って追っかけまわしているから楽しいのだろう、そんな子供達を見ながらママがパパに現在地を聞いてきた。


ママ 「今ここはどこらへんなのかしら?」

パパ 「そうだなーこのまま森の中を家まで行こうとすると山脈の麓をぐるっと回り込む形に成るな」

ママ 「大分かかりそうなの?」

パパ 「森の中をづっと行くより一度タルト帝国のマウナ目指した方が良いかもしれないな」

ママ 「そうなのね~マウナの宿もダンジョンに行くって言ってそのままだから顔を出した方が良さそうよね」

パパ 「そうだな!心配かけてるかもしれないから一度顔を出しとこうか」


今日はこのままここで休憩がてら夜営をして明日の朝マウナに向けて出発する事にした、ワイバーンとグリフォンが現れた影響か辺りに魔物は居無さそうだった。

すずちゃんとゴンに警戒は任せてその日は久しぶりにのんびりと過ごす家族だった。


朝を迎え準備を済ませて出発する。

おと 「空も1日位なら快適なんだろうね~」

パパ 「ここから飛んでいけば家までは2日位で付けそうだが暫くは飛びたくは無いな…」

さき 「2日また飛ぶのは勘弁して~」

おと 「当分は歩きでも文句は言わないよ」

ママ 「直ぐに文句が出そうだけど我慢してね」

ほし 「ほしは歩くのも飛ぶのも好きだよ」

パパ 「このまま真っ直ぐ北に向かえば森は抜けれるだろう、どれ位掛かるか分からないが取り敢えず出発しようか!」

ママ 「すずちゃんまた案内お願いするわね!」


ここら辺の森は木の間隔が広く歩くのには苦労しないが魔物も大型の魔物が出てきそうだ、すずちゃんが警戒をしてくれているがパパも探査はする様にしている、すずや音の索敵をすり抜け擬態し気配を消せる魔物も発見できるからだ範囲も今では30m位は出来るようになり不意打ちはまず喰らわなくなっている。


パパの探査に魔物が引っ掛かった様で木に向かって魔法の火の矢を放つが何も変化が無い、パパが首を傾げて考えている。


おと 「トレントでは無さそうだよ?」

パパ 「でも探査で引っ掛かってるんだが音は何も感じないのか?」

おと 「私は全く分からないよ?」


咲が何かに気が付いたようで土の矢を木の上の太い枝の辺りに放つと何かが飛び他の木に飛び移った様な気がした。


パパ 「今度はそっちの木の枝の上だ!」

パパが指をさす方に向かって音が風の斬撃を飛ばす!

見にくい風の斬撃を躱し損ねた様で血しぶきが舞い体に血が付き擬態出来なくなった魔物が姿を現す、ヒョウの様なしなやかな体つきのネコ科の魔物の様だ木の上で擬態で隠れて獲物が下を通った時襲い掛かるのだろう、すばっしっこいが見えてしまえば倒せない様な魔物では無く音が難なく倒してしまった。


おと 「姿が見えちゃったら余裕だったね」

パパ 「擬態して奇襲で後衛から襲われたらやばいんだろうな」

ママ 「一撃で離脱してまた擬態で襲われたらめんどくさそうよね」

パパ 「奇襲以外は攻撃手段無さそうだったしな」

さき 「擬態だけ注意だね」

ほし 「今の子かっこいいよね!ママ~次見つけたら飼っても良い?」

パパ 「捕まえるのは難しくないか?かなりすばしっこそうだ」

ママ 「チャンスが有ればやって見ましょうか無理そうなら諦めてね?」

ほし 「分かったー!みんな頑張って捕まえてね!」


その日はパパの探査に2度ほど反応があったが、攻撃を控えた事も有り捕まえようと試みたが擬態を見破られたと悟ると直ぐに逃げてしまった。


ママ 「残念ね~これは捕まえるのは難しいわね」

パパ 「夜の方が相手するのは難しそうだな探査で引っ掛かっても姿を見つけられなさそうだな」

おと 「暗いと見つけても直ぐに見失いそうだよね」

ほし 「そっかー残念だ!欲しかったのにな~」


確かに倒した状態の姿は真っ黒で艶が有り手触りも良い姿もスラっとしていてペットに出来たら貴族では自慢できる魔物だろう。

パパの収納ではミミックパンサーと名前が出ている、攻略本に載って無い魔物のようだった、パパも知らないので新しい魔物なのだろう。


パパ 「毛皮が良さそうだ手触りがすっごい良い!」

ママ 「そろそろ暗く成って来たわね」

おと 「木の下で夜営したら襲われそうだよね?」

パパ 「何処か開けた所探すしかないか」


すずちゃんの案内でマウナ迄の道は迷わずに最短で行けるのだが後どれ位かかるかは分からなかった、それから少し歩くと川が流れて居て川岸は岩場に成って居る、川はそれほど深くは無く一番深い所でも膝位だったので魔物にいきなり水中から襲われる事は無いだろう。

今日はここで夜営をして明日に備える事に成った。

まあ実際良い場所が無くてもゴンとほしの結界が有れば全く問題は無いのだがなるべく安全な場所で休憩をしたかった。

夜中は魔物も活発になるのでゴンの負担が増えてしまうのだがゴンにとってはこの辺りの魔物程度では全く苦に成らない様だ。

最近のゴンは夜ではほぼ無敵の状態になってしまう、パパのステータスはすでに抜かれていて脳筋ママでは倒せない音が何とか行けるかな?と言った感じだがゴン本人は家族の事が大好きな様で反抗したりするそぶりは全くない、むしろ進んで守ろうと頑張っている様だった。

創造神の使徒扱いのママの使役獣、今のこの力はママの御かげだとゴンも分かっている洞窟の中で隠れて住んで居た食べ物にも苦労して居た過去を覚えている、それを外の世界に出して貰い命をも救ってくれ力も与えてくれた家族、ゴンは今の幸せなこの時を必死に守ろうとするのだ。


何事もなく夜営を終え起きて来たパパだがテントの前にミミックパンサーが居てビックリし「うは!」悲鳴を上げてしまった!その声に家族もびっくりして飛び起きる!


ママ 「どうしたの大声出して?」

パパ 「テントの前にミミックパンサーが居てビックリしたんだ、すまん!」

おと 「え!なんでほしの結界あるでしょ?」

パパ 「確か敵意が有る者や悪意がある者が入れないんだったよな?」

さき 「じゃあ入れたって事は敵意が無いって事?」

ママ 「そう言う事に成るわね?」


テントの中でそう話して居るとゴンがママの元に来て何か報告している


ママ 「ここを狙って来たからゴンちゃんが捕まえたんだって」

ほし 「ほんとに!ゴンちゃんありがと~」

ほしはゴンを抱きしめてテントの外に出て行った、慌ててパパも後について行くがミミックパンサーは伏せをして顎を地面につけ完全に敵意が無い事を示していた。

パパ 「ママ完全に服従ポーズだな…ママ速くテイムしてあげな!怯えているみたいだから可哀そうだ」

ママ 「そうみたいね、分かったわ」

ママが手を頭にのせてテイムを試みると薄っすらと体が光った!テイム完了だ!

パパ 「名前つけてあげないとな?」

おと 「カッコイイ名前が良いよね!」

さき 「みんなで1個出し合ってその中から選ぼうか?」


ママは食事の用意をしながら考えると言い準備をしだした、食事をしながら決める事にしそれぞれが考える事に成った。

おと 「私はパンちゃん!」

さき 「パンサーでパンって安直!」

おと 「うっさいなー簡単で良いでしょ!そう言う咲は何にしたの⁉」

さき 「私はね~ブラック!なんてどう?」

おと 「毛の色そのまんまじゃん!それなら黒で良くない?」

パパ 「黒は銀狼族の子供に居るから駄目だな!」

おと 「そうだった!銀狼族にほぼペットの名前取られてるから難しいんだよ」

ママ 「ペットの名前って…」

ほし 「私はね~あんこって名前が良いかな!」

パパ 「お!それ中々良さそうな名前だな」

ママ 「私はあずきだったから似た感じの名前ね」

パパ 「パパは豆太って名前だな」

おと 「豆太ってこの子男の子なの?」

パパ 「いや分かんない…」

さき 「ダメじゃんそれ!」

おと 「じゃあ候補は3つかな?」

さき 「3つってどれとどれとどれ?」

おと 「パン、あんこ、あずきかな?」

さき 「パンは無いわ~あずきかあんこだね」

パパ 「パパはあんこが良いかな?あん!って呼びやすいしな」

ママ 「ママもあんこで良いわね可愛いし」

ほし 「やったーじゃああんこで良いよね?」

ほしがそう言うとミミックパンサーの体がまたポワっと光った。

パパ 「本人もあんこが良かったみたいだな、よろしくなアン!」


パパがそう言うとあんこも「がう!」と鳴き返すのだった。

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