アサシン・レポート

奇跡零

Ⅰ ノーフェイス



“表”と“裏”


“出会い”と“別れ”


“慈愛”と“残虐”


“希望”と“絶望”


“覚悟”と“不覚後”


“始まり”と“終わり”








この世には対となる

言葉、事象、モノ

がありふれている


人の表と裏

社会の表と裏

似ているものもありふれている


ただ1つありふれていないもの

それは



「人の心だ」














都内某所

夜な夜な動く影があった



「ゃ、やめろ、、、ち、近づくな…!!?!」


「…」


前者は麻薬の売人

後者は暗殺者

後者は前者の丸々とした頭に対し


銃を突きつけた


「やだ、死にたくない、ぁああぁあぁあああぁああぁああぁあぁあぁああぁぁああぁあぁあ!!!?!??!??!!???!!」


「……こちら「ブラッド」…任務終了」


『了解した…即時帰還せよ… 』


「…了解」










この世界は狂ってる

出生で全てが決まる


金持ちや政治家の子供は全てが手に入る

生まれた時から勝ち組だ

余程の失敗や何かが起きない限り将来安泰


逆に


貧乏の家の子供は望むものが手に入らない

手に入れる金、人望、きっかけ

チャンスはあるが環境のせいで気づけない


だが


貧乏な者には成功する力、成功させるための努力ができる力がある

有名な人の中の多くはそこまで裕福でもない家庭出身者も多くいる


逆をいうと


金持ちや政治家の生まれながらにチートな子供でも成功するかしないかは努力をするかしないかだ







だが例外もある

先程の暗殺者の少年のような親無しの“孤児”はチャンスすら与えて貰えない


世間からは晒し者にされ

陰口、暴力、その他諸々

自分のストレス発散、憂さ晴らし、エゴの押しつけ、そんなクソみたいな道具としてしか俺たちを見ていない





だから少年たちは裏の世界にしかいけない


裏社会はいい

生まれ育ちなんぞ関係ない

実力主義の弱肉強食

強い者は絶対的な権力を

弱い者は生きているのも辛い屈辱を




裏社会には裏社会を牛耳るグループがある


「改革派“キングロード”」

「保守派“バリアスカイ”」


キングロードがマフィア

バリアスカイが警察

のような立ち位置で裏社会を支配している


少年はキングロード所属の

殺し屋チーム『 ディストラクション』の

1番隊隊長「ブラッド」

…巷では『 ノーフェイス』と呼ばれている



ブラッドが所属するディストラクションは

顔、名前、声

ありとあらゆる細かな情報さえ敵に渡す訳にはいかない


その為入隊試験は各隊長とボスのみで行い、入隊後はコードネームをボスに頂き仮面をつける

その後各隊に配属される




キングロードは“孤児”が圧倒的に多い

基本ボスが路地裏から拾ってくる者で構成されている


それに比べ

バリアスカイは“一族”の者で構成されている

バリアスカイは表社会の大企業の社長共が金を出し合って作り出したニンゲン“アルファ”のみで構成されている


奴らは感情、痛覚が全てない

ただの生きているロボットにすぎない








裏社会の話はここまで

次は少年…ブラッドについて


ブラッドはキングロードに拾われ、ずっと裏社会で生きてきた

そのおかげもあってか

裏社会ではそこそこ有名な暗殺者となった

ブラッドが担当する任務は失敗しないと有名だ


そんなブラッドがこの度

国のオエライサンに呼び出された









都内某所

“裏社会担当事務総監室”

ここに1人の男がいた




「失礼します。キングロード所属ブラッドです。」


『 …入れ』



ブラッドが入ると目の前に

1人の男がいた

身長はさほど変わらないが

ブラッドは悟った

この男は“圧倒的強者”だと

少年は気づいた

この男から出されている身が縮こまるほどの“殺気”に




「…何の御用でしょう

裏社会担当事務総監

業 炎かるまほむら


『 様をつけろ小童。お前のキングに教わらなかったのか。』


「…失礼しました。ですがボスからはこのように接しろと教えられましたので」


『 …まぁいい。所詮ガキだしな。…貴様を呼んだ理由を説明する。そこに座れ。』


「…失礼します」



ブラッドが座らされたのは客人用のソファ

だが所々にシミのようなものやボロボロになり中身が出ている部分もあった




『 …お前を呼んだ理由は簡単だ


貴様に死んでもらうためだ』




次の瞬間

ブラッドは座っていたソファから飛び退き

業はブラッドの首を狙いナイフを振っていた



「何の真似だ?業さんよォ」


『 貴様には死んでもらう。それだけだ』


「だァからその理由を言いやがれオッサン」


『 …貴様は分かっていない』


「ア?なんの事だ…」





ブラッドの言葉を遮るかのように

業のナイフがブラッドの腹部を切り裂き

部屋中が赤色に染まった



「?!…ッザけんな…」


『 貴様はもう終わりだ…』


「…チッ…クソッ…がァ…」

(ボス…今までありがとうございました

俺を拾って育ててくれて

生き残る術を教えてくれて

貴方のおかげで俺は生き残れた

…ただでさえつまらない人生に

色がついたような

…ボス、みんな

こっちには早く来ないでくださいね

悲しくなりますから

また…会いたいな…)




ブラッドの頭の中では

ボスへの感謝と

今までの人生が駆け巡っていた

ブラッドが意識を飛ばす瞬間

業のある言葉が聞こえた








『 …向こうでは自分の本当の気持ちを見つけてくれよ ムクロ












『 向こうで過ごす内に君は気づくだろうな

今世の君には感情がなかったことを


次の人生は思い切り楽しめよォ

…こっちは俺に任せてくれ

生きやすい国にする

君と爺さんとの約束だからなァ』




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アサシン・レポート 奇跡零 @Rei-RINNE

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