お前らって読者のことを考えてないよな。

 そもそもさ、お前らの小説って謎の読みにくさがあるんだよな。それがもう悪いんだ。

 読者のことを考えてないからそうなるんだよ。


 なんだ? 今反論しようとしたのか?

 絶対考えてないって!

 考えてるとしたらもっとマシな作品になるはずだろ! 考えててアレだったら考えが浅すぎなんだよ!

 読者の何を考えてないかと言うと、つまらないと思われることへのリスクだ。お前らって本当にそれを考えてなくて、自分がやりたいことへの吟味をしてなくて、思いついた通りにストレートにやってやがる。

 リスクを考えてないんだから当然前もってケアをしてない。だから読みにくさに溢れてて読んだ時に「なんだこれ……」ってなるんだよ!


 例えば、初手でトバすやつがその典型だ。これやるやつ本当に多いからな。

 初手から説明のオンパレードだったり、初手から文章をガチガチに飾ってきたり、何を考えてんだ!? 読みにくいったらありゃしねえわ!

 読んでて思うが、特に物語上の狙いが無いんなら初手は状況の理解をさせることに注力しろよ! まだ理解させるための文章を書いてないうちに勝手に盛り上がってんじゃねえ!

『ぼくは!』って感じでガツガツしやがって、ちゃんと読者のことを考えろ! 本気で読みにくいんだから!


 序盤だけの話じゃなくてマジで多いんだよな、そういう『ぼくは!』って言いたげな自己主張激しいやつ。いい加減にしておけよ!

「ぼくは、文章がうまいです!」

「ぼくは、発想がすごいです!」

「ぼくは、難解な話を書けます!」

「ぼくは、奇抜な話を書けます!」

 みたいなのが出過ぎてるヤツだよ。

 辞めろ、その『ぼくは!』ってスタイル!

 ガツガツしすぎて引くわ! 得意なことをしっかり出来てるのは良いが、得意なことをやってる自分を見せたすぎだろ! そういう作品を読んでる時「あ、出た。『ぼくは!』って顔してるわ」って思っちまうんだよな!

 自分の長所を活かすこと自体は大事なことなんだが『ぼくは!』のスタイルが良くねえんだよ! やりたいことに偏って作品全体が悪くなる! 自分のことばっかりで、読者のことを考えてない!

『ぼくは!』ってしたら作品が面白くなると思ってんじゃねーぞ! ちゃんと読者のことを考えろ!


 今のは読者のことを考えてないタイプの一例だが、マジで読者のことをろくに考えてないだろって作品が多いんだからな!

 読者につまらないと思われるリスクを考えてない。言うてもアマチュアだから仕方ないというか、つまらないと思われるリスクを考える編集が付いてるプロと違うから。

 でも俺は我慢ならねえよ! そこを考えてないからお前らはパッとしてないんだわ! お前らは俺が楽しめる作品を書くためにちゃんと考えろ!

 これはダメなんじゃないかとか、もっと良い方法があるんじゃないかとか、さらにはこうしたらもっと面白くなるんじゃないかとか考えろよ!? 俺のために!


 つまらないんじゃないかと怯えながら書けって言ってるんじゃねーぞ。批判を浴びに行けと指示してる訳でもない。

 いいか?

『恋人にマフラーを編んでる時の気持ちで文章を書け』だ!

 恋人にマフラーを編む時の気持ちを考えてみろよ。「身につけた時に肌がチクチクするかもしれないからなんとかしよう」とか考えるだろ? 他にも「こうするともっと暖かくなるかも」「色も柄も恋人に合うものにしたいな」とかも考えるはずだ。

 だって愛しの恋人だから、そこまで気を配るんだよ!


 お前らもそれと同じことをしろ。読者を恋人だと思って、プレゼントを用意するつもりで執筆しろよ!

 そうすれば前向きに『つまらないと思われるリスク』を考えることができるだろ?

「ここでこのコテコテの文章は読みにくいからちょっと軽めにしよう」

「こういうストーリーの構成の方が読者は読んでてストレスが無いかも」

「情報が多くて読者がついてこれないかもしれないから、情報を小出しにしつつ、合間合間に分かりやすく説明を入れるべきかも」

 なんて風に、恋人を想う時のようなドキドキした気持ちで考えろ! そうすりゃ作品がもっと良いものに仕上がるだろ! さらに言えば「こうするともっと面白くなるかも」って方向に考えを発展させられるんだからな!


 そういう意識で力を込めて仕上げた作品は、「つまらないんじゃないかな」という暗い感情ではなく、「きっと喜んで貰えるぞ!」とウキウキした気持ちで作品を出せるんだよ!

 というか実際、お前ら書き手と読み手は恋人みたいなものだからな。

 書き手は読み手のために良い作品を書いて、読み手は喜ぶ! 読み手は感謝の気持ちで作品に評価や感想を送って、書き手は喜ぶ!

 いや、これはもう、純愛カップルだろ!


 でも、中にはいるよな。

 それができないやつ。

 というか、それができないことを書こうとしてるやつ。読者ウケとかではなく、自分のやりたいことや表現したいことのために書いてるから、必要であれば面白さを犠牲にするしかないやつな!?

 そのスタンスを否定はしないが、スタンスを言い訳にしてパッとしない作品を書きやがるのが気に入らない! そういうやつってアレだよな? 自分こそが真っ直ぐで正しい作家だとか思ってる節があるよな! 安易に読者に媚びたらダメだーなんて思ってな!? 自分を貫いてこそ、とか思ってな!? お前の作品が面白くないって話なんだわ!

 別に何を書きたいのかは知らないが、ただひとつだけ意識をしろ。

 お前みたいなやつほど読者に感謝しておけよ!

 自分のやりたいことをやってるだけの、言わば自分勝手な作品に、それでも着いてきてくれる読者に最大限の感謝をしろ!


 自分のやりたいことをやれればいいみたいに振舞ってるが、なんだかんだお前らは見られたいからアカウントを作成して投稿してんだろ? 読まれたい欲求があるんだろ?

 じゃあすべきことは、欲求を満たしてくれる読者への感謝なんだよ!

「いつもいつも、僕の自由にやってる作品に目を通してくださって、本当にありがとうございます〜! 自分のために書いてるだけなのに読んでくださって感謝しかありません! せめて僕も最大限読みやすく楽しめるように書くので、どうか、どうか、よろしくお願いします〜!」って気持ちを常に持て!

 その気持ちでプレゼントを用意する意識を持つんだよ。そうじゃないとお前、ただでさえ俺の読む気が起きないんだから!


 自分のやりたいことをやる系のお前らは、まずプロフが良くねえよ! そういう系ってさ、「自分のために書いてます」とか「繊細で美しい文章が好きです」とか言ってるだろ?

 違うって! お前みたいなやつはまず一言目に「作品に目を通してくださってありがとうございます」で、二言目には「今度ともどうかよろしくお願いします」だからな! そういうところから意識を変えていけよ! 例で挙げたようなプロフはその後で書け!

 冷たいことを言うが、作品を面白くする戦略として感謝するんだぞ!


 ここまで読んで、お前らの中には反論とかが色々浮かんでるんじゃねーか? じゃあ聞くが実際、これに目を通してる書き手は、読者に感謝をしているのか? まずそこに関して胸に手を当てて考えてみろ。

 感謝してるって言うんなら、ちゃんとストレスになりそうな要因には気を配りなよ! そんでもっと面白くできないかって考えろ! それは真心と感謝の気持ちでだ!

 まぁ当然、全てのストレス要因を排除なんて現実的じゃないよな。だが全力で考えて、それでもダメな部分があるんなら、それでもいいんだ。愛しの人が真心を込めて全力で作ったものはなんでも嬉しいんだから! それに意識しないよりは格段に良くなってるだろうし。

 そんなことするほど読み手に感謝してないってやつは知らん。少なくとも気を配ってない作品なんて俺は読んでてキツいんだよな。


 感謝してるんなら、しっかりと俺のために頭を働かせるんだな!

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