#10

木の枝の代金10万円を受け取ると、やっとウエダさんが復活した。




「安く売ってもらって、すまねぇな、師匠」


「師匠は止めろって言ってるだろ?!」


「じゃあキング」


「止めろ~~っ!!」


「さあ、どっちの呼び名がいい? どっちかに決めないと、一生『キング師匠』って呼ぶぞ?!」


「くっ、卑怯な! ……じゃ、じゃあ、師匠で」


「みんな、今日から福田さんの事は師匠って呼ぶように!」


「師匠さん、よろしくお願いしますね」


「師匠兄ちゃん、よろしく!」




ウエダ一家がヒドイ! イジメだ! 俺の癒しはポチだけだよ……。




『師匠?』


「……ポチよ、俺は福田哲司だ」


『てっちゃんだねー!』


「……それでいいよ」


『てっちゃーん!!』




まだマシだと思おう。






昼飯をご馳走になった後、おもむろにウエダさんが言い出した。




「さ、師匠。軍資金も出来た事だし、カジノの町に行くか」


「えっ? 何しに?」


「決まってるだろ? ギャンブルだよ」


「そんな事してないで、家族孝行しろよ」


「昼からは行っても良いって、結婚する時に決めてるんだよ」


「奥さん、それでいいんですか?!」


「えぇ、旦那がいない方が売り上げが上がりますし(笑)」




そりゃオッサンが相手するより美人の方が良いもんな。


たくましい奥さんだな。ある意味怖いね……。




結局カジノの町に行く事になった。


俺としては村を散策したかったんだけどなぁ。




「師匠兄ちゃん、ポチちゃんと遊んでるから。お土産よろしくね~!」


『遊ぶー! てっちゃーん、お土産ー!』


「はいはい、お土産ね、買ってくるよ」


「だめだよ! 当ててきて!!」


『当ててー!』


「ウエダさんよ、ちょっと教育について話そうか」




カジノの町に着くまで、俺はウエダさんに説教した。






カジノの町は相変わらず盛況だ。


と言っても昨日の状態しか知らないんだけど。


今日は20万円ほど換金する事にした。




「で、今日は何をするんだ?」


「とりあえずお土産を手に入れようぜ。金が無くなってからじゃ遅いからな。」


「まぁそうだけどさ。で? どこで?」


「ガチャに決まってるだろ?」


「……またガチャか~」


「何だよ? イヤなのか?」


「いや、何か申し訳ないし、変な呼ばれ方するし」


「気にすんなって! インチキしてる訳じゃねぇんだからさ!」


「まぁそうだけどさぁ……」


「いいからいいから! 行こうぜ!」




という訳で、昨日の店にまた来てしまった。


入り口に居た店員が、俺の顔を見るなり店の中に走っていったぞ?


店に入ると、目の前にには支配人のエンドウさんが待ち構えていた……。




「いらっしゃいませ、福田様!」


「あっ、どうも……」


「当然、ガチャをやられますね?」


「はっ、はい。そうですね」


「ではこちらへどうぞ」




どのガチャをするとか指定してないのに……。




たどり着いた場所には直径6mもある超巨大なガラガラが!!




「昨日から突貫で作らせたこの赤色のガチャは、福田様専用ガチャでございます!!」




俺は大佐じゃないぞ!!

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