第26話 勇者
神皇国デラミス。転生神メルフィーナを崇拝するリンネ教団の聖地。世界最大の宗教組織であり、3万人もの信者である国民を有する宗教国家である。約一年前、デラミスの巫女により、この地に4人の勇者が異世界から召喚された。その勇者のリーダー格である
「刀哉、こんなところで何してるの?」
「ん? ああ、刹那か」
刀哉が振り向くと、そこには幼少からの幼馴染である
「コレットが女神様に祈りを捧げている最中なんだ。邪魔者が入らないように警備中だよ」
清廉を体現した刹那に対し、刀哉は良い意味でも悪い意味でも、純真という言葉が当てはまる。刹那までとはいかないが、彼も学業は優秀、スポーツもできる秀才系。また、正義感が強く、誰にでも等しく優しく接することから、どこに行っても人気者だ。おまけに容姿はアイドル並みというイケメンなのだ。彼は生まれてこの方挫折したことがなく、周囲の者は常に刀哉を中心にしていた。そういった環境から、刀哉は人を疑うことを知らず、人は皆善人だと素で思っている。それが彼の良いところと言えばそれまでだが、危うい一面も併せ持っているのである。
「今日も祈っているのね、コレット…… そろそろ私達がこの世界に召喚されて1年、結局あの女神様に会えたのは召喚された時だけだったわね」
「あの時は驚いたな。放課後のクラスに残ってた俺達4人が行き成り別世界に飛ばされたんだ。しかも目の前には女神様さ」
「その割には刀哉、目を輝かせて嬉しそうだったじゃない?」
「当たり前さ! 女神様が魔王を倒す為に俺達を必要としているんだ、これほど光栄なことはないじゃないか!」
「そう、ね……」
当然のことのように刀哉は答える。その目に迷いはない。だからこそ刹那は危惧する。
(確かに、人の為になる尊い行い。今はまだ上手くいっているからいい。でも、これには私達の命も懸っているのよ? 本当に危なくなった時、刀哉、貴方は冷静に立ち回れるの?)
挫折を知らない刀哉が壁に行き当たった時、果たして自分達は生き残ることができるのか。刹那は世界と自分達の命を天秤にかける。せめて、この幼馴染と親友達の為に、自分だけでも最善の手を打てるように……
―――ピカッ!
瞬間、コレットが祈りを捧げる大聖堂から強烈な光が放たれる。
「な、何!?」
「あそこは…… 大聖堂! コレットが何かしたのか!?」
「刀哉、急いで行くわよ」
「ああ!」
異世界の勇者二人は大聖堂へ急行する。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
―――デラミス大聖堂。
教皇が住まう宮殿の中央に建造された、世界最大の聖堂である。普段は聖地巡礼に訪れた信者で溢れるのだが、夕刻からは立ち入りが禁止される。時刻は深夜、誰もいない筈である大聖堂に唯一人、銀髪の少女が祈りを捧げている。
「メルフィーナ様、どうか、もう一度お姿を……」
彼女こそ、デラミスの巫女、コレットであった。彼女が巫女を継いだのは10歳のとき。それからというもの、彼女は一日も欠かさずに祈りを捧げてる。大聖堂への立ち入り禁止は、彼女の祈りを邪魔させない為のものだ。それ程までに、デラミスにとってメルフィーナの神託は重要なものなのだ。
「神託を……」
時刻が12を指そうとした時、祭壇の大女神像が徐々に輝き出す。その光はやがて女神像全体を覆い、荘厳としていた翼は光を放ちながら羽ばたき、神々しい天使の姿を形作っていく。
「メ、メルフィーナ様!」
あまりの嬉しさに平静を失うコレット。そんな彼女に天使は優しく微笑む。
「お久しぶりですね、コレット。勇者を召喚して以来ですから、一年振りでしょうか?」
「は、はい」
コレットは緊張する。この国において、デラミスの巫女である彼女は特別階級であり、教皇に次ぐ権力者である。大人数の信者の前に立つことも少なくない。普段は冷静な彼女にとって珍しい姿だ。
「お元気そうで何よりです。さて、本日は勇者達の状況を確認しに参りました。魔王復活の日は近いのです。順調に成長していますか?」
「そ、それでしたら、こちらを御覧ください」
コレットは懐から青く小さなオーブを取り出す。
記録の宝珠。周囲の音声、映像、はたまたウィンドウに表示されるステータスまで保存するA級アイテム。神託を保管する為にコレットが所有する、途轍もなく貴重な代物だ。
「どれ、失礼しますね」
天使はオーブに手をかざす。
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神埼刀哉 18歳 男 人間 剣聖
レベル:53
称号 :異世界の勇者
HP :753/753
MP :431/431
筋力 :265
耐久 :258
敏捷 :269
魔力 :264
幸運 :530(+160)
スキル:絶対福音(固有スキル)
剣術(S級)
二刀流(C級)
白魔法(C級)
軍団指揮(B級)
豪運(B級)
補助効果:光妖精の加護
隠蔽(B級)
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志賀刹那 18歳 女 人間 侍
レベル:52
称号 :異世界の勇者
HP :477/477
MP :318/318
筋力 :361
耐久 :219
敏捷 :573(+160)
魔力 :155
幸運 :214
スキル:斬鉄権(固有スキル)
剣術(A級)
心眼(B級)
天歩(B級)
危険察知(B級)
鋭敏(B級)
補助効果:風妖精の加護
隠蔽(B級)
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水丘奈々 18歳 女 人間 調教師
レベル:48
称号 :異世界の勇者
HP :294/294
MP :589/589
筋力 :143
耐久 :493(+160)
敏捷 :95
魔力 :347
幸運 :191
スキル:動物会話(固有スキル)
青魔法(B級)
白魔法(B級)
調教(A級)
交友(C級)
鉄壁(B級)
補助効果:水妖精の加護
隠蔽(B級)
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黒宮雅 18歳 女 人間 黒魔導士
レベル:53
称号 :異世界の勇者
HP :270/270
MP :810/810
筋力 :105
耐久 :211
敏捷 :204
魔力 :794(+320)
幸運 :156
スキル:並列思考(固有スキル)
黒魔法(A級)
魔力温存(B級)
魔力察知(C級)
隠蔽(B級)
強魔(A級)
補助効果:闇妖精の加護
隠蔽(B級)
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「……順調に進んでいるようですね」
「ありがとうございます!」
コレットは感激し、気持ちを昂らせながら答える。
「メルフィーナ様、どうか、神託をお授けください」
「……西大陸の帝国より、邪悪な気配を感じます。勇者はそちらに向かわせなさい。決して、パーズには向かわせないように」
「承知致しました!」
天使を模った光は満足げに頷き、ゆっくりと姿を消していく。
「くれぐれもよろしく頼みましたよ、巫女よ……」
コレットが光が完全に消え去ったとの確認したのと同時に、大聖堂の扉が勢い良く開けられる。
「コレット、大丈夫か!?」
神埼刀哉を先頭に、刹那、奈々、雅と勇者全員が集結していた。コレットは振り返り、高らかに宣言する。
「神託が下りました!」
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