#50

結局残りの12戦中11戦は俺の勝ちという結果に終わった。


さすがに頭にきたのか。対面のヤツが騒ぎ出した。




「てめぇ! イカサマしやがったな!!」


「してないし、どうやってイカサマしたんだよ?」


「うるせぇ! 俺達が全員絵札の時に、何でお前がジョーカーなんだよ?! おかしいだろうが!!」




そうなのだ。こいつらがQ・K・Qとなった時に、俺にはジョーカーが来ていた。


Aが来るかなと思っていたが、既に4枚出ていたのでジョーカーの登場となったのだ。




「だ~か~ら~、どうやったって聞いてるんだろ?


 今回、最初に1枚取ると言ったのはお前だぞ?


 上から4枚ごとに良いカードを挟んだとしても順番が変わってるじゃないか?


 それに8とか10とかで勝った時もあったぞ? それで勝つには全部のカードを把握してないとダメだろ?


 ついでに言えば、お前にAが出て勝った時もあるじゃないか?」




そう! 全勝は止めたのだ。


中盤でAが1枚残ってる時に、1度だけ対面のヤツを勝たしてやった。


強力なカードを潰したいと思ったので、俺はQで他の2人には10にしてやった。


作戦なのか他の2人は俺を見ながら上乗せしてきた。まるで俺はジョーカーだぞと言わないばかりに。


本当は、「儲けるチャンスだぞ? ほら上乗せしなよ」と考えてたんだろう。


1枚も上乗せせずに速攻で降りてやったけどな。




対面のヤツは反論を考えているが、思い浮かばないようだ。


だから俺が言ってやった。




「そこまでイカサマと言うのであればしょうがない。


 別室ではカードの動きが判るんだろ? そっちに行って調べようじゃないか。


 ついでに4人の動向も調べてもらおう。他の2人が仲間でグルになってたと言われても困るからな。


 たしかこの町ではギャンブルでのイカサマや不正は犯罪扱いだったよな。警察も呼んで調べてもらおう」




この町には警察という機能があったのだ。


この間、町長がシキメを連れて行った時に周辺に居た人達がソレ。


王都からの派遣で、町長だろうと貴族だろうと逮捕出来る権限を持っているらしい。


そこには買収も通じないそうで、ソレを実行しようとしたバカ貴族は反逆罪扱いで死刑になったという話だ。


なかなかに恐ろしい。だが、一般人も貴族も同等に扱うのには好感が持てる。




その警察を呼ぼうと提案してやった。


さすがにこれには対面のヤツも顔色を悪くした。


左右の二人なんか既に青白い顔をしている。




さすがにこれ以上は可哀相かな~と思い、ここで手打ちにしようじゃないか?と提案しかけたら支配人っぽい人がやってきた。




「お話は全て聞かせてもらいました。


 既に警察は呼んでありますので、全員別室へ移動をお願いします」


「はい、判りました。支配人さんですか?」


「貴方はこの店は初めてのようですね。私はこの店の支配人のセノと申します」


「これはご丁寧に。自分は福田です。では、移動しましょうか」




セノ支配人の後ろには屈強な男達が4人待機していた。


歯向かうなら無理やりにでも連れて行くんだろう。抵抗する気はないけどさ。


他の3人はうなだれた様子でついて来た。




取調べは別室で行われた。


ここならカードの情報やプレイヤーの動きが見れるからだ。


そう思ってたけど、実はどうやってるのかしらないが、録画までされているそうだ!


すげーな! 魔法と技術の組み合わせで前世のセキュリティを再現してる感じだよ!


自動車とか無い事実がウソみたいだわ。と、言ったら王都には動物を使わない馬車があると言われた。それって車だよね?!


車か~。金貯めて買いたいな~。




おっと話が逸れた。


とにかく、俺達の勝負は全て把握出来てるようだ。


1.シャッフルが終わった時点でのカードの並び順。


 これは不正は認められないとの事。


 最初に取った1枚が『2』であり、取らなければ左のプレイヤーに有利だった事が判った。


 そして最初のカードを取ると提案したのは、親であった俺ではなく体面のヤツだった事も録画から証明された。


2.掛け金の動き


 これについても俺は無罪。


 他の3人は知らなかったが、15万しか持ってなかった事が判明したからだ。


 それに対面のヤツがAだった時に上乗せせずに降りたのも、よくある事と処理された。


 ただ、他の3人については怪しいとの判断。


3.仲間へのなんらかの合図


 これも俺は無罪。


 そもそも味方どころか知り合いもいないテーブル。一応調べたが不審な点は無いとの事。


 それよりも他の3人。目の動きにチェックが入ってた。


 どうも、『A<俺』の時は右、『A>俺』の時は左を見ながら瞬きをして知らせてたと判断された。


2と3により、3人はグルで不正を働いていた可能性が高いという認識になったようだ。


3人は証拠映像とデータと共に、警察に連れて行かれた。




セノ支配人さんに聞いた所、俺の儲けた金は返さなくて良いらしい。もし負けてたなら元金までは返すそうだけど。


警察に詳しいようなので、ついでに聞いてみた。




「あの3人なんですが、もし有罪ならどうなるのでしょう?」


「そうですね・・・共謀しての不正なので本来なら死刑か鉱山送りですね。


 今回は不正したのに負けているので、鉱山送りでしょう。20年くらいになると思いますよ」




怖いよっ!!


不正なんかしないけど、なんか怖い!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る