5.現る魔物
「レベルが上がるかわからないけどステータスは一応上げておこう」
誰しもが利用出来る公共ダンジョンへ来た僕はいつものように周りの人達の流れに合わせて中に入っていく。
そこで初めて気づいたのだが僕の周りにいるほとんどの人が二人以上で行動している。
それを見ているとなんだか自分が可哀想なやつに思えてくるがそのうち出来るだろうと考えそれ以上何も思わないようにした。
毎度のことだが入口付近はやはり人が多い。
入口に人が多いのはそこまで強力な魔物はいないが入口が近いことで魔石等の運搬が楽になるからなのだろう。
最初の頃は僕も同じようなことをしようと考えていたがそもそも魔石を楽に運搬することが目的なのではなく強くなるのが目的なのでこうして少しだけ奥に行って魔物を狩っている。
しかし前回はそれであんなことになってしまったのだが。
でも前回のおかげでこれまでよりも多少は強くなった。
ならこれまで十分に戦えなかった魔物とも対峙することが出来るはずだ。
ということで今回は足元に気をつけながら奥へと進んでいっている。
少し歩いていると下に繋がる階段があった。
本来はこれでどんどんと下の階層へと降りていくのだが前回はちょっとした事故で五階層に行ってしまった。
とうとう二階層についた僕だが少し緊張してきた。
今まで一階層で戦ってきたから僕にとって二階層は未知なる世界。何が起こるかも何がいるのかもわからない。
そう考えると不安だ。
でも僕は一度、死を覚悟するほどの危機に陥った。
二階層なんてもはや何かを感じる場所でもない。きっとそのはずだ。
「出てきたな」
長い二階層の廊下を歩いていると目の前に六体ほどのゴブリンが集まっていた。
そのゴブリン達は一階層にいる個体と何ら変わりないように見えるがしかしなんとなくわかる。ゴブリンも僕と同様強くなっていることを。
僕は剣を鞘から抜き取りゴブリンの方を見つめる。
するとゴブリンもこちらに気づいたようで理解出来ない声を出しながら向かってくる。
そんなゴブリン達に対して僕は走り出した。
なんだか体が軽くなっている気がする。これもステータスの上昇のおかげなのか?
何にせよこれなら簡単に倒せるはず!
剣を一振り、また一振り、さらに一振り、その動作を繰り返す。
ゴブリンの動きがまるで遅くなっているように見える。
これまで戦いにおいて余裕が出来ることはなかったのに今ではもうこんなにも簡単に倒せるようになった。
六体もいたはずのゴブリンは気づけば魔石を落とし消滅していた。
このまま二階層の敵を倒していけばあの五階層に自力で行けるようになるかもしれない。
ならもっともっと魔物を狩ってステータスを上げるしかない!!
僕は落ちている魔石をリュックに入れたあとさきを急いで走り出した。
***
「はぁ……はぁ……」
ダンジョンに入ってからどれだけの時間が経過したかはわからない。もしかしたら一日経ったかもしれないし一時間も経っていないかもしれない。
ただその間、あまりにも楽しくなりすぎて休むことすら忘れ戦っていた。それのせいで今は少し息がきれ疲れが遅れて感じてきている。
ひとまずリュックをおろし近くの壁を背もたれにして地面に座り込んだ。
さてお待ちかねのステータス確認の時間だ。
スキルはまだ解放することが出来ていないがステータスは相当上がっているはずだ。
確か前までのステータスが――
================
名前:エト・アルハドール
レベル:1
筋力:102
体力:98
耐性:87
敏捷:66
スキル
*
*未習得の為、表示不可
================
というような感じだった。
そして今は――
================
名前:エト・アルハドール
レベル:1
筋力:143
体力:121
耐性:112
敏捷:70
スキル
*
*未習得の為、表示不可
================
相当な時間、二階層の魔物と戦っていたおかげで中々にステータスが上昇している。
それでもやはりレベルは1のままだ。
一体どうやったら上がるんだ? と思いながら僕はステータスパネルを閉じる。
戦いに集中しすぎて今まで感じていなかったがかなりお腹が空いてきている。
一度帰るか。ギルドに行ってその途中で店にでも。
その時僕は今朝の出来事を思い出す。
そう、今僕のリュックの中にはリーシアさんから貰った作り置きがあるということを。
僕はすぐにリュックを開け袋を取り出す。
そして中を開けるとさらに何かが紙で包まれている。
何かと思い紙を開けてみると中にはかなりの数の干し肉が入っていた。
「気が利くなぁ、リーシアさんは」
干し肉は僕の好きな食べ物の中でも上位に入る食べ物だ。
だからそれが入っていたというのは非常に嬉しい。僕はすぐに一つを手に取り口へ運ぶ。
噛む度に味が口に広がってくせになる。
魔物を狩っていた時の様に夢中に干し肉を食べていると少し奥から物音がしてくる。
その音の正体が気になった僕はひとつ干し肉を咥えたあと再び紙に包んでリュックの中に戻す。
そしてリュックを背負って立ち上がり奥へと進みだした。
薄暗い中を歩いていくとそこには下に繋がる階段があった。
これで三階層に進めるのか!
僕はさらなる未知の世界に気を引き締めながらもワクワクでいっぱいだった。
期待を胸に階段を降りていく。
三階層に辿り着くとそこは今までとは違いやけにひらけた場所だった。
辺りを見渡していると奥の暗闇から聞いたこともない何者かの雄叫びが聞こえてきた。
さらには足音まで聞こえてくる。
「…………」
刻々と近づいてくる足音を聞く度になぜか思い出してしまう、恐怖を。
何度決意したって決別することは出来ない。
でも恐怖に堕ちてばかりでは生きてはいけない。
だから――
「アウォォォォォン!!!!」
僕は剣を鞘から取り出し持ち手を強く握る。
そして暗闇から徐々にその正体が見え始めた。
――恐怖を押し殺してここに奮い立つ。それが今の僕に出来る生き方なんだ。
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