第37話 旅するガーデンノーム



朝になって、すぐに村を出発すると思っていたんだけどねぇ・・・

修道院の人達に悪しき魔女とどう戦ったのか、どうやってエンチャント魔法を解除したのかを説明する事になったのよさ。

今後の対策の為ってねぇ・・・


まあ、そこら辺の修道士がどこまで対応できるかはわからんけどさ、1度起きた事はみんな不安になるからねぇ・・・

一通り説明を終えて、あたし達は村を後にしたのよさ。


結局、時間も遅くなって、また森の中の宿に泊まる事になったのよねぇ・・・


そして、夜が更けて・・・

今夜もあたし1人、こっそりとお酒を飲みに行くのだわさ。

いざ、お1人様極楽へ!


今日も混んでいるのよさ。

でも、隅っこの席は空いていて、そこに案内されたのよねぇ~。

気楽にビールを注文したのよさ。

そんでもんで、ちびちびと飲んでいたんだけどねぇ・・・


「あの~、お客さん、すみませんが、相席いいですかね?」


「相席・・・まあ、いいけど~」


「ありがとうございまーす」


すると、店員に案内されて来たのは、背の小さいおっさん達・・・

そう、ノームだったのだわさ。

3人のノームが、あたしの前の席に座ったのよ。


「相席、失礼しますね」


「これはこれは珍しい・・・ノームの方と相席は初めてなのよさ」


「そうですよね。ノーム自体、数が減ってますからね~」


ノーム達は各々ビールとナッツを頼んだのよ。

そんで、珍しいであいに~とか言って、乾杯したのよさ。


「しかし、3人もそろって、どこかへ行く途中ですか?」


「あ、はい。これから南へ行くつもりです。水の都を巡って、その後、芸術が発展する都へ行って、いにしえの帝国の都にも向かうつもりです」


「おお、いい旅だねぇ~。でも、結構大変じゃないかねぇ?」


「まあ、距離がありますから。でも、苦労なんて感じちゃいませんよ」


「私達は普段、お屋敷の庭師をしているんです」


「へぇ、ガーデンノームってやつなのかねぇ?」


「はい。それで、ご高齢なご主人が、旅に行きたいと言い出して、でも、ご主人は足が悪く、歳も歳なので、遠出はあきらめてしまったのです。そこで、我々がご主人の代わりに旅に出ました」


「行く先々の風景を絵に描いて、手紙を出しているんです。もちろん、我々も風景画に入れて描きます。一緒には行けませんが、ご主人にも一緒に旅している気持ちになってもらいたいと思いましてね」


「そうなんだ~。それは面白い事やってるねぇ~」


「ご主人も喜んでくれてたらいいんだけどね」


「そりゃきっと、大喜びだわさ。いいノーム達だねぇ・・・でも、危ない目にあったりとかはしないかい?」


「危ない目・・・そうですね・・・オオカミに追われた事はありますね。他にはゴブリンの集落に迷い込んだ時は焦りましたね。騒ぎを起こさないように、なんとか抜け出せて、怖かったですね~」


「やっぱり、ゴブリンってノームにも敵対心があるのかねぇ~」


「そうなんですよ。あいつら魔物ですね~・・・精霊とは違いますよ」


ここら辺の区分、ちょいとややっこしいって思うこの頃なのよさ。


「他にも、盗賊に追われた事もありましたし、精霊嫌いな人達に捕まって、火あぶりになる寸前で逃げ出せたって事もありましたね~」


それはなかなか酷な出来事なのよ・・・


「所で、魔法使いのお姉さんは、どこかへ行く旅の途中でしょうか?」


「あたし~?あたしはねぇ~・・・」


どうするかねぇ・・・

正直に魔王を倒す為に勇者と旅していると答えるか否か・・・

あまり正直に勇者と旅しているって答えるのも、なんか名誉職を自慢しているみたいで嫌だな~って思うのよねぇ~・・・

でも、だからと言ってなんと答えるべきかねぇ~・・・


「あたしは~・・・個人的に修行だわさ・・・」


「修行?」


「魔法を極める為にねぇ~・・・色々な土地で、色々な風習を調べてるのよさ」


「・・・それ、危険じゃないですか?」


「だって・・・土地によっては異端扱いされそうですよ?」


ああ、しまった。

確かにそうなのよさ・・・

各地を巡って魔法の修行なんて、禁術の研究を疑ってくれと言っているようなものなのよさ・・・


「あ・・・そういうんじゃなく・・・・葉っぱとか・・・」


「葉っぱ?」


「やっぱり危ない事してませんか?」


「いやいや・・・草とか・・・・」


「草?」


「何かキメてます?魔女の軟膏的なやつ・・・」


「う~ん・・・は、ハーブだわさ。ハーブを研究しているのだわさ。だから、色んな土地で生えてる草とかを研究しているのだわさ」


「ああ、そういう事だったんですね。それならわかりました」


「よかった~・・・危ない魔女だったらどうしようかと思った・・・」


どうしようかと思ったって、あんたら、あたしの事、悪い魔女だって確信したら、どこかに告げ口する気だったんかねぇ・・・

人が信用できなくなるわぁ~・・・


「すると、本とか出す予定はあるのですか?」


「本?」


「ほら、最近はお金のある知識人と言えば、出版するってのが流行じゃないですか」


「あ~、そうねぇ~。確かにそれはありかもねぇ。考えてもいなかったのよ」


「勿体ない。そういうハーブに関しての知識、必要とする人達は多くいると思いますよ。絶対やっておくといいと思います」


まあ、何かの利権に触れたりして、命を狙われるような事が無いか心配になるけど、確かに無しではないのよねぇ・・・


「まあ、お金は無いからねぇ・・・」


「それなら、出資してくれる人を探すといいですよ」


普段、貴族に雇われているノーム達だけに、考えがちゃんとしているな~って思ったのよねぇ~。


「そうねぇ~。ちゃんと、誰に発表しても恥じないようにまとめて考えてみるのよさ」


出版ねぇ・・・


「そういうあなた達も、旅の話を本にまとめると面白いかもしれないねぇ」


「そんなそんな、小人達が旅をするだけですよ。好き好んで読む人なんていますかね?」


「いるかもよ~。だって、昔の巡礼者の体験記とか、東へ旅した商人の書いた本とかが印刷出版されているんだから、きっとこれから流行ると思うのよさ」


「まあ、新大陸の話なら受けるかもしれませんが、私達の旅じゃそこまで・・・」


「そうねぇ~・・・そしたら、話をもるしかないねぇ。例えば・・・何か探している旅をしているとか・・・大切な・・・指輪とか?」


「指輪ですか?」


「そうそう、その指輪を手にした者は世界を手に入れる事が出来る~的な?」


「もりすぎですよ~」


ガハハハっと笑うノーム達。

面白いし、流行ると思うし、歴史に残ると思うのにな~・・・指輪の物語的なの・・・

時代が早すぎたのかねぇ~・・・


そんなもんで、まあ楽しく飲んで、交流出来た一夜だったのよさ。



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