第3話 才覚の片鱗
こちらに向かってきた赤蛇の機体が突然急降下した。
「速い!」
エリアルヘロンとエリアルガスターが追尾する。
「エリアルじゃなきゃ追いつけないんじゃ?」
「そうだ。お前たちが来る前にやられた三人はフルファイトだった。あっという間に背後を取られてお陀仏だ」
エリアルガスターがライフルを乱射する。
赤蛇が反転して一気エリアルガスターに距離を詰める。
「危ない!」
エリアルヘロンが斧を受け止める。
「悪い、助かった」
エリアルガスターのパイロットが冷や汗を流す。
『こいつ、ホントに初心者なのか?』
エリアルガスターのパイロットが距離を取って乱射する。
赤蛇が回避行動を取る。
「俺が赤蛇の隙を作るからお前はそこを叩け!」
エリアルガスターが指示を出す。
「了解」
またあの感覚が俺を包んでいく。
「またエリアルヘロンに……」
赤蛇はエリアルガスターに向けて複数のレーザービットンを放った。
「ちっ、ビットンかよ!」
エリアルガスターが緊急回避でビットンから放たれるレーザーを避けつつ反撃に転じる。
「援護ができねぇ!謀りやがったな赤蛇……!」
エリアルシュトレインから通信が入る。
「こちらエリアルシュトレイン、赤蛇の撃破完了。そっちはどうだ?」
「こちらエリアルガスター!ビットンをどうにかしてくれ!あと初心者の手助けを!」
「了解!エリアルワンダーランド、ハナサギの援護にいけ!俺はエリアルガスターの援護を!」
二機のエリアルが散開する。
一方で赤蛇とエリアルヘロンの戦闘は苛烈さを極めていた。
互いに一歩も引かない。
武器がぶつかる度に鈍い光が二機を照らす。
「さっきのとは別物だ……でも!」
エナジーセーバーを振り上げ、赤蛇の斧を弾き飛ばす。
「負けるわけにはいかないんだァァァ!」
そのままエナジーセーバーを赤蛇の胸に突き刺す。
赤蛇の動きが停止し、爆発四散する。
「はあ、はあ」
ゲームの世界とはいえ疲れるんだな……。でもエース相手に勝利を収めることができた!
「おいおい……あいつ今日始めたんだよな?ミネー」
「ああ。まさか赤蛇を単騎で撃破するなんて……」
「うっそ、勝っちゃった?」
アリスが信じられないと首を振る。
「うん!俺勝てた!」
あんまり嬉しくて子供みたいに喜んでしまう。
「……取り敢えず方舟に帰還しようか」
ミネーが促す。
気付けば敵の艦隊は消えていた。
逃げたのか?それとも倒したのか?
「敵のデカイ船は?」
「とっくに撤退してるよ」
エリアルガスターのパイロットが答える。
「まだ挨拶がすんでなかったな。エリアルガスター、ヨッシーだ。俺のあだ名をそのままネームにしたんだ」
「エリアルヘロン、ハナサギです」
「知ってるよ」
四機のアーマードスーツが旗艦『ノアの方舟』に飛んでいく。
『ノアの方舟』から通信が入る。
《エリアルヘロン、エリアルガスター、エリアルシュトレイン、エリアルワンダーランド四機の着艦を許可する》
「船首のしたにカタパルトがあるだろ、あそこから入るんだ。出撃もあそこからだ」
ヨッシーの説明によると。
『ノアの方舟』。ミネー達が所属するクラン『ピースコンパス』の旗艦である。
『ピースコンパス』の総員は約190名。
色々な大学のロボット研究会的なサークルが集まって結成したクランである。
結成理由は特に無く、サークル間でプレイヤーが雪だるま式に増えていってじゃれあっているうちにクランが出来上がった……らしい。
クラン同士での争いは極力避け、デブリを漁ったり、エステア連邦との戦闘、ハナサギのような初心者を『スペースウォーリャーズ』の沼に引きずり込む活動をしている。
⭐⭐⭐
『ノアの方舟』の格納庫に着艦したエリアルヘロンの胸のハッチが開き、ハナサギが出てくる。
「ふぅー、生きてる」
地面を踏みしめる感覚が懐かしい。
「彼が赤蛇を単騎で撃墜したパイロットです」
「びっくりしちゃったわ」
後ろで誰かが話しているのが聞こえる。
「あなたがエリアルヘロンに乗ってた天才君?」
誰かが話しかけてきた。
「はい、まあ天才かどうかは分からないけど……」
振り返ると女性が立っていた。
後ろに一人の男性が控えている。
「あの、あなたは……」
「私はユカ。このクラン『ピースコンパス』のリーダーです」
この声、さっき『あなたの力を貸して』みたいなこと言ってた人か。
「ハ、ハナサギです。ミネーとアリスに誘われてここに来ました」
「話はアリスから聴いてるわ。それより、いくつか質問良いかしら」
ユカの表情が真剣になる。
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