ダメな人生だったから、今度こそはと思ったのに神様からのギフトが重すぎます!

根本鈴子

第1話 最悪の誕生日

 皆は、16歳って聞いたら、普通はキラキラした答えを出すと思う。

 大人の仲間入り間近とか、でもまだまだ少女だから素敵な高校生として生活したいとか……。

 まあ、どんな高校生かはわからないけれど。でも、間違いないのは、希望を持っている人が結構いるってこと。責任を負うのも、自由のためには仕方がないって思える。それに、希望がないとか言っても、何だかんだ生きていられる今がある。


 それって、凄く素晴らしいんじゃないかな。……なんて、私は今までの走馬灯を見ながら思っていた。

 え? 走馬灯が何かって?

 そんなの決まってるじゃない。

 私は今日、誕生日で、今まさに死に向かっている。

 好きで命を絶ったわけじゃない。強制的に絶たれたのだから、仕方がない。

 なんで? どうしてこうなった?


 確か、私はいつものように家に帰って、お父さんとお母さんと、きょうお兄ちゃんと弟の美鶴みつると一緒にケーキを囲んでいた。

 ケーキには1と6のロウソクが立っていて、火を着けようとした時、あの殺人鬼はやってきた。

 普通の人のふりをして「配達のために来ました」なんて嘘ついて。

 まずはお母さんが殺された。

 悲鳴を上げることもなく、すぐに死んでしまったのだろう。

 だから殺人鬼の男に気づくのが遅れた。

 いつまで待っても食卓に現れないお母さん。その代わり、あの男がやってきた。そして皆事態が呑み込めない中、いち早く動いたのは鏡お兄ちゃんだった。

 美鶴を外に逃がそうとドアを開けて美鶴を、そして私を部屋から出してくれた。そして、その直後、殺人鬼に殺された。赤い飛沫が、曇りガラスの向こう側に張り付いた。

 凄まじい音がして、お父さんが殺人鬼と争っているのがわかった。

 美鶴は怖がって、動けなくなってしまった。

 私はそんな美鶴を抱きしめて、抱えて、玄関に走った。

 でも亡くなってしまった母に躓き、転んでしまって、美鶴はコロコロと玄関を転がった。

 その間に殺人鬼はお父さんをあっという間に殺してしまって、私の背後に迫っていた……。

 私は美鶴に向かって声を上げた。

「早く逃げな! 大丈夫! 姉ちゃんなら大丈夫だから! あんたは強い子でしょ! 行きなさい! 行け……っ!」

 美鶴は目をぎゅっと閉じて玄関のドアを開けて外に出ていった。

 逆光で見えなかったけれど、きっと、外に行ってくれた。

 私は「やればできるじゃん」と呟いて、次の瞬間、痛みと、走馬灯。


――どうして私は、家族を殺されて自分まで殺されているのだろう。


 おかしいなぁ。変だなぁ。

 痛い。痛いなぁ……っ!

 何が起きたのかは、正直わからない。ただ、気づけば視界が真っ赤で、身体が痛みで悲鳴を上げていた。

 美鶴以外が殺されたのも、事実。

 それだけは確か。

 手を伸ばす。でも、その手は何も掴まない。


 あ。

 今、視界が真っ暗になって、音が聞こえなくなった。

 痛みも、消えた。

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