第9話 シャトー、それは城ワイン



難民の村人に案内され、山道を行き、魔王配下の強盗騎士団に占領された村の近くにたどり着いたのさ。

小高い所から見渡すと、荒らされた村に数体のオークがうろついているのが見えたのさ。


「勇者様、よろしくお願いします・・・ご武運をお祈りします・・・」


村人の案内はここまで。


あたし達は堂々と、正面から村に入ったの。

すると、気が付いたオーク達が徐々に近寄って来たの。

結構な数だよ・・・


「愚か者共が、死にに来たようだな」


漆黒の鎧を身にまとう魔王配下の強盗騎士が、姿を現したのさ。


「この村を、村人達に返させてもらう!」


そこからは激しい戦いだったのさ。

あたしは全力で攻撃魔法をぶっ放し、迫りくるオーク達を倒す。

メメシアも聖なる魔法で全力サポート。

プロテイウスは狂戦士の力を開放させ、大剣を振り、強盗騎士と互角以上に渡り合う。

そして、ハレルの勇者の力、神の雷が強盗騎士に止めを刺した。


「貴様ら・・・なかなかやるな・・・だが、我らの侵略はまだ、はじまったばかりだ・・・偉大なる征服魔王に栄光あれ・・・・っ!」


最後の言葉を言い、強盗騎士は塵となって消えて行った。


こうして村を取り戻すことに成功したの。


難民の村人達は自分達の村に戻ることができ、荒らされた村もすぐに復興するだろね。

多くの人達からありがとうって感謝の言葉を受け取ったのさ。



☆☆



あたし達はその後、城主のテレ・フォン・サビス卿に招かれ、城で行われる晩餐会に出席する事になったのよ。


「この度は、勇者ハレル御一行のおかげで、無事に村を奪還できた事、誠に感謝致す。どうか、戦いの疲れを癒してほしく、御馳走を用意しました」


大きなテーブルには様々な料理が並んでいた。


「これらはわたくしと、領民達の感謝の気持ちです。勇者様の活躍を耳にした領民達が自ら食材を提供してくれました。どうか、感謝の気持ち、受け取って頂きたい」


あたし達はご厚意をありがたく頂戴することにしたのさ。


「そうだ、我が領地、自慢のワインがあるのだが、是非、味わってもらいたい」


「いいえ、お酒はお断りしています」


サビス卿のご厚意に対してまで毅然とした態度で断るメメシア・・・


「ねえ、メメシア・・・流石にサビス卿がご厚意で出してくれるって・・・」


「マジョリン。あなたはそうやって飲みたいだけでしょ?」


頑固なメメシア・・・あたしが飲めずにしょんぼりしていると、サビス卿と目があったのだよ。


「我が領地のワインは、領民が汗水流し、丁寧に育て上げた高品質の葡萄を、丹精込めてワインにし、献上してくれたわたくしにとっても大切なワインなのです。どうか、我々の魂とも言えるワインを味わって頂きたい」


サビス卿は強く頼み出てくれたのだ。


「・・・マジョリン。今回はサビス卿の栄誉の為にわたくしは屈します。ただ、飲み過ぎないでくださいね」


「メメシア、ありがとう。飲む量は抑えるから~」


あたしの前に綺麗なガラスのゴブレットに注がれたのは白く宝石のように輝いたワインが置かれたのさ。

メメシアから許可された貴重な1杯・・・

じっくりと味わおう・・・


ゴブレットに顔を近寄せると白いワインの甘酸っぱい香り。

この香りだけでもずっと味わっていたくなる・・・

それでも、お酒は飲むもの、あたしはそっと1口、少しトロみのある液体を口にふくんだのさ。


もはや、楽園の園にいるようだったのさ。

全ては祝福されている。

罪無き世の花園・・・

葡萄という果実からできている事を疑う程に、花の香りがしたの。

甘味と酸味のバランスがとても素晴らしい・・・

じっくりと味わいたいワインだわさ・・・


「これは、愛ですね・・・このワインは葡萄から造られているのではありません・・・愛で造られています・・・ここの領民の皆様は、とても素敵な人達ですね」


あたしの感想を聞いたサビス卿は満面の笑顔だった。


「ありがとう。それがわたくしが最も愛する領民の魂なのです。それと、この魚の蒸し焼きもぜひ食べていただければと思います」


ツァンダーという川魚の切り身の蒸し焼きに、ホワイトソースがかかっている。


食べてみる。


「白身魚の淡白な味わいに、クリームソースがあうね~。魚の臭みを消しつつ、ソースのうま味がからみついて、とっても美味しいのよ~」


そこで白ワインを1口、ゴクリ。


「あうね~。魚には白ワインがいいって、あたしの魔法のお師匠さんも言っていたけど、本当だね~」


なんか、うれしくて絶賛しちゃったね~。

まあ、メメシアはいい顔をしていなかったけどさ・・・


「あら、魔法使いさんまでいらしたの?」


っと、召使いに連れてこられた綺麗なドレスを身にまとった貴婦人が、あたしに妙に興味があるようで、突然話しかけてきたのさ。


「わたくし、サビス卿の妻のフリダイアと申します。昔から魔法使いという職業に憧れていたのです。ぜひ、お話をお聞かせくださいませ」


「おいおい、今日は勇者様をもてなしているのだぞ」


「それでしたら、魔法使いさんはわたくしと一緒に、わたくしの部屋でお話ししましょ?」


わがままなお方だな~・・・

だが、あたしゃ~嫌いじゃないねぇ。


「奥様がそうおっしゃるなら~・・・」


「そうよ。魔法使いさんはわたくしがおもてなし致しますわ」


そう言って、あたしはフリダイアさんに連れられて行く事になったのだわさ。


「マジョリン。行く前に一言いいですか?」


「な、なんだいメメシア・・・?」


「飲み過ぎはいけませんよ」


「は・・は~い・・・」


メメシアが禁酒について、カタリはじめる前に、そそくさと部屋を出たのだわさ。



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