第14話 第十回イベント-終幕

道路を一台の車が走っている。



「どうだ?」



後部座席に座っている男がタブレットの向こうにいる女に尋ねかける。



「ホントみたいだね。色は違えどそっくりだよ」



タブレットの向こうにいる女が答える。



「プライマルとの接触は?」



「あったけど戦闘行為には発展せず。カガリ君は彼のことを気に入ったみたいだね。確か、エリアルヘロンだったかな」



「プレイヤーログとアンチチートは?」



「チートのかけらもない純真プレイヤーだったってさ。てかチートに関してはあんたの彼女ちゃんの方が、、、、」



「プレイヤーログは?」



男が強引に遮る。



何か知られたくないことでもあるのだろうか。



「確認したけど、始めて数分で赤蛇撃破。カガリより早い段階で撃破してる」



「レッドリストにエリアルヘロンなんて載ってないだろ?」



「当たり前。彼、始めてまだ数日よ?」



「シンギュラリティは、絶対的な強さを持つのはカガリだけで良い。イベントを終了させろ。対策を講じるぞ」



「え?良いの?」



「良い!はやくしろ!」



⭐️⭐️⭐️


俺達はそれぞれのアーマードスーツから降りた。



「ハナサギ〜!」



ミネー達が走ってくる。



ユカも一緒だ。



「ミネー、みんな」



「ハナサギ、お前のエリアルヘロンどうなってんだ?」



「え?なんか違った?」



「いや、ウィングが赫くなってたからさ。なんかそういう装備があんのかなって、、、、」



「え、そんな装備あるの?」



「、、、、マジで?」



「大マジ」



俺とユカ達の間に沈黙が流れる。



「ま、なんでも良いじゃん。二位入賞出来たんだし」



すぐにその沈黙をヴァリュートが破る。



「それもそうね」



ユカが笑う。



「いやー、いざとなると感慨深いな。俺たちのグッズが出るんだぜ?」



ヨッシーの言葉にアリスが驚く。



「ほんとだ!すっかり忘れてたけど、私たちグッズになるんじゃん!」



エリアルヘロンがグッズに?あー、ショップに置いてあったぬいぐるみとかの類か。



その時、アナウンスがあった。



《予定より早く第十回イベントを終了いたします。それでは順位を発表いたします。


一位プライマルクラン、二位ピースコンパス、三位ブルーファイターズとなりました。


続きまして景品の発表にうつります。


一位のプライマルクランにグッズ発売の権利、アップデート先行体験、ゲーム内通貨三千万マニーを贈呈致します。


続いて二位のピースコンパスにグッズ発売の権利、ゲーム内通貨二千万マニーを贈呈致します》



三位のブルーファイターズの景品の発表が終わった後、



《これをもちまして第十回イベントを終了いたします。みなさまの素敵なスペースウォーリャーズライフを願っております》



こうして俺の初めてのイベントは幕を下ろした。



はー、楽しかった。はじめはハマらないだろうな、なんて言っていたけど、ハマったわ。うん、ズブズブだわ沼に。



「ハナサギ君」



ユカが俺に話しかけてきた。



「私はね、君が最初にやろうって言った時どうせ勝てないと思ってたんだ。君がいなければそもそもやろうともしなかった。でも君のおかげで私達は戦い、こんな凄い結果を残すことが出来た。君は私達に自身の可能性を教えてくれた。本当にありがとう」



「シンギュラリティに気に入ってもらったしね」



ヴァリュートが口を挟む。



「あれは、、、、よくわからんかった。それにみんなには無理言ったし、、、、」



俺は無理矢理みんなをイベントに巻き込んだことを謝ろうとしたが、ユカが首を振って手を差し出してきた。



「あなたのおかげ。これで良いの。これからもよろしくね、ハナサギ君」



俺は迷いなくユカの手を握って固い握手を交わした。



「はい、ユカさん。よろしくお願いします」



⭐️⭐️⭐️


「まさかもう一人シンギュラリティが現れるなんて。私じゃ敵いっこないですよ」



エレンがエステア軍のアーマードスーツを破壊しながらぼやく。



「まだそうと決まったわけじゃない。それにシンギュラリティは無敵な訳じゃない」



カガリが答える。



「全く、随分と気まぐれになったなヒナタ」



カガリが少し嬉しそうに言う。



「ヒナタって、『スペースウォーリャーズ』開発に使用された人工知能ですよね?顔見知り、、、、ってのはおかしいですけど?」



カガリは何も答えず後ろに迫ったアーマードスーツを破壊する。



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