第38話 リンゴやナシの花が咲いて
あたし達は森の中の細い道を進んでいたのよさ。
ズンッ! ズンッ!
何か大きな生き物の足音が聞こえたんだわさ。
「何か魔物が近くにいる・・・みんな、気を付けて」
ハレルは剣を抜き、みんなに指示をする。
「このまま見過ごすにしては危険性があると思う。ゆっくりと接近するから、みんな、ボクの後に付いてきて」
あたし達は森の中、大きな足音のする方へ向かったのよ。
すると、森の中を進む大きな何かがそこにいたのだわさ。
それは、ニワトリの足のようなものが生えた歩く木の家だったのだわさ。
「あれは・・・なんだろ?家?可動産?」
変なものを見て、困るハレル。
だから、あたしが説明する事にしたのよさ。
「あれは魔女の家だわさ。それも北国の魔女。こんな所にまで南下してくるなんて珍しいんだわさ。まあ、恐ろしい魔女的な、変な噂はあるけどさ、基本は温厚んだんだわさ。まあ、あたしも本物を見るのははじめてだけどさ」
「そうなんだ・・・魔物じゃなくてよか・・・あの家は魔物に入りますか?」
「う~ん・・・使い魔と言うか、何というか、魔物寄りの魔物・・・でも、無害ってやつ」
「無害なら、大丈夫かな」
「せっかくだから、声かけてみるかい?」
「確かに、本当に善良な魔女であるか、確認する必要がありますね」
っと、メメシアは相手が悪い魔女だったら狩るつもりでいるようだわさ・・・
おお、怖い怖い・・・
「こんにちは~!」
とりあえず、魔女の家に向かって、ハレルが大きな声であいさつをしてみたのよ。
すると、魔女の家の窓から若い魔女が顔を出したのさ。
「こんにちは~。もちかちて、わたち達、勝手に私有地に入っちゃいまちたか?」
「あ、いえ、違います。ただ、大きな足音がしたので、魔物かと思って来たら、家が歩いていたので、声をかけて見たのです」
ハレルの返答に若い魔女は笑ったのよさ。
「わたち達は悪い魔女じゃないでつ。よかったら上がってくだちい。美味しさに自信のあるスビテンを飲んで行ってくだちい」
「スビテン?はじめて聞く名前の飲み物だわさ。とっても気になるのよさ」
「それはお酒ですか?」
「お酒ではありませんでつ~」
「それなら良しです」
メメシアのさり気無いお酒チェック、抜け目がないねぇ・・・
大きなニワトリの足が
あたし達は若い魔女に招かれ、魔女の家の中に入ったのさ。
「ようこそ。わたちの事はヴァシリチカって呼んでくだちい。後、この3人はわたちのおばあちゃんとお母さんとお父さんでつ」
「バーバじゃ」
「ハーハですの」
「パーパだよん」
「ジージはいないのかねぇ?」
「リストラされたのでつ。ごろが悪いからでつ」
「どういう基準なのかわからないけど、それは可哀想なのよ・・・」
「ショックでガリガリに痩せて、今は北の大地の何処かで、不死身のなんとかかんとかって名乗って暮らちているみたいでつ」
こんな感じであたしらも自己紹介して、テーブルを囲って軽くおしゃべりなのよ。
スビテンって飲み物は北国の飲み物で、蜂蜜とベリー系のジャムとハーブで作られた飲み物だったのよ。
まあ、美味しいっちゃ美味しいんだけどさ、お酒がいいよねぇ・・・
「魔王を倒つ為に旅をちていらっちゃるのでつか。それは凄いでつ。わたち達は魔王軍の支配地域が拡大してきた為に、逃げるようにこの土地までやって来たのでつ」
「守護魔法があるから、わしらは捕まら無いって言っているのじゃが、ヴァシリチカが心配性でのう」
「ハーハも同感ですの」
「そうだ。せっかくだから近くの街まで、このお家に乗って、移動ちませんでつか?」
「そうじゃ。それがいいと思うのう」
「ハーハも同感ですの」
「そんな、突然お邪魔したのに、いいのですか?」
「魔王を倒してくれると、わたち達も助かるから、積極的に協力しまつ」
「その間、くつろいでのう。旅の疲れを少しでも癒してほしいのじゃ」
「ハーハも同感ですの」
っという事で、あたし達は魔女の家にしばらくいる事になったのよさ。
ぎぃぃぃ・・・ ズンッ ぎぃぃぃ・・・ ズンッ
家が歩く度、家の木材がきしむ音がするのよさ。
「ねえ、この家、歩いていて崩れないよねぇ~?」
「崩れる時はもっと凄い音だからわかりまつよ~」
「崩れた事、あるんか~い」
ぎぃぃぃ・・・ バキッ!!
「あっ!!」
「え?今のヤバイ音に聞こえるんだわさ」
ぎぃぃぃ・・・ ズンッ
「・・・セーフでち」
「怖ぇ~のよさ・・・動く
「まあまあ、しばらくかかりますのじゃ。クワスでも飲んで、ゆっくりして下さいなのじゃ」
「バーバさん。クワスはステビンとは違う飲み物ですか?」
「違うのじゃ。うちの自家製クワスは酒成分がちょいと高めなのじゃよ。うまいじょ~」
「あ、お酒はNGで」
ええ~!そんなぁ~!
堅物メメシアめぇ・・・
クワスって初めて耳にするお酒、絶対飲んでみたいのにぃ・・・
「は~い。ステビンでちよ~」
っと、ヴァシリチカがステビンという飲み物をグラスに入れて持ってきてくれたのよさ。
『マジョリンさん。マジョリンさん。今、心に直接話しかけているのでちよ』
『おお、流石は北方の魔女だわさ』
『マジョリンさんのだけ、クワスにしてあるのでちよ。みんなにばれないように飲んでくだちい』
『感謝なのだわさ』
さて、クワスの味は・・・
クセが強いのだわさ・・・
『穀物の味、臭みが強いのよ。酸味もあって、妙な味なんだけどさ、妙に癖になる味だわさ』
『それは、喜んでるのでちか?苦しんでいるのでちか?』
『喜んでるよりの苦しみ』
『いいか悪いかわからないでちよ・・・』
『そうなんだもん・・・』
でも、お酒成分があるからか、気分がいいし、変なクセが強い味だけど、飲み続けれる感じだわさ。
その日、結局街までたどり着くのに時間がかかるので、この変な家に泊めてもらう事になったのだったのよさ・・・
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