彼女がいるのに告白された

@mia

第1話

 大学進学のために家を出て北国で一人暮らしをしている。

 今震えているのは二度目の冬が近く、慣れない寒さのせいではない。女の子に告白されたからだ。初対面の女の子に告白されて「あなたを離さない」なんて言われたら、嬉しさよりも怖さが勝つ。

「離さない」ってくっついていないのにそんなこと言われても。初対面でそう言い切る女の子の執着心が怖かった。いくら彼氏が欲しくても初めて話す男にこんなに執着するか?

 それ以上に怖いのは女の子が幽霊だってことだ。霊感のない僕がなぜ選ばれたのか分からない。

 だが人間だろうが幽霊だろうが僕には最近付き合い始めたユキナさんがいるのだから、相手が誰であろうと断る!


「悪いけど僕には彼女がいるんだ。僕じゃなくても幽霊の君と付き合う(怖いもの知らずな)男はいるよ(たぶん)」

「そんな男の人、あなた以外にいないわ」

「でも僕にはもう彼女がいて……」

「あなたが付き合ってるのは雪女よ。雪女と付き合えるなら幽霊でも同じでしょ」

「ユキナさんが雪女?」

「そうよ。あなたは人間以外でも付き合える人離さない」


  ☆  ☆  ☆


「……てことがあったんだ。お前にだけ話すんだからな。他には話さないで。幽霊と付き合いたいなら紹介するよ」


 友人と二人でご飯を食べた時に幽霊の話をした。話すなと言えばきっと話す。そうすれば幽霊と付き合ってもいいという物好きな男が出てくるかもしれない。

 俺の見込み通り幽霊と付き合いたいという変わった男が現れ、幽霊はその男と付き合い始めるようになった。

 予想外だったのはユキナさんも別の男と付き合うようになってしまったことだ。

 その男はここよりも、もう少し北の出身の男でユキナさんもその町に住んでいたことがあるそうだ。二人は話が合い、彼女は僕と別れた。


「僕は大学卒業したら家に戻り地元に就職するつもりだから、彼女とはどうせ別れることになるんだ。それが少し早まっただけだ」


 ちょっと強がった独り言が口をついた。

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