第52話 戦い終えて



あたし達は山城へ行き、起きた事をヘーニッヒ達に伝えたのよさ。


城のみんなは大喜び。

その中で、ヘーニッヒは力が抜けたように椅子に座り込んでしまったのよさ。

そして、静かに涙を流したのよ・・・

思えばそう、彼の父は強盗団に殺されてしまったのよ。

ようやくひと段落ついた所で、ヘーニッヒは今までこらえていた感情があふれてきたのかもしれないねぇ・・・

メメシアは、そんなヘーニッヒはに優しく寄り添ってあげたのよさ。

生と死、ここの境界に聖職者は必要なのよねぇ~・・・


しばらくそっとしてあげることにして、あたし達は城壁の上から外を眺めてる事にしたのよさ。

放置されたままの投石器は、村の子供達の遊び場と化していたのが見えるのよねぇ~・・・

大人達の苦労の裏で、知ってか知らずか、無邪気に遊ぶ子供達の姿・・・

守るべきものを守れたんだなぁ~って気分になれるのよさ。

ヘーニッヒも、あの場にいる子達よりひと回り年齢が違う程度なのにねぇ~・・・


すると、リキムントが言うのよさ。


「これ程にまで色々やってもらって申し訳ない所なのだが・・・ヘーニッヒと一緒にダイムラー辺境の所へ尋ねに行ってもらいたい。そこで、今回の事を説明し、借金の返済の兼で、話をして欲しいのだ・・・」


っと、そんな事を頼まれてしまったのだわさ。


この日は、城に泊まる事になったのよ。



☆☆



夜、あたしゃ~妙に寝つきが悪くてね、借りた城の寝室は狭く、あたしら4人が同じ部屋で寝る事になったんだけど、プロテイウスのいびきが壁に反共して、いつもに増してうるさい・・・

そんな中でもハレルはぐっすり寝ているのよさ。

流石勇者、サバイバル能力が高いのよさ・・・

メメシアの姿が見えなかったのよ。

あたしはちょっと、夜風を浴びようと、城壁の上に出たのよさ。


「あ、マジョリンさん。ちーっす」


「乗馬が上手いハンスじゃない。あんた、夜警もしてるんだ?」


「まあ、兵士ですからね。元は領内の農民っすよ。まあ、城勤めの期間が終われば、普通の農民に戻るんっすけどね」


「そうなのねぇ~。所で、メメシアは見てないかねぇ?」


「あ~、礼拝堂でずっと祈祷してるっすよ。なんか、今回の騒動の死者の魂の救済を祈っているみたいっすね。よくわからないっすけど」


「そうなのねぇ~。じゃあ、そっとしておいた方がよさそうなのだわさ」


「おやおや、マジョリンさんとハンス、こんな所で何立ち話をしてんだ?」


っと、リキムントがひょっこり現れたのよさ。


「せっかくだ。オレのとっておきな酒があるんだぜ。マジョリンさんも味見してくれねえか?後、ハンス、お前はよく働いてくれた。お前もいっしょに飲もうぜ」


っと、リキムントは酒の入った小さな小樽を持って来たのよさ。

小樽に付いた蛇口をひねって、素朴な木のコップに酒を注ぐ。

そして、城壁の上で3人でこっそり乾杯したのよさ。

酒はブラントワインで、上品な甘さ、エレガントな香りがするのよ。


山城の城壁から見渡す夜景は、月灯りに照らされた森の木々がうっすらとその姿をさらしだし、星々が輝いていたのよさ。

夜風を浴びながらの一杯、これまた特別な味に感じるものなのよねぇ~・・・

森の香りが風に運ばれてくるのよ。

この香りを肴に、ブラントワインを飲む・・・

詩人になれそうだわさ。


「いいブラントワインだわさ。下手に甘すぎず、べたつかずにすっきりと飲めて、樽の香りもいい感じに香って、とても美味しいのよ」


「マジョリンさん、いい事言うっすね~。味を語れる、尊敬っすよ」


「こればかりはなれだわさ。飲んだ味の感想を言葉にする事を続ければ、出来るようになるのよねぇ~」


「まじっすか~。オレも、語れる口になりたいっす」


「では、手始めに、今の味を語ってみればいいじゃないか?」


「ははは、リキムントさん、いきなりはないっすよ~」


「いいじゃん。語っちゃいなよさ~」


「え~、う~ん・・・わかったっすよ~・・・」


ハンスは1口、ブラントワインを飲むのよ。


「・・・う~ん、ブラントワインって味っす」


「それをもっと細かく言うのよさ」


「・・・鼻からこう、香りが・・・ハスキーな香りが抜けるっす・・・あ~、これ以上は無理っす~」


「こういう事を続ければ、徐々に出来るようになるのよさ。それと、他の人の感想も聞いて、参考にするのもいいのよ」


「勉強になるっす~」


しかし、今回も中々強い敵だったのよさ・・・

直接対決になったから、まだ勝てたのかもしれないねぇ~・・・

じわじわと滲みよるような侵略みたいな事をされたら、多分、対処できなかったのかもしれないのよさ。

それに、メメシアは強いとは言え、その力を使い過ぎると天に召されてしまう可能性があることもわかったのよ。

まさに、暴走状態なのよ。

これまでメメシアが極東の術を使っていたのは、真の奇跡を起こせば、その制御ができない事にも理由があったというわけなのよねぇ~・・・


「なんか、1つ困難を越えても、その先に新しい課題があって・・・いや、元からあった課題に気が付くみたいな・・・苦難は突き詰めれば突き詰める程にあふれて出てくるみたいで、嫌になるのよさ」


「でも、それが生きるって事なんじゃないっすか?」


「・・・ハンスの癖に生意気な事を言うのだわ~」


「酔ったからっすよ。いい酒は人を詩人に変えるっす」


調子のいい奴だわさ。

まあ、あたしはきっと、今のこいつと同じで、調子のいいやつであるべきなのかもしれないねぇ~・・・

それが、仲間達の内での役割的なやつさ。

なすがままに、天より与えられし使命に従うってやつなのかねぇ~・・・



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