未来からやってきたオレの妻(自称)が、君じゃない他の誰かに無理やりくっつけようとしてくる件

@HEHEI

プロローグ:晴れのち雨、時々妻




 晴れのち雨。


 毎朝チェックしているニュース番組のお天気キャスターは美人だが良く予報を外す。



「あぶなーい!」


 

 ふわりとめくり上がったスカート。見えたあわい水色。そして鈍痛。



 空から女の子が降ってきた。



「だ、大丈夫ですか!」



 突然の出来事に、なす術なく地面に叩きつけられた各務原京介かがみはらきょうすけは、チカチカする頭をさすり、お腹の上にまたがって心配そうにこちらを見下ろす少女を見上げる。


 白く華奢きゃしゃな身体。

 

 くりっとした大きな宝石みたいに輝くブラウンの瞳。


 肩の辺りで切り揃えられてた色素の薄い髪は癖っ毛なのか毛先が跳ねており、活発な印象を与える。



「......君の方こそ大丈夫?」



 大丈夫ではないのだが、美少女相手につい強がりつつ上半身を起こす。



「......京、ちゃん?」



「え?」



「京ちゃん......だよね?」



「え、あ、まあ、京ちゃんと言えば京ちゃん......だけど」



 京介きょうすけという名前なのでそう言われればそうなのだが、生まれてこの方、そのように呼ばれた記憶は一度もないので、しどろもどろの回答になってしまう。



「京ちゃんだぁ......」



 大きなブラウンの瞳から突如大粒の涙がこぼれてぎょっとする。



「ちょっと若くて幼いけど、紛れもなく京ちゃんだぁ」



 少女の細い腕が京介の背中に回され、シャツをぎゅっと掴む。


 ふんわりと香る女の子の匂いが京介の頬を赤く染め上げる。


 京介の胸の辺りに顔をうずめてシャツにグリグリ顔をこすり付ける少女の熱が服を貫通して伝わってくる。



「ちょっと待って!」



 理性のリミットが弾け飛ぶ寸前のところで少女の肩を掴んで引き剥がす。



「君誰なんだよ!」



 問われた少女はキョトンとしつつ、自身の制服を見つめると何か納得したみたいに手を叩く。



「あそっか。あたしと京ちゃんが初めて話したのって大学生になってからだもんね」



「初めて話したのが大学?」



 彼女の話すことが支離滅裂過ぎて要領を得ない。


 混乱する京介をよそに、マイペースな少女が「だから自己紹介しなくちゃだね」と、花が咲いたみたいな笑顔を向ける。



「あたしの名前は各務原心奈かがみはらここな。未来のあなたの妻です」



「......へ? つ、ま?」



「うんっ! ほら!」



 頬をバラ色に染めて、左手に光る銀の指輪を見せてはにかむ心奈。



「あっ......へー」



 突拍子のない言葉に頭が真っ白になった京介は、そんな心奈にマヌケな返事を返すので精一杯だった。



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