#54

あまりにキジマさんが怖がるので、運を使おうと思う。


とりあえず1匹だけ出して簡単に倒す。ほら、怖くないよ~。作戦だ。


『弱いモンスター、1匹だけ出ろ!』とムニャムニャ祈る。




木の洞を通って3階終わりの階段にショートカットして、階段を降り4階に到着。


3階と違い、2階と同じ平原だった。


もしかしたらまたショートカットがあるのかもしれないな。


そう思いながら進んでると、遠くから何かが近づいてきてるのが判った。


あれが願った『弱いモンスター』なんだろうか?




「モンスターが来ます!」




カンダさんが注意を促す。


その声を聞き、キジマさんは短い悲鳴をあげてコタニさんにしがみ付いていた。


……それじゃあコタニさんが戦闘できないでしょうが。


結局このモンスターは、俺とカンダさんで倒す事になりそうだ。




モンスターは段々と大きくなっていく。近づいてきてるから当たり前なのだが。


しかし、ちょっと大きくないかい? これで弱い敵なの?




そのモンスターは黒く平たい3mはあるような大きさの、、、




ゴキブリだった……。




怖い!!! これは生理的に受け付けない!!!




「このモンスターは、体表に油を纏っています! 武器での攻撃は効きにくいです!


 しかし、火魔法やたいまつの火で簡単に燃えて倒せます!


 福田さん、たいまつの用意を!」




いやいや、そう言われても!


巨大なゴキブリが迫ってくる。これだけで恐怖ですよ!!


慌ててアイテムボックスからたいまつを探すが、出てこない!


俺はドラ○もんかよ!!


なんとかたいまつを取り出したが、当然火は付いていない。


丸い石とナイフを出さなくちゃ!


たいまつをコタニさんに渡そうとしたが、既にキジマさんと二人で逃げていた……。


卑怯だぞ! 逃げるなら俺も誘えよ!


しょうがないので、たいまつを小脇に抱えて丸い石とナイフを取り出す。


人間、慌ててるとダメですね。火がつきません……。


モンスターはもう目前まで迫ってきていた!


チビて使い物にならなくなった丸い石を、やけくそでモンスターに投げつける。


そして代わりの丸い石を取り出そうとしたその時、奇跡は起きた。


俺の投げた丸い石は、モンスターに当たる事無く手前にあった地面の石に当たって火種を出したのだ!


それが運良くモンスターに着火し、倒してしまった。


勢い良く燃えたモンスターは、すぐに消えてしまい、ドロップアイテムを残した。




どれくらいの価値があるモノか知りませんが、あのモンスターのドロップなんか要りません!!


カンダさんが拾おうとしたので、触るな! えんがちょだぞ!!と叫んでしまったよ。




キジマさんじゃないけどさ、虫系のモンスターは俺もNGにしておこう……。




早速俺は『虫系のモンスターは出るな! 出るなよ! 出たらアサイさんの所に送るからな!!』と強めに祈る!




キジマさんコタニさんと合流して、モンスターが出ない間にさっさと5階への階段を探して降りた。


5階も虫系だったら、このダンジョン崩壊しろ!と願うからな!!




「5階はまた迷路ですね。出てくるモンスターは3階と同じですが、強くなっていますので注意してください」




カンダさんの情報だ。


良かった。虫系は終わりなようだ。


これでキジマさんも復活するだろうし、安心だな。


そう思いキジマさんを見ると、青白い顔でブツブツと何かを言っている。




「虫虫虫虫ムシムシムシムシムシ無視無視無視蒸し蒸し蒸し無死無死無死蟲蟲蟲・・・」




怖いわっ!!


コタニさんは手を握られているが、強く握られているようで痛いっス!と言いながら手を振り回している。


こりゃキジマさんが復活するまで、この階段で休憩だな……。


全然レベルが上がらないよ……。

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